井上澄夫さん(市民の意見30の会・東京)の「反戦の視点・その57」より許可を得て、3回に分けて抜粋させていただきます。
●自民党がアフガン派兵を急ぐ理由
自民党が年初からアフガン派兵の動きを加速させたのには、おそらく二つ理由があ
る。一つは新テロ対策特措法(補給新法)を強引に成立させたものの、それはさして
ブッシュ米大統領の歓心を買うことにならなかったということだ。イラクから陸上自
衛隊を撤退させたことはブッシュ政権を痛く落胆させた。ブッシュの最大の盟友だっ
たブレア首相も忠犬だったハワード豪首相も政治の舞台から去るなかで、まことに頼
もしい小泉元首相を継いだ安倍前首相は無惨に自壊し、福田首相は忠誠心を試されて
いた。米軍にとってイラク戦開始には役立ったとはいえ、もともと象徴的な意味が強
かった洋上給油の再開は福田首相が期待するほどには歓迎されていないのである。
もっとも給油先の諸国との交換公文で海上阻止行動以外への転用に歯止めをかけたと
いう日本外務省の釈明はウソである。かの交換公文はまったくのザル法のたぐいで、
米軍が補給された燃料をイラク戦に転用する抜け道は用意されている。その点だけは
米軍にとってオイシイ話だろう。
もう一つの理由は、タリバーンが制圧され復興の過程に入ったはずのアフガニスタ
ンが再び「失敗(破綻)国家」に戻されたからである。米英のアフガン攻撃は200
1年10月7日に始まった。以来6年余、アフガンはどうなったか。国土が破壊さ
れ、貧しい農民たちが難民になった。侵略と旱魃がアフガン社会を瓦解させたのだ
が、戦乱がなければ農民たちの智恵はかなりの程度、旱魃を乗り越えたはずだ。米英
の侵略がアフガンの荒廃をもたらしたことは、日本がそれに加担したこととともに、
繰り返し確認され糾弾されねばならない。
米英の攻撃でタリバーンは一時期、実効支配を失った。しかしパキスタンとの国境
までタリバーンを追い詰めたはずの米地上部隊は逆襲されてアフガン東部に釘づけに
なり、タリバーンは南部でも勢力を復活させた。NATOが編成して派遣した約4万
3千人のISAFも死傷者を増やすばかりで治安回復はおぼつかない。米国政府のカ
イライであるカルザイ政権は首都カブールに立てこもるだけで、行政権力を全土に及
ぼすことなど夢のまた夢、ついにカブールさえ危うくなってきた。
焦ったゲーツ米国防長官は3200人の海兵隊の増派を決めるとともに、ドイツな
どNATO加盟国に対し同数の増派を求めた。「こちらは3200人を増派するのだ
からNATOも同数増派せよ」というのがブッシュ政権の言い分だろう。しかしNA
TOはブッシュ―ゲーツの思惑通りに動かない。ドイツはアフガン南部への展開を拒
否した。米国政府のあからさまな恫喝に対するNATOの対応には各国にバラツキが
あるし、ゲーツ長官が南部に展開するNATO軍の戦闘能力を疑問視する発言をした
ことによって、米・英・カナダとともに東部と南部に部隊を展開させているオランダ
と米との溝も深まっている。
万事思うようにいかない米軍をここで自衛隊が助けることができれば、「日米同
盟」はいよいよ強化される。もっともそんなことをすれば、自衛隊は奈落の底に自ら
飛び込むことになる。ブッシュ政権はアフガンの現状に苛立ち、北西周辺州がタリバ
-ンの聖域になっているパキスタンへの本格的侵攻を企図している。それが実現すれ
ば、アフガンに送り込まれる自衛隊はパキスタンの民衆からも反撃されるかもしれな
い。ペシャワール会の中村哲医師の指摘を引用する。
〈そもそもパキスタン北西辺境州とアフガン東部は、同じパシュトゥン民族が住
む、事実上一体の地域だ。アフガン、パキスタン両政府は、この境界地域を腫れ物に
触るように扱ってきた。米軍によるこの地域への「テロ掃討作戦」は、両国の暗黙の
タブーを犯して混乱を誘発、連日暴動や自爆テロが起こっている。〉(2007年1
1月5日付『毎日新聞』)
●自民党がアフガン派兵を急ぐ理由
自民党が年初からアフガン派兵の動きを加速させたのには、おそらく二つ理由があ
る。一つは新テロ対策特措法(補給新法)を強引に成立させたものの、それはさして
ブッシュ米大統領の歓心を買うことにならなかったということだ。イラクから陸上自
衛隊を撤退させたことはブッシュ政権を痛く落胆させた。ブッシュの最大の盟友だっ
たブレア首相も忠犬だったハワード豪首相も政治の舞台から去るなかで、まことに頼
もしい小泉元首相を継いだ安倍前首相は無惨に自壊し、福田首相は忠誠心を試されて
いた。米軍にとってイラク戦開始には役立ったとはいえ、もともと象徴的な意味が強
かった洋上給油の再開は福田首相が期待するほどには歓迎されていないのである。
もっとも給油先の諸国との交換公文で海上阻止行動以外への転用に歯止めをかけたと
いう日本外務省の釈明はウソである。かの交換公文はまったくのザル法のたぐいで、
米軍が補給された燃料をイラク戦に転用する抜け道は用意されている。その点だけは
米軍にとってオイシイ話だろう。
もう一つの理由は、タリバーンが制圧され復興の過程に入ったはずのアフガニスタ
ンが再び「失敗(破綻)国家」に戻されたからである。米英のアフガン攻撃は200
1年10月7日に始まった。以来6年余、アフガンはどうなったか。国土が破壊さ
れ、貧しい農民たちが難民になった。侵略と旱魃がアフガン社会を瓦解させたのだ
が、戦乱がなければ農民たちの智恵はかなりの程度、旱魃を乗り越えたはずだ。米英
の侵略がアフガンの荒廃をもたらしたことは、日本がそれに加担したこととともに、
繰り返し確認され糾弾されねばならない。
米英の攻撃でタリバーンは一時期、実効支配を失った。しかしパキスタンとの国境
までタリバーンを追い詰めたはずの米地上部隊は逆襲されてアフガン東部に釘づけに
なり、タリバーンは南部でも勢力を復活させた。NATOが編成して派遣した約4万
3千人のISAFも死傷者を増やすばかりで治安回復はおぼつかない。米国政府のカ
イライであるカルザイ政権は首都カブールに立てこもるだけで、行政権力を全土に及
ぼすことなど夢のまた夢、ついにカブールさえ危うくなってきた。
焦ったゲーツ米国防長官は3200人の海兵隊の増派を決めるとともに、ドイツな
どNATO加盟国に対し同数の増派を求めた。「こちらは3200人を増派するのだ
からNATOも同数増派せよ」というのがブッシュ政権の言い分だろう。しかしNA
TOはブッシュ―ゲーツの思惑通りに動かない。ドイツはアフガン南部への展開を拒
否した。米国政府のあからさまな恫喝に対するNATOの対応には各国にバラツキが
あるし、ゲーツ長官が南部に展開するNATO軍の戦闘能力を疑問視する発言をした
ことによって、米・英・カナダとともに東部と南部に部隊を展開させているオランダ
と米との溝も深まっている。
万事思うようにいかない米軍をここで自衛隊が助けることができれば、「日米同
盟」はいよいよ強化される。もっともそんなことをすれば、自衛隊は奈落の底に自ら
飛び込むことになる。ブッシュ政権はアフガンの現状に苛立ち、北西周辺州がタリバ
-ンの聖域になっているパキスタンへの本格的侵攻を企図している。それが実現すれ
ば、アフガンに送り込まれる自衛隊はパキスタンの民衆からも反撃されるかもしれな
い。ペシャワール会の中村哲医師の指摘を引用する。
〈そもそもパキスタン北西辺境州とアフガン東部は、同じパシュトゥン民族が住
む、事実上一体の地域だ。アフガン、パキスタン両政府は、この境界地域を腫れ物に
触るように扱ってきた。米軍によるこの地域への「テロ掃討作戦」は、両国の暗黙の
タブーを犯して混乱を誘発、連日暴動や自爆テロが起こっている。〉(2007年1
1月5日付『毎日新聞』)
根拠が全然示されてない、他力本願の「願望」でしかないですね。ロクな作物ができずにアヘン栽培で生計を立てているアフガン農民の「痛み」や「苦しみ」など一片も理解していないと言わざるを得ません。
米国の戦争やそれを支持した日本の責任を追及するのであれば、アフガンやイラクの再建に何が必要か、建設的な意見をまず示して行動すべきだと思います。
「市民の意見30の会」とかがどのくらいの規模か知りませんが、ある程度の組織力があれば、現地にまとまった数の人を送って支援活動をさせるべきです(少人数による自己満足のボランティアごっこではなく)。
そして、中村哲氏が「お前らが来るとウチらの身まで危なくなる」と嫌っている自衛隊のPRT活動に代わる仕事をするよう、井上氏に提言なさってはいかがですか?