内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床に関する論文のまとめ

2022/04/06

2022-04-06 05:31:27 | 日記
LPL 欠損症は高中性脂肪血症を来す先天性疾患として有名である。しかし、中性脂肪 2000 mg/dL 超の高中性脂肪血症を見たとき、それが LPL欠損症である可能性は低い。

リポ蛋白リパーゼ (lipoprotein lipase: LPL) は末梢の血管内皮の細胞膜を覆っている多糖に静電気的に結合している。だから、同じ多糖であるヘパリンを静脈注射して、LPL を血液中に溶出させないと、血液検査では測定できない。前処置をしないで血液検査をすれば当然、結果は陰性になるので、LPL 欠損症だと誤診されることになる。

糖尿病では LPL の活性が低下するため、中性脂肪 2000-4000 mg/dL の高中性脂肪血症を認めることがある。これはインスリン抵抗性に関連するので中年以降で認めることが多い。

一方、LPL 欠損症は有病率 1人/100万人の稀な疾患で、多くの場合 10歳未満から腹痛と急性膵炎をくり返す。症例の 25%では乳児の時点で膵炎を発症する。だから、ほとんどの場合、小児科で診断される。

フィブラートは LPL の発現を誘導するので中性脂肪を低下させる作用があるが、LPL を欠損している場合は全くの無効である。また、魚油のサプリメント(ロトリガ)はカイロミクロンの濃度を上げるので LPL 欠損症では禁忌である。

LPL 欠損症の治療は食事療法で中性脂肪 20 g/日以下というたいへん厳しい脂質制限を行う。この厳しい脂質制限のために脂肪の代わりに短鎖脂肪酸を料理に使うなどの工夫をする。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1308/