乳酸アシドーシス
NEJM 2014; 371: 2309-2319
1. 乳酸値は死亡の予測因子であり, 治療のメルクマールである.
・低灌流または敗血症に乳酸アシドーシスが伴う場合,
・乳酸値が高いほど死亡率は高くなる(Crit Care 2010; 14: R25)
・蘇生後8時間まで乳酸値を2時間毎に20%以上低下させると,
2. 嫌気性呼吸で産生される乳酸は Cori cycle でグルコースに再変換される.
・骨格筋や赤血球における解糖によって生じた乳酸は肝臓(~
・激しい運動をすると,乳酸の産生速度は数百倍に増加する.
3.循環不全・組織低酸素が乳酸アシドーシスの主な原因である.
・低灌流になると乳酸が肝(および腎)
・type A の乳酸アシドーシスの原因としては, 心原性ショック, 低容量性ショック, 出血性ショック, 敗血症性ショック,重症心不全があり,
・
4.メトホルミンによる乳酸アシドーシスは極めて稀である.
・メトホルミンによる乳酸アシドーシスは type B に分類される.メトホルミンは肝の糖新生を抑制する作用をもつ(
338: 867-872)ので, 乳酸のクリアランスを低下させ得る.
・メトホルミンの使用者における乳酸アシドーシスの発症頻度は 3件/10万人・年で極めて少ない.
・腎不全患者や高齢者, 循環不全・低酸素血症の存在が疑われる場合(
5.乳酸アシドーシスの明確な診断基準は存在しない.
・呼吸性アルカローシス/アシドーシス,代謝性アルカローシス/
の値をもって乳酸アシドーシスの診断基準を一義的に定義すること
・重症の循環呼吸器疾患,敗血症,重症外傷,
・アニオンギャップの開大は診断の手がかりになるが, 乳酸値が 5-10 mmol/L だった患者の50%
・
6.乳酸アシドーシスの治療の基本は十分な輸液
・十分に輸液を行い,
・プロトンの除去に最も重要な緩衝系は重炭酸緩衝系である.
H+ + HCO3- ⇄ H2CO3 ⇄ H2O + CO2
低灌流のために末梢組織の CO2 貯留があると,上式の平行は左に移動し,
・通常, 静脈血の pCO2 は動脈血の pCO2 よりも 6 mmHg 高い.pCO2 (静脈血) - pCO2 (動脈血) > 6 mmHg であれば,末梢組織の CO2 貯留があると判断できる.
病態から考える電解質異常 第1版(ELSEVIER)2018, pp. 12-15).
7. 生理食塩水による輸液はCl 負荷による急性腎障害を引き起こすかもしれない.
・生理食塩水による輸液はCl 負荷による急性腎障害を引き起こすかもしれない(JAMA 2012; 308: 1566-1572).
・
・乳酸リンゲル液(ラクテック, ハルトマン)や酢酸リンゲル(ヴィーンF)
・重症患者に対して乳酸リンゲルや酢酸リンゲルを投与した場合, 生理食塩水を投与した場合に比べて,
・乳酸リンゲルを多量に投与すれば血清乳酸値は上昇し得るが, 乳酸クリアランスの異常がなければ通常は軽度の上昇に留まる(
8.重炭酸イオン投与は有害である可能性がある.
・
重炭酸イオン投与によって, ①CO2貯留が増悪する可能性があり,
②