事務局長通信

「総合支援法」成立に対する訴訟団抗議声明

「総合支援法」成立に対する訴訟団抗議声明

2012年6月20日
障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団・基本合意の完全実現をめざす会


1、「総合支援法」の成立
 本日、第180回国会で障害者自立支援法の一部改正法である「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(総合支援法)が成立した。
 本国会で成立するべきは障害者自立支援法を根こそぎ廃止し、障害者の基本的人権を支援する新しい法律であるべきである。
 訴訟団との約束と願いを踏みにじったこの法律制定を断じて許すことは出来ない。

2、2008年障害者自立支援法の導入
 2006年に施行された障害者自立支援法は「障害福祉サービスはお金で買うものだ」という考え方(平成17年10月06日・衆議院厚生労働委員会中村秀一元厚生労働省社会援護局長・政府参考人答弁参照)により制定された法律である。

3、違憲訴訟の提起
 私たち障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団は、障害福祉は憲法に基づく基本的人権の行使を支援するものだとして障害者自立支援法の廃絶と新たな法律の制定を求めて2008年、2009年、全国で71名の原告が勇気を奮って訴訟を提起した。
 政府は2009年10月、障害者自立支援法の廃止を前提とした裁判の話し合い解決を呼びかけ、真剣な協議を経て、2010年1月7日、被告である国は次の基本合意文書を原告らとの間で調印した。
・国は違憲訴訟の目的と意義を理解したこと(前文)
・障害者自立支援法を平成25年8月までに廃止することの確約(第一)
・速やかに応益負担制度(定率負担制度)を廃止すること(第一)
・新たな障害者総合福祉制度は憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援することを基本とすること(第一)
・障害者自立支援法の総括と反省として、国は、憲法第13条、第14条、第25条等に基づく違憲訴訟団の思いに共感し、真摯に受け止めること(第二1)
・国は障害者自立支援法が障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し心から反省し、その反省を踏まえて今後の施策を立案し実施すること(第二2)
・新たな総合福祉法の制定にあたり訴訟団提出の要望書を考慮の上、障がい者制度改革推進本部の下での障害者参画の上で十分議論すること(第二3)
・自立支援医療の利用者負担について当面の重要な課題とすること(第四)
・新しい福祉制度の構築においては、次の障害者自立支援法の問題点を踏まえて対応すること
○ どんなに重い障害を持っていても障害者が安心して暮らせる支給量を保障し、個々の支援の必要性に即した決定がなされるようにすること
○ 収入認定は、配偶者を含む家族の収入を除外し、障害児者本人だけで認定すること。
○ 介護保険優先原則(障害者自立支援法第7条)を廃止

4、裁判の終結
 上記基本合意成立を受け、2010年4月21日までに全国14カ所の地方裁判所の法廷の裁判官の面前で、被告国が同基本合意を確認して誓約する裁判上の和解が成立し、同訴訟は司法上の解決をみた。

5、推進会議、総合福祉部会
 2010年1月に障がい者制度改革推進会議、同年4月に総合福祉部会が開始され、いずれの会議も基本合意文書を基本として議論が進められることが確認され、私たちは訴訟終結の判断は間違っていないと確認した。
  
6、障害者自立支援法廃止の閣議決定  
 2010年6月29日政府は障害者自立支援法の廃止を閣議決定した。

7、2011年8月30日 骨格提言
 障害種別などを乗り越えた55人のあらゆる立場からなる委員の一致した提言として、総合福祉部会が障害者自立支援法を廃止した後の新たな法律の骨格を提言した。
 骨格提言は基本合意文書、および障害者権利条約に依拠して作成された。
 私たちはこの訴訟運動が推進してきた力と役割の正しさに確信を抱いた。

8、2012年 政府の約束反故
 ところが2012年2月8日第19回総合福祉部会で厚労省から発表された法案は障害者自立支援法をそのまま定着化させる法案と言ってよい内容であり、国の背信行為に訴訟団全員は憤りに打ち震えた。あらゆる機会をとらえて私たちは国に再考を促した。
 しかし、その後微修正を経たものの、本日成立した法律は廃止するべき法律を存続させる一部改正法であり、国が被告として履行するべき法令廃止の約束に違反し、基本合意文書で約束された確認事項をことごとく踏み躙る内容であり、司法決着を覆す国家の許されざる野蛮な違法行為であると私たちは万感の怒りを持って抗議する。

9、法的責任追及
 訴訟団は本日の法律制定により国の違法行為はより明確化したと考える。
 訴訟団は国の背信的で違法な対応に対し法的責任を追及すべく検討中であり、法的意見の発表を予告するとともに、違法行為に加担した政治家の政治責任、政府の法的責任を徹底的に追及することをここに宣言する。       

以上

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