28話 「写真」
「宝物って…まあ確かに俺にとってはそうですが、他に意味があるんですか?」
守里が聞くと、小林は「私は72歳になるが爺さんの残した遺産の一つが行方不明でね。兄が2人いるが血眼になって探していたんじゃよ。ところがどこにもない。1人は亡くなってしまったが、もう1人は初めは私が持っている、と疑っていたが、今じゃ疎遠になっているんじゃよ」
暖炉で暖まっていたみんなも不思議そうに聞いていた。
「爺さんは缶バッチを集めるのが好きでね。兄達は信じなかった。そんなガラクタに価値はない。おそらく他にないか探しているとき落としたんじゃろ。鑑定士まで呼んで価値を見出していたくらいじゃ」
若干寂しそうに暖炉の前の椅子に座って話しているのを、同じく寂しげにみんなも聞いていた。
守里は「缶バッチはどうなったんですか?価値のあるものもあるはずだし、ここには何か彫ってあります」と缶バッチを見せて話し出した。
「ほう…」と懐かしそうに見つめつつ、老眼鏡を探してきて見始めた。
「暗号じゃろうが、どうみても場所にしか見えんな」突吠えんで言った。
「ただ…場所も分からんし、何があるかも分からん。缶バッチの山が出てくるかもしれんな」と笑い出した。
「私は元エンジニアだったからなぁ…」窓の外を見ながら話し出すと興味深い話だった。
「私と麻生はマーズの鉱石について調べるうちに、不思議なことを知ったんじゃ」と真剣に話し出した。
興味深く聞いていると、急に話を変えたのでみんなが戸惑って顔を見合わせた。
「この志賀高原の池なら冬はあまり見に行くことを進めないがなぁ」
手ではいそいそと何かを書き出している。
みんなが注目すると「ドアの外に誰かおる」と書いてあった。
ララが何か言い出そうと身を乗り出すと、カンナは機転を利かせて話し始めた。
「残念だなぁ…でも小林さんに会えたから良かったかも、ね!みんなで観光は春か夏がいいかもね!」
トキノが続けて「夏は避暑地だから暑さ凌ぎには持ってこいだわね!」
セイナも時計を見て40分ほど過ぎていたので合わせて言った。
「小林さん!私たちまた夏にくるけどいいかなぁ?」
小林は「来年の夏まで生きていたらじゃな」
みんなが笑っていると、ベラーナがドアの近くで耳を澄ませていた。
足音が遠のいて行くのが分かったらしく、OKと示した。
小林が「裏かね?」と聞くとみんなが頷くと近道を教えてくれた。
念のためみんなで雑談をしつつ、麻生と守里、ベラーナだけで小林と話していた。
麻生は静かに「マーズの鉱石が?」小林に聞く。
「マーズの鉱石…だと思うが本当に分からん。しかも教会もどこか分からんなぁ」とお手上げのように答えている。
小林は守里に缶バッチを隠すように伝えて、みんなに別れの挨拶をした。
「ちょっと待った!爺さんの頃のどこで撮ったか分からない写真があるから役に立てておくれ」
写真を見ると古びていたが、どこかで見たことのある光景のように感じた守里。
「多分ですよ?多分ですけど…俺の爺さん家の近くに似てる!この家に見覚えありますから!」
大きな声で言い始めたのでみんなで静かに、と諌めるとトキノが言った。
「変な話ですけど…爺さんの葬式で行ったとき、俺まだ小さかったけど、この変な屋根に見覚えあるから、んで…この屋根の家の犬に追いかけられて逃げたことあるから。でも場所どこだろ…多分もうないかもだし…名前がわからないけど凄い田舎だったから」
「んじゃ、その凄い田舎ってのを目指そう」とベラーナは言い、守里と麻生、小林の4人はコソコソ話していた。