「お手上げ」を堂々と口にしてしまった菅首相が、続けて口に語ったのがこれだ。

 「ワクチンを接種することによって、今大きな成果を上げていることも事実だ。ワクチンの接種に全力を挙げて取り組んでいきたい」

 「人流抑制策」を捨てた途端、菅首相の頭の中はもうワクチン一辺倒である。「今年の10月から11月にかけて、必要な国民については全てを終えることを実現したい」と、前のめりに希望を口にする。ワクチンさえ打てば問題はすべて解決する、とでも言いたげだ。まるで前任の安倍政権の「マスクを配れば国民の不安はパッと消えますよ」のように。

 こんな単純な発想で国難に対峙(たいじ)しているのか。そんな実態を突き付けられ、後の論戦をまともに聞く気がうせた。物議を醸している「1964年東京五輪の思い出語り」など、もうどうでも良かった。

 とても残念だが、党首討論を聞いた限り、菅首相に「理念の対立軸で野党党首と論戦」など、期待した方が間違いだったと思わずにいられない。

 遅くとも秋までには行われる次期衆院選で、与野党の党首が「目指す社会像」を巡って政権選択選挙に臨む―。 昨年秋のあの期待感は、一体何だったのだろう。