第20話 「余裕と混乱」
「ダズラル攻撃は使ったのかい?」
Dと名乗る守里剣の父親の諾(だく)は、椅子に座って寛いだままアストラーダに聞いた。
半笑いのアストラーダは机の側に立ったまま、Dに告げる。
「勿体無いのでね。守里剣君には何か隠している攻撃がありそうなので。それを引き出してから攻撃した方が今後有利になるかと」
「じゃあひたすらミサイルとサーバ攻撃かい?」
Dも半笑いで質問をした。
「サーバは息子さんの刀に似ているので戦いやすい」
アストラーダにはどこか余裕があるようだった。
だがDにはまだ余力が剣にはあると感じていた。
Dは不思議そうにアストラーダに聞いた。
「なぜ、私が生きていると分かったのかな?発信機などないが?」
アストラーダは簡単に答えた。
「マイールは目の前で見ている。今に至って指揮権は彼にある」
Dは薄笑いを浮かべながら言った。
「いつか、アゼラ再建を祝いたいものだね。新たなる門出を」
アストラーダにもDにも余裕が見られたが、どこかで何か異変があるとも感じていた。
このまま順調なわけがない。
守里剣には何か特別な力がある、アストラーダは感じていた。
「おい呑気君!自分からは行かないのかい?親父さんのところへ」
ベラーナが珍しく絡んでいる。
カンナがすかさず答えた。
「ああ、気にしないでね守里君!ケーキを作ろうとしてリキュール酒だけで酔ってる」
お酒なんて飲まないみんなに対して、ケーキ作りの段階で嗅いだだけだった。
「情けない…嗅いだだけなのに…だって今日は…まあ仕方ないか!」
誰もが口にしなかったがみんな気付いていた。
麻生の誕生日だったからだ。
ただ守里はあの早いジャイワナーゾのためのGV(ジーヴィー)の強化が気になっていた。
半日経って…あと2時間程との内容が整備士のサイから連絡があった。
「施設から新型デロリデだよ〜」
ベラーナは間に合わない。
シークル艦が手薄にあることを覚悟して、守里が向かった。
アル・レレン艦長は迎撃の準備をしている。
もしかしたら、シークル艦に気付いたかもしれない。
ゲンナ号に気付いた様子がないなら、シークル艦でも攻撃できる。
ただ場所がバレてしまうため、できるなら守里に任せたい。
守里の感情がアル・レレン艦長に伝わってきた。
「守里君!それは使うな!」
ギリギリで引っ込めたのはパワークロノスだった。
そしてハッとした。
自分が追っているのは敵なのか、それとも親父…なんとも言えない時間だった。