内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床に関する論文のまとめ

2022/03/28

2022-03-28 08:21:52 | 日記
米国感染症学会の発熱性好中球減少症についての診療ガイドライン
Clinical Infectious Disease 2011; 52: e56-e93

1. リスク評価についての推奨

ほとんどの専門家は 7日以上続き、好中球の絶対数が 100 /μL 未満である場合かつ/または低血圧、肺炎、新規の腹痛、神経症状などの所見をともなう場合は高リスクだと考える。このような患者はとりあえず入院させて経験的治療を始めると良い (A-II)。

7日未満で症状に乏しければ、経口で抗菌薬治療を始めても良い (A-II)。

きちんとリスク評価しようと思うなら、Multinational Association for Supportive Care in Cancer score (MASCC score) がおすすめ (B-I)。

2. 初期評価についての推奨

初期評価では血算、血液像、尿素窒素、血清クレアチニン、電解質、トランスアミナーゼとビリルビンは測定しよう。

血液培養は最低 2セットは提出しよう。中心静脈カテーテルがある場合は、1つは中心静脈カテーテルから、もうひとつは末梢から採取しよう (A-III)。

疑わしい感染巣があるなら、その部位の培養検体 (痰、尿、髄液など) も提出しよう (A-III)。

3. 経験的治療についての推奨

高リスクの患者には抗緑膿菌活性を持つ β-ラクタム系抗菌薬 (セフェピム、タゾバクタム/ピペラシリン、メロペネム、イミペネム/シラスタチン)を単独で投与しよう (A-I)。

低血圧や肺炎を合併している場合、あるいは耐性菌が予想される場合には他の抗菌薬 (アミノグリコシド、フルオロキノロン ± バンコマイシン) を併用しても良い (B-III)。

バンコマイシンやその他の好気性グラム陽性球菌に対して活性がある抗菌薬はカテーテル感染、皮膚・軟部組織感染症、肺炎が疑われる場合や循環動態が不安定な場合でもなければ併用しない方が良い (A-I)。

メチシリン耐性ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、ESBL 産生菌、カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌などの耐性菌の関与が疑わしい場合、特に全身状態が不安定な場合は初期治療を個別に変更するのは仕方がない (B-III)。

4. 治療の修正についての推奨

予想外に発熱が続いても全身状態に変わりがないなら抗菌薬を変更する必要はほとんどない。培養結果を確認して抗菌薬を最適化すべし (A-I)。

初期治療でグラム陽性菌を狙ってバンコマイシンなどの抗菌薬を併用した場合、2日経ってもグラム陽性菌感染が明らかでなければ中止せよ (A-II)。

初期治療を開始しても循環動態が不安定な場合は、耐性グラム陰性菌、グラム陽性菌、嫌気性菌、真菌をカバーするようにより広域な抗菌薬 (±抗真菌薬)に変更すべし (A-III)。

高リスクの患者で広域抗菌薬治療を開始して 4-7日経過してもフォーカス不明の発熱が続く場合は経験的に抗真菌薬投与を検討すべし (A-II)。

5. 治療期間についての推奨

抗菌薬治療は少なくとも好中球数 500 /μL 超になるまでは続けよう (B-III)。

6. 抗真菌薬投与についての推奨

抗菌薬治療を開始して 4-7日経過しても発熱が続き、好中球減少の期間が 7日を超えることが予想される場合は、侵襲性真菌感染症の検索と経験的な抗真菌薬投与を検討しよう (A-I)。

7. G-CSF投与についての推奨

発熱性好中球減少症の患者に顆粒球コロニー形成刺激因子 (granulocyte colony stimulating factor: G-CSF) の使用は勧めない (B-II)。

8. 衛生管理についての推奨

手洗い励行 (A-II)。標準感染予防策励行 (A-III)

病室に生花やドライフラワーは持ち込ませないように (B-III)。

https://academic.oup.com/cid/article/52/4/e56/382256


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