コロナワクチンを接種した場合、甲状腺中毒症に注意する必要があります。
甲状腺中毒症の症状は、頻脈,体重減少,発汗増加,食欲亢進などがあるが,高齢者ではこれらの症状が出にくいことが知られています。
また,新型コロナワクチン接種後にバセドウ病を発症したという
報告があり,ワクチン接種を契機としてバセドウ病を発病することもありえます 。
さらに、特に既往歴のない患者が新型コロナワクチン接種後に甲状腺クリーゼを発症し,入院後にバセドウ病と診断された症例などもあります。甲状腺クリーゼは,甲状腺ホルモン作用過剰により多臓器不全に陥る重篤な病態であり,その誘引として
感染,手術,外傷,虚血性心疾患などが知られているます 。
今回、コロナワクチン接種後、41歳の女性が動悸と疲労のため当院に入院した例を紹介します。
2023 Jun 15;23(1):132. doi: 10.1186/s12902-023-01387-2.
Graves' disease after exposure to the SARS-CoV-2 vaccine: a case report and review of the literature
Kai Takedani 1 2, Masakazu Notsu 3, Naoto Ishiai 1, Yu Asami 1, Kazuhiko Uchida 4, Keizo Kanasaki 2
【41歳の女性が動悸と疲労のため当院に入院した。2回目のSARS-CoV-2ワクチン(BNT162b2、コロナウイルス修飾ウリジン型メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、ファイザー社製)を接種した2週間後に疲労が出現し、徐々に悪化した。入院時、甲状腺中毒症(甲状腺刺激ホルモン(TSH)<0.01mIU/L(0.08-0.54)、遊離トリヨードサイロニン(FT3)33.2pmol/L(3.8-6.3)、遊離サイロキシン(FT4)72.1pmol/L(11.6-19.3))と心房細動に伴う動悸を認めた。TSHレセプター抗体(TRAb)は陽性(TRAb 5.0 IU/L(< 2.0))であり、99mTcシンチグラフィーで甲状腺にびまん性の取り込みがみられたことから、この症例の甲状腺中毒症はバセドウ病によるものと考えられた。この病態を改善するためにチアマゾールが処方され、この治療が開始されて間もなく、症状と甲状腺ホルモン値は有意に減少した。
結論
この症例報告は、甲状腺に影響を及ぼすASIAとSARS-CoV-2 mRNAワクチンとの潜在的な相関関係を補強するものである。この臨床経過は、SARS-CoV-2ワクチン曝露後にバセドウ病などのASIAを発症する可能性を考慮することが不可欠であることを示唆している。】