おにぎりとおむすび。
なんとなくではどちらも同じようなものに思えるかもしれませんが、
実はまったく違うものだというのをご存知でしょうか。
おにぎりをおにぎりたらしめるもの、
おむすびをおむすびたらしめるものとはなにか、と言えば。
それは動作です。
俵型とか三角とか丸とか、形はまったく関係ないのです。
それがどういうことかについて説明していきましょう。
さて。
たとえば、ごはんを木枠につめ、魚の切り身などをのせ、
木蓋や重しなどを載せて押して形を整えたら、
できあがったものは何と呼ばれるでしょうか?
……これは、『押し寿司』と呼ばれます。
押して形を整え、作ったから『押し』寿司です。
では、木枠や重しなどを使わず、
手でご飯の形を整え、魚の切り身などを載せて作った食べ物は
何と呼ばれるでしょうか?
……これは、『握り寿司』と呼ばれます。
握って形を整え、作ったから『握り』寿司です。
この二つの差異は、出来上がり後の形ではなく、
『どうやって作ったか』の手段です。
では、ここで『握る』とは何かについて考えてみましょう。
握るとは、『片手で力を入れてつかむ』行為のことを言います。
両手で鉄棒を握ると言えば、片手で鉄棒を握り、
もう片手で鉄棒を握り、それぞれ別々に鉄棒を握ることを言います。
ハンドルを握るというのも、片手でハンドルを握り、
もう片手も、片手から離してハンドルを握ります。
握り寿司が握りである理由は、ここにあります。
握り寿司を作る行為は、片手にご飯を入れ、
力をかけて整形するからです。
常に両手を合わせて作ったりはしません。
よって、片手で力を入れて、作ったのが『おにぎり』です。
握り寿司も、魚などを取って、寿司にしなければ単なる握り。
それが、おにぎり の原型です。
ただし、注意しなければいけないのが『にぎりめし』です。
にぎりめしと呼ばれるときは、作った側でなく、食べる側の言葉で、
『片手で握って食べられるごはん』のことをさす場合があります。
この場合、作る仮定がどうであろうと、
食べる人が片手で握って食べられるものだと判断すれば、
全部にぎりめしと呼ばれる可能性があります。
では、結ぶとは?
きれいな水が湧き出ているところで水を飲みたいと思い、
両手でおわんを作って水を受けることを、何と言うでしょうか?
……これは、『水を結ぶ』と言います。
また、同盟を組むなどして、二つの組織の責任者が
協力関係に移行すること、
また最後に手を合わせることをなんというでしょうか?
……これは、『手を結ぶ』と言います。
そして、両手をずっと組み合わせながら
ごはんをその中に入れ、整形することをなんというでしょうか。
……これは、『飯をむすぶ』と言います。
にぎって作られたものが『おにぎり』であったように、
むすんで作られたものが『おむすび』です。
よって、赤ちゃん手遊び歌の『むすんでひらいて』で
片手をグーにして『むすんで』というのは誤りです。
それは『にぎって』です。
本来は、両手を組み合わせて『むすんで』にしないといけません。
言葉とは、時代と共に変わるものですが。
魂が失われていく言葉に、言霊もうすれていくのを感じます。
2019-05-10 21:19:17