名張市立病院を守りよくする会は12月3日、名張市立病院のあり方を考える集いを武道交流館いきいきで開きました。講演とシンポジウムの発言(要旨)などを紹介します。
■開会あいさつ 和田四十八さん 名張市立病院を守りよくする会代表世話人
名張市立病院は市民の願いで1997年にでき、救急医療など役割を果たしてきました。しかし、身売りの話が持ち上がったため、2021年に市立病院を守りよくする会をつくり運動してきました。市立病院に対する意見を出し合っていただき、市民にとってよりよい病院になるよう取り組んでいきたい。
■講演
「公立病院の使命と名張市立病院の改革課題」 立命館大学講師(医療福祉生協法人勤務) 大松美樹雄さん
2000年代に入り「小泉構造改革」路線以後、医療費を厳しく抑制する政策が行われ、公立病院の経営が厳しくなっています。市立病院が公設民営の「指定管理」にされ徳洲会が受託した大阪・和泉市では、高額医療機器の購入は市が全額負担し、減価償却費も徳洲会の負担は半分で、機器購入先も徳洲会グループです。そこまでしても病院を「外部化」したいというのが自治体当局者の本音です。
これに対し、住民の視点に立った真の公立病院改革が各地で取り組まれています。長野県松本市では、コロナ対応で市立病院が軸になり地域医療の連携で日常医療と災害医療を追求し、「松本モデル」と呼ばれました。
名張市でも市民参加で市立病院のあり方を探求していってほしい。名張市立病院の収支をみるとコロナ前で医業収支は赤字ですが、帳簿上の減価償却費をのぞけば1億円余にすぎません。病院の収支や課題をしっかり把握するとともに、「市立病院フェスタ」なども交えて病院と住民のつながりを広げながら、それを力にして名張市にふさわしい地域医療づくりに取り組んでほしい。
シンポジウム「市民に親しまれ、信頼される市立病院をめざして」の発言から
■市立病院が命を救ってくれた 橋本みちよさん 市立病院で治療・入院
2年前に脳出血を起こして市立病院に運ばれ、脳外科の先生がすぐに診てくれました。18日間入院しましたが、リハビリも受けられ、大きな障害も残ることなく感謝しています。懸命に働いておられる医師や看護師の姿を毎日見ていて大変な仕事だと思いました。元気に働いてもらえる市立病院であってほしいと思います。
■市民が経営する病院に 田岡康秀 すずらん台二区自治会長
市民と行政、議会が協力してできた市立病院を市民全体で守らないといけないという一致点があると思います。独法化については市民から多くの疑念が出されており、市民的議論なしで進めないでほしい。名張市は色々な形で地域の協力を得ており、市民を信頼して協力を得たらどうでしょうか。市から独立した経営者に任せるのではなく、市の直営で市民も経営に参加する名張型の市立病院をめざしたい。
■市民的議論・合意なく決めないで 深山直人 名張市立病院を守りよくする会
守る会の市民アンケートでは民営化よりサービス充実を求める声が過半数となり、職員アンケートは7割の人が独法化で経営は改善されないと回答しました。市民的議論や合意なしに勝手に決めないでほしい。問題が多い独法化ではなく、市民の声が反映できるよう市の直営で議会のチェック機能も維持しながら、サービスと経営の改善をしてほしい。
■市立病院のままで経営改善はできる 三原じゅん子議員(市議会経営改革特別委員会)
市立病院への支出は12億円、半分は国の補助金が入っており、300億円の一般会計を圧迫するものではありません。市議会の委員会で名張と同規模の兵庫県芦屋市立病院と香川県坂出市立病院を視察しました。独法にしなくても公営企業法の全部適用で管理者を置いて、医師を確保し、市と職員が一丸となって経営改善を果たしています。名張市が安心して住める街としてあり続けるために市立病院として守りよくしていくことが重要です。
■公務員だから住民のため頑張る濱本捨男さん 介護施設・やわらぎの郷
市の検討委員会の答申は、公務員では意識改革ができないから独法にといいますが、その考えがおかしい。公務員だから住民のために頑張るのだと思います。独法化にすれば賃金を安くし非正規雇用にできるというのもおかしい。介護では40代でも賃金は20万円少し。国の制度が悪いためですが、医療や介護に金を出さない姿勢こそ変えるべきです。
■患者中心の医療が損なわれる 市内の開業医
医療機関は行政指導を受けています。その際、一部の診療報酬の不正請求事例をとり上げ、高点数イコール「悪」であるかのような選別によって、事実上の萎縮診療が強いられています。大多数の医師が真摯に患者と向き合って医療にとりくんでいる実態を無視したこのような指導は、「医者は不正をするもの」という敵意を持った決めつけともとれますが、大局的には過度な医療費削減政策からくるものと思われます。
市立病院の独法化の動きには、患者中心の医療が損なわれる等多くの問題点が指摘されますが、戦後築かれてきた民主主義的権利を1枚1枚剥がす狙いとして、民主主義を守る重要なたたかいと思います。
■労働条件改善、パワハラ根絶を 伊賀名張ユニオン 大塚偉介さん
名張市立病院職員から、「残業を申告しにくい」「年休をとりにくい」「産休で嫌がらせを受けた」「スキルアップ研修を受けさせてもらえない」との訴えが寄せられました。守る会の職員アンケートでは、ハラスメントを受けたり見たことはあるかとの質問に77%が「ある」と回答。メンタル不調病休者が異常に多いことも明らかになりました。こうした実態を考慮せず、独法化を進めることは問題です。
■閉会あいさつ 臼井照男名張市立病院を守りよくする会事務局長
公立病院の重要性が改めて明確になりました。市長は年内もしくは年度中に結論を出すといっており、運動への参加を呼びかけます。