第19話 「悪用されたマーズの鉱石」
「マーズの鉱石って進化するんですか?」
守里はシークル艦に向けて質問をした。
麻生は顔をしかめたまま、一つの出来事を語った。
「昔の話じゃが…マーズの鉱石に水素を混入した実験をしたことがあった。爆発的な威力だったから採用されることはなかったんじゃ」
「麻生さんと同じようなエンジニアなら考えますよね?」
守里の問いかけにゲンナ号の近くにいたベラーナが畳み込めるように質問をする。
「剣の親父さんならできるってことか?恐ろしいことだぜ?」
アル・レレン艦長が続けて話す。
「…あり得るな。同じエンジニアなら考えるだろうし。私だって恐らく敵なら容赦はせん。水素だろうが何だろうが強くさせるだろう」
麻生も同じ意見だった。
「それをどう使っているかですよね?水素爆発はしないだろうし…」
守里は小声で伝わった「仲間にならないか」の話もした。
アル・レレン艦長は麻生のに向かって話し出す。
「守里君には何か他にあるのかもしれないが、知っていることはあるかい?」
麻生は缶バッチに書かれていることは他にはなく、恐らくパワークロノスが目的ではないかと話した。
他にあるか…守里に質問がいく。
「俺の腕ってことはないと思うし、そもそも設計は麻生さんとセイナがしているから…あ、関係ないかもしれませんが、以前マーズの鉱石を天井裏から持ってた時にこれがありましたよ?」
守里が画像を転送すると、セイナが驚く。
「これっておじいちゃんがマーズの鉱石と一緒に残した砂時計!」
セイナは成分を調べることにすると、簡単に答えが出た。
「何でかは分からないんだけど…水素が混じっている。しかも砂自体が結晶になっているの。石英(せきえい)っていうクオーツで酸化鉱物だよ」
ベラーナが答える。
「かなり難しい説明なんだけど…俺バカだから分からないかも…要するに何に便利なのさ?」
「うーん簡単にいうと耐久性に優れたものが作れるってことかな。水素もあれば速度もあげられるし、爆発はさせなくてもパワークロノスとかGV(ジーヴィー)を強化できるの」
麻生とセイナは整備士のサイと話して、どのくらいで作れるか相談した。
「成分量を調査してだから、1日あればできると思います」
サイが答えると麻生とセイナは、時間を短縮させるために加わることを告げると半日でできることも分かった。
「新型デロリデです!」
シークル艦から声がすると、守里は設計などを急ぐという言葉を聞いてから新型デロリデに向かう。
「やばいな…あれって施設の方に向かうかも…」
守里は阻止するように立ちはだかった。
この新型デロリデには早さを感じない。
両手剣で立ち向かうと火花が散った。
「やめてくれ!運ぶだけなんだ!」
新型デロリデから声がした。
「白旗を上げてこっちにきて欲しい」
守里は捕まえてシークル艦に向かった。
「…俺は…捕まるくらいなら自爆もするぞ!」
機体から見えたのは爆発物だった。
そうまでして運びたいものがあるとも思えない。
逃げの手口と咄嗟に思った守里は機体の手から爆発物を振り落とした。
「い、いやだ!」
新型デロリデの操縦者の言葉に耳を傾けている時だった。
その時早くに向かってくるジャイワナーゾが目に入った。
マーズの鉱石を悪用した父親が乗っているように思えた。
1人で2機は難しいか、そう思っていると新型デロリデの動きが止まった。
ジャイワナーゾが体当たりをしてきて、Gビャクヤの体勢が大きく崩れる。
新型デロリデを運ぶようにして飛び立っていった。
その場に何かある。
新型デロリデの操縦者であろう人物だった。
動かないことは分かっていた。
自害するほどの物を運んでいたことになる。
助ける間もなく地上に落下していった。