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一度一度の機会を大切に。

移動映画館車(富山100む・・・5)

2016-12-17 00:32:41 | 特殊系トラック

先日、名古屋市内でみかけた車両です。

この車両は移動映画館車という車両で、三菱ふそう製の大型トラックをベースにバス型のボディーを架装しています。長距離運転手時代に高速道路の対向で幾度か目撃し、存在は認識しておりましたが、直近で観察・撮影できたので簡単に紹介したいと思います。撮影時、車内では上映中だったようで車内の様子を伺うことはできませんでした。

移動映画館車について調べてみますと、当車両の運用は富山県射水市にある出版会社であるようですが、事実上の運用は出版会社の関連大元である宗教団体であるものと考えます。さて運用元が判明したところで気になる上映内容ですが、やはり宗教団体の教えに関連したものであるということ。撮影当時の車体には広告看板が取り付けられていました。運用のきっかけは東日本大震災で被災された方への「心の復興プロジェクト?」であると、出版会社のウェブログでは記されています。

さて、この移動映画館車は三菱ふそう・スーパーグレート低床3軸車(QKG-FY54VY)をベースに東京特殊車体若しくは京成自動車工業(個人的には前者)で架装され、仕様違いで車体の窓枠が銀色と黒色(今回掲載した車両)の二種類存在しているようです。窓枠銀色の車両は車両登録番号「は3967」で、後部の車両登録番号標の位置は中央。もう一台の窓枠黒色の車両は複数の登録番号があり、いずれも車両登録番号標の位置は右側。また後部上部には換気扇カバー、車両下部には汚物タンクの確認ができたことから車内後部辺りに便所が設置されているものと思われます。

窓枠黒色仕様の車両は画像検索の結果、車両登録番号「100ね2」「4」「100む5」「5」「ほ7」「7」「100も8」「130と10」「130ふ11」「130つ12」「15」の11台が確認できました。画像検索では分類番号やひらがな等、車両登録番号の一部が確認できず、重複集計されている可能性があるとはいえ、該当団体が銀色窓枠車を含め12台の移動映画館車を運用していると思うと非常に驚きです。この運用台数が事実であるかのと調べてみますと、検索結果に個人ウェブログがいくつかヒットし、内容はやはり「十数台規模で半年に1台増備」。また1台あたりの製造費が「4,000万円」の文言が確認できました。恐るべし宗教団体。

▼それでは様々な角度から移動映画館車を見ていきましょう。車体後部は窓がなく、この位置に便所が設置されているものと思われます。車両登録番号の分類番号が「1」であること、車両後端下部には突入防止装置と大型後部反射器が備わっていることから大型貨物自動車登録であることがわかります。車両登録番号標の位置は右側です。屋根から側面の水切りにかけての表面は滑り止め仕様になっています。小さくて見づらいですが「お先にどうぞ」のステッカーもオリジナルなのでしょうね。また車体に[移動映画館]の表記はありません。

▼運転席と車体の接合処理部です。架装会社の特徴が最も表れる部分ではありますが、この移動映画館車は架装会社の特定に苦慮しております。車体側面裾部に架装会社の表記があれば嬉しいんですがね。東京特殊車体か京成自動車工業のどちらかで間違いないでしょうけど自信がありません(東京特殊車体のような気もする)。また車体の安定を目的に4ヶ所に油圧ジャッキが設置されています。フロントタイヤは275/70R22.5です。

▼後輪のホイールアーチ部分です。縁取りに樹脂部品を使用していますが、近年のバス型車両はこの仕様が多いです。リアタイヤは245/70R19.5です。

▼さらに後輪部を覗くとエアサスの提灯。しかし車台が雪国の車両とは思えないほど非常に美しい。日頃の手入れの結果でしょう。到着した上映地でも洗車しているのかもしれませんね!また車台の塗色から推測するにこれは防錆塗装仕様なのでしょうか?

▼車両左前輪部。撮影時には使用されておりませんでしたが、折戸仕様の乗降口が備わります。ステップは床下に格納でき、使用時には展開できる仕様となっています。この辺りの造りをみると京成自動車工業かなと思ってしまいますが、より細部をみると東京特殊車体とも思えてしまうのです。また車体の一部(特に裾部分)にはアルミニウムを材料に使っているようにも感じましたがいかがでしょうか。

▼車体左側後部の屋根には車体を加工してスマートに天幕が納まっています。

▼車両左側後部。乗降用ステップの展開状況です。
乗降用ステップには細かい配慮がみられ、手すりには視認性向上と防寒を意図したのか黄色のクッションが巻かれています。ステップ踏み面には滑り止めも兼ねたマットが敷かれ、ステップ横の金属板部分には切創防止にホースを加工した保護材が施してあります。またテープ状のLED照明も設置されており、利用者の安全を意識した仕様に好感が持てます。リアオーバーハング部には空調機器の室外機が納められています。転動防止の輪止めの使用も素晴らしい意識ですね。

▼最大積載量は6,400kgですが実際にはそこまでの貨物を積載することはないでしょう。
平成21年排出ガス基準10%低減車「Q」及び、平成27年度燃費基準達成車「K」なので排出ガス規制記号はQKG‐で間違いないでしょう。

全体的な感想として、実物を観察、撮影できたことは非常に嬉しかったです。車両外観の特徴のある塗装のおかげで発見も容易でしたが、その場所が和食チェーン店の駐車場というのがなんとも不思議ではありましたが。

また、この車両の最も褒めるべき点は外観の美しさにあります。運用元である富山という地域柄そして全国運用という、冬季は融雪材まみれになるという条件下においてこの美しさを維持できるのは常に洗車という手入れしているからでしょう。一部の写真からもお判りいただけるかと思いますが、車体の反射率が非常に高く、また車体だけではなく足回りそして床下(車台)も含めて乗務員がこの大柄の車体外観美化に日々勤めている姿勢が感じ取れるかと思います。素晴らしいです!

最後に。正直、運用元が宗教団体であるという事実を知ったときに“取り上げるべきではない”車両という考えもありましたが、当ウェブログの目的は私の琴線に触れた自動車等の特徴紹介が主目的であります。つきまして当車両の運用元である出版会社や宗教団体、また流布内容について否定や肯定する意図は一切なく、以後のご判断は閲覧者各位の思想にお任せするところであります。また車体一部には画像加工を施しました。


記事作成にあたり、参考にさせていただいたリンク先

チューリップ企画スタッフブログ「移動映画館って何?」
http://todoroki.tv/idoeigakan-tulip/


昭和63年度導入タンク車(筒先自動制御システム付)

2016-12-07 23:53:58 | 消防車両(名古屋市消防局)

久しぶりに「名古屋市消防局」のカテゴリにて投稿します。

今回取り上げる内容は名古屋市消防局の水槽付消防ポンプ自動車I-B型です。この消防自動車は名古屋市消防局においては普通車として分類され、また現場等ではタンク車として運用されていることから、当記事においては水槽付消防ポンプ自動車とは表記せず、タンク車として呼称統一します。

今回ご紹介するタンク車は昭和63年度に導入された車両で、当時のタンク車は現在主流となる箱型構体とは異なり、ポンプ操作部や吸管等が露出する形となっていました。当年度では森田ポンプ(当時)1台、GMいちはら工業2台、日本機械工業1台、合計4台のタンク車が導入され、どれも試作的要素の高いタンク車となっておりましたが、その中でも日本機械工業で製造されたタンク車には帝国繊維製の「筒先自動制御システム」が搭載されていました。

※下記内容に関する資料を探したところ見つからないため、掲載内容は当時の記憶のみとなります。よって記載内容に本来と異なる点があるかもしれないことをご承知置き下さい。
個人的に筒先自動制御システムの導入搭載は名古屋市消防局発行の消防史で内容を知り、それを元に調査に出向いたところ、既に機器の運用はなされていませんでした。この筒先自動制御システムは本来、車両側で機関員が流量を調整するところを筒先員(ノズル)で制御しようとするシステムであり、また有線を配した特殊な消防ホースであったため、車両側に位置する機関員とホース先端側に位置する筒先員同士で通話(会話)も可能となっていたようです。有線入り消防ホースはシステムの運用廃止と共に廃棄されていたようです。

一方で車両の方も新製配置先の中消防署ではなく、北消防署飯田出張所の予備車となっていたため撮影の機会も無く、難しかったことを思い出します。
当時はいつも車庫にひっそりと佇み、いつ表に出るか分からない車両だからこそ、どうしたら最高の条件で撮影できるかを考えて行動しており、車庫から出される機会の少ない予備車を撮影するには毎年5月の下旬頃に市内各区で実施される「水防訓練(別名予備車フェス)」が絶好の機会でした。紹介する一部の写真も北区で実施された水防訓練で撮影されたものです。
余談ですが私自身の消防車両撮影における方針は新車でもなく、食い付きの良い珍しいといわれる車両でもありません。また一私感として「車庫から出して下さい」「赤色灯や前照灯を点けてください」というお願いは『私の行動範囲内における撮影において』は論外だと考えております。

ベースとなる車両は日産ディーゼルコンドル。車台はP-CL80Eで機関はEF6型。ポンプ型式は日機R3型(A-2級)。赤色警光灯も当年度からスピーカーが内蔵された三連続灯式となりました。

水槽容量は1,500L。所属を記した緑色の標識灯が「名消らしさ」を出しています。いまやこの緑色の標識灯もはしご車のみとなりました。ちなみに点滅と点灯の切替ができます。

こちらは北消防署飯田出張所で撮影させてもらった写真です。車両左側中央部の蓋を開けると筒先自動制御システムの操作盤が現れます。

筒先自動制御システムの操作盤です。
電源入切
マイク音量及びAUX切替調整
手元操作、遠距離操作の切替
機関回転速度の調整
各放口(吐水口)弁の開閉及び通話切替(1・3放口が車両右側 2・4放口が車両左側)
150L/450L/600Lの各流量切替 

車両左側の放口(吐水口)、中継口及び給水口の配置です。
放口弁には2と4の数字が表示されています。

車両運転席右側には携帯無線機格納器が備わり、無線呼出名称板には新製配置先であった中消防署の表示がされている。


学生時代、そして社会人デビューしたてであった当時、もちろん好き好んで必死においかけた名古屋市消防局の消防車両を久しぶりに観察してみました。今思えば警光灯類に現在のような高輝度LEDなんてものはなく、ハロゲン球を光源に赤色カバー内に設置された反射鏡をクルクル回転させて光を拡散する赤色散光灯が主流だった時代だったのですね。

当時の情報源といえば図書館、そして現物。その現物という実際目に入ってきたものに興味を示し、様々なことを教えてくれる先生はすべて消防職員でした。このように記事にできたことも含め、感謝しております。

現在の撮影主軸は防災航空隊(防災ヘリ)へと移り変わりましたが、それは消防車両を撮影していた土台(過去)があったからこそ。防災ヘリ撮影を通じて新しい仲間も増えましたが、消防車で繋がった仲間はその時代と変わりません。

このウェブログのタイトルである「nagoya-fe」とは名古屋の消防車(fire engine)という意味で名付けました。久しぶりに名古屋の消防車に関する記事が投稿できてよかったかな。


Exifデータから以下の内容が判明したので記載しておく。
※使用機材

富士フイルムFinePix2700
オリンパスC-700UZ
※撮影情報

全体写真2003年5月
車庫内写真2002年5月
操作盤写真2000年4月