ネットの中の世界

ネットの中の世界をなにかに例えるならば、
あなたはそれをどう表現しますか？


そんなことを、ふと思いました。

わたしにとって、ネットの中の世界は、
基本的には『仮面舞踏会』です。
もしくは『仮面秘密会』でも構いません。


ところで、世の中には『ごっこ遊び』
というものがあります。
『なにかの状況のとき』には『それをなにかとみなす』
という遊びです。

たとえばだるまさんがころんだのとき、
動いていない人は『見えない』ことになっています。
またたとえばお医者さんごっこのとき、
お医者さん役の人は『お医者さんである』
ことになっています。
それを、
「ぼくはおいしゃさんだー」
なんてこどもが言うときに、
「お医者さんを語るには医師免許が必要だっての。
身分詐称は犯罪だぞ、このただの小坊主」
なんて言っていたらごっこ遊びが成り立ちません。
でも、このごっこ遊び、決してこどもの
ものだけではありません。
大人の世界では日常的に見られるものです。

その延長線上にネット世界も仮面舞踏会もあります。
仮面舞踏会のお約束といえば、
『仮面をつけているとき』は『正体不明とみなす』です。
たとえ体型も声もふるまいもお隣さんそのものでも、
ちょびっと目を隠しているだけのその仮面があれば、
それはぜったい『しらないひと』なのです。
むしろ、『知ってはいけない人』とでも言いましょうか。

仮面をつけるということは、
その会のルールということもありますが、
仮面をつけるというその行為自体が、
『中身を知られたくない』ということを
表現してもいるのです。

その気になればできるけど、その気になってはいけない。
むしろ知っても知ったと思ってはいけない。
『なにかをできる』けど『やらない』。
それが奥ゆかしさであり、もはや日本の美徳とでも
いうしかない言葉です。

電車の中では床に『座れる』スペースがあるけれど、
『座らない』のはなぜでしょうか。
人ごみのなかでも、病院の中でも
実際に『大声で喋ることができる』けれど、
『大声でしゃべらないようにする』のはなぜでしょうか？

こういうことの答えに、
「やってはいけないことだから」や
「やるべきものではないから」などと
答えられる人は、美徳感のある人です。

でもこどもは、
「やれるんだからやっていいじゃん」
なんてことを平気で答えるのです。

電車の床には座れる場所があるから座る、
電車内でも携帯電話はつながるから大声でしゃべる、
マスクなしでも暮らせるから人の顔に向かって咳き込む。
そんな世界です。
……まあ、こどもだけのものでもありませんけど。

すこし話はずれましたが、仮面舞踏会です。
仮面をつけているとき、人は匿名の『誰か』になります。
その誰かは、自分より身分の高い人かもしれませんし、
年配の方かもしれません。
『だれか』になっている自分も、
他人から見たら身分が高いかも知れず、
年齢が上かもしれません。
仮面をつけている間のことはなかったことになるという
お約束なので、ここでは
『暴言を吐くこと』もできます。
でも、おとななら、しません
むしろ逆の可能性を考えて相手には敬意を持って
対するでしょう。
なぜかといわれれば、それが美徳であるからとしか
説明できないようなものです。

それは、ネットでも同じです。

ネット上に伺える、だれかの人格。
それは匿名の誰かであって、特定することはできません。
また、特定することも望まれてはいません。
仮面舞踏会では自分から身分を明かすことも
望まれてはいないのです。

親しくなれば雑談中にでも、話の流れに必要で、
「大学院で研究中に～～」
みたいなことを言う場面もあるでしょう。
でもそれは身分ばらしでも何でもありません。

なのにこどもは、会った直後に聞いてきます。
「何歳？　どこに住んでるの？　誕生日は？」
さらには自分から、
「13歳の中1です！　よろしく！」
なんて言ってくるしまつです。

……自分が何年生だとか、何歳だとか。
ネットで匿名の不特定の人物と関わるときに
なにが必要になるのでしょうか。
話も薄っぺらいし、ちょっとした雑談も
暴投してくるしとこどもには本当にうんざりです。


道を歩く人歩く人、声をかければ輪になって
雑談がはじまるような、気のいい人ばかりだった
あのころのトリスタが懐かしいです。
それに、変な熱気があったピアプロも。

……小中学生はネットになんてつなげなくなればいいのに。