灯油売り。
冬場はよく街で見かけますが、
冬を過ぎるといつのまにかいなくなっている、
季節の妖精のような存在です。
考えてみたら、冬場以外は何をしているのでしょうか。
というところを疑問に思ったので、買いに出たついでに訊いてみました。
すると。
「モノがなければ売れないでしょう?」
と苦笑いで言われました。
それから説明してくれたところによると、
一年の大半は畑をやっているそうです。
春は冬を越えた土を耕し、木のダメージを見て枝などを切り、
健康を取り戻させ、夏あたりでいらない枝を切り、
実を太らせる準備をし、夏の終わりから秋の入りにかけて、
実ったトウノキ(灯の木)から実をとります。
そのトウノミ(灯の実)をつぶし、出た油を分離し、
油の純度を高めて高めて高めきったものが灯油となり、
冬の間にそれを売り歩くのだそうです。
実の成りぐあいが遅いと精製が冬の時期に入ってしまうので
輸入物の灯油にお客さんをとられたり、
台風などで実が落ちてしまうと、冬に売る分が不足してしまったり、
年中気が休まるときがない商売だと言って、
灯油売りの人は笑っていました。
普段見えないところにも、見えない苦労があったんですねえ。