問子＆答子 11話

●コールは短命？

またカスタマセンタに電話したんだけど。
この前話した人がよかったから訊いてみたら、
もうやめたんだって。
なんでそんなに簡単にやめちゃうの？

　簡単になんてやめないんだからねっ！



★ポイント

　コールの人はぼちぼちと職場を移ります。
……が。それは別に飽きっぽいからではありません。

　たとえば想像してみてください。
　ある晴れた春の朝。
今日はなんだかいい気分だなあと
ふわっとした心で会社に行くと――、
朝から人のことをクズだのゴミだの言ってくる連中と
ひたすら電話で話さなくてはいけないのです。
しかもそれが一日ではなく、毎日。
そんな場所にずっといたいと思いますか？

　わかりにくいとするなら、自分を第三者的に見て、
行為の片っ端からそれについて
文句を叫ばれると思ってください。
朝６時に起きると、
「なんで６時起きなんだ、ばかやろう！」
「さっさと着替えろこのやろう！」
なにかをすれば、
「なんでそんなことしたんだ、ばかやろう！」
なにかをしなければ、
「なんでなにもしないんだ、このやろう！」
その他、「この不良品！」「詐欺野郎！」「つかえねえ」
それを毎日毎時間、耳元で叫ばれ続けるのですよ。

　もっとがんばろうと思ったところで、
正直、こころが持ちません。
次の仕事も決まらないうちに
やめてしまう人も少なくありません。
　でも勤めてないときに職を探すと買い叩かれるし
ろくな場所も見つからず――
結局、またコールをするしかなくなる、
そんな繰り返しなのです。

　コールで長命なのは、電話で蔑まれることに
快感を感じるようなどこかねじれた人間か、
楽な電話だけとっていればいい部署の人間、
あとは他に場所がなかったり
電話で相手をなだめることに変な生きがいを感じる
人間くらいでしょう。
もしくは、普通の人間でもできるコールが
あるのかもしれませんが、
わたしの知る範囲ではないので
知ったことじゃありません。

　優しい人であればあるほど
コールには向いていそうですけど、
残念ながら現実は違います。
笑っていて欲しい人が、守りたくなるような優しい人が、
休み時間や電話のあと、涙をこぼしているのです。
『人の役に立ちたいから』、そんないいひとは
コールに来てはいけません。
『相手を口八丁でやりこめたい』、
『ののしられさげすまれたい』、
そんなどっちかといえばずれた人間のほうがコール向きです。

　コールにろくな人間がいないと言う方の人間は、
そう言う前に、ろくな人間をやめさせてしまうような
自分の物言いを反省してください。
　……反省するような人間がかけてきたりはしませんけどね。

　マナーを教える会社の人間が、対応がなっていないと
難癖つけてクレームをふっかけてきたりもしますが、
むしろわたしは人として、会社として
そのマナーはどうなんだと思いますけど。
服務規程がなければクズ会社として
ランク付けして公表したいくらいです。

　あんなのこそいなくなればいいのに。