事務局長通信

障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会 声明

「基本合意」反故!「骨格提言」無視!
十分な審議なしの障害者総合支援法案成立に断固抗議する!


2012年6月20日
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会


 本日(6月20日)、政府は参議院本会議において、「障害者総合支援法案」(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律案)を十分な審議もなく、民主・自民・公明の賛成多数で可決・成立させた。
 同法案は、たとえ法名変更しても、あの問題多い障害者自立支援法を延命させる「改正案」以外のなにものでもなく、長年その廃止と「障害者総合福祉法」制定を求め続けてきた障害者・家族、関係者の願い・期待を踏みにじるものであるといわざるをえない。
 そもそも自立支援法の廃止、総合福祉法の制定は、民主党の政権交代時の公約であり、それゆえの障害者自立支援法違憲訴訟団との「基本合意」による和解であり、内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会での議論と「骨格提言」のとりまとめであったはずである。
 今回の「基本合意」反故、「骨格提言」無視の法案成立は、国約(国の約束)を平然と破る政治への不信とともに、「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」と訴えてきた障害当事者への裏切りであり、絶対に許すことはできない。

 政府・厚生労働省は国会審議の中で、「名前を変え、基本理念もつくり直した」、「総合支援法案」は事実上の自立支援法廃止であり、新法であるとの説明に始終した。また、「骨格提言」を「段階的・計画的に実現する」、今回はその第一歩であると説明した。これらの説明がいかに説得力がなく、「基本合意」反故・「骨格提言」無視の事実を否定するものにはならないことはいうまでもない。
 なによりも、「骨格提言」で示した権利法としての位置づけが「支援法」のままの見直しにとどまり、基本理念には「可能な限り」が盛り込まれ、難病を範囲に加えるとはいえ、具体的には「政令で定める」とされ、あらたな谷間の問題を生むことが心配される。また障害程度区分や就労支援のあり方等を「検討事項」として3年後に先送りし、しかもその検討も障害者・関係者の声を反映させるといいながら、「いつから」「誰が」「どのように」検討するのか全く具体化されていない。さらに、利用者負担に至っては、法文上「応益負担」が残されているにもかかわらず、「つなぎ法」(2010年12月3日改正)によって応能負担に変更し、すでに解決済とされ、「提言」で求めた「障害に伴う支援は原則無償」「障害者本人の収入に応じ」の明記は無視した内容になっている。今回強行された総合支援法が、現状の諸問題を解決するどころか、さらに深刻な問題をつくり出すことが懸念される。

 なにゆえに、政府・厚生労働省は自立支援法の「改正」にこだわるのか。そこには、小泉政権以来の社会保障構造改革・社会福祉基礎構造改革があり、介護保険と今国会で審議中の「子ども子育て支援法案」との整合性があることはいうまでもない。保険原理・受益者負担の強化・徹底、市場原理の導入・利用契約制度への変更に伴う公的責任の縮小・廃止等の構造改革路線は、現民主党政権に引き継がれ、そしていま、「社会保障・税一体改革」に基づく消費税増税と「福祉目的税化」、自助(自己責任)、共助としての社会保険化と制度間「統合」を基本とした「社会保障改革」がさらに国民に負担と犠牲を押しつけようとしている。

それだけに、私たちは高齢者・子ども等他分野との連帯・共同も重視し、「社会保障・税一
体改革」を許さないとりくみをすすめながら、あくまでも「基本合意」「骨格提言」に基づく自立支援法の廃止と権利を保障する総合福祉法制定を求めて、障害者関係団体との共同をさらに強める決意である。

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