5話 黒い死者
あくびをしなら、ジャンク屋を後にしようとする鏡と安藤は、
「んじゃ、今日はこれで帰りますわ」
と鏡と安藤はちょっと収穫があったので喜んで帰って行った。
約束の時間はあっという間にくるもので、さあ、行こうかな?と思いつつ、設計図、いつものガラクタのような工具を持って用意をした。「あ、これ持って行った方がいいな」
とお客さんにもらったお菓子を持っていくことにしたが、内心2つは鏡たちに渡してしまったから、と入れ物を代えて持っていくことに。
どうしても前から、横から、後ろからと眺めてしまうのは自自動戦機。
それに気付いたセイナは、「あはは…剣?入っていいよぉ~」
と、ちょっと照れつつ、本当に頑張っているのって伝わるなぁと思っていた。
突然、セイナが「ゴメンね!自動戦機の手の部分だけ描き忘れて、それで、どうしようって!」と慌てたように守里に言うと、「いや、いいって、てか設計図持ってきたしね!」
と任せろ、みたいな顔で言うと、セイナは嬉しそうな顔になった。
「んで、その前にみんなに挨拶しないといけないから…」
とカンナやララやトキノに、「日本の名前は温泉まんじゅうって言うんですけど、昨日のお礼と思って受け取って下さい」と言うと、みんなで覗き込みながら、カンナが、「守里君やるね~、ねいうか、和の心なのかな?お礼におまんじゅうって!」となかなか好評だったので、守里は安心した。
セイナと守里は2人でコックピット内で話し始めましたが…
突然真剣な顔で、「俺の家族のこと話していなかったね」
と話をし出し、セイナも真剣に聞くことにした。
「俺のおやじは聞けば思い出すような会社の科学…てかエンジニアなんだ」
「母さんは何をしているかは分からないんだよね」
「北極から見える夜のように、俺の家には(ビャクヤ)って名前を付けたんだ」
「プレハブ小屋、よりはいいかなぁなんてね」ちょっとだけ笑って言いつつ、また真剣な顔で、「この先、何があるかわかりゃしない、だから造っているんだよね!」と、自分の家族の話を少し話しだした。
「あのね、あたしのパパは教授でエンジニア、ママも似た感じなのね」
「聞いたことあるかなぁ?シロハタ・カンパニーってところなんだけどね?」
と聞いただけなのに、守里は驚いて、「あ、そうだ、そうそう、おやじは確かそこにいたんだよ!」
「え~~~~~~~っ!」
っとひっくり返りそうなくらい驚くセイナに、
守里も驚いてひっくり返っていると、カンナたちが飛び込んできて、ララは少林寺拳法の準備をしだしましたが…守里はひっくり返ったままだった。
「立たせてもらって…いいですかね…い、痛い…」とひっくり返っているのとトキノが立たせた。
セイナは「カンナ姉、ララ姉、トキノさん話があるかな…」と今度はゼーゼーしながらも「設計図預かってもいい?ロロナと相談するね」「今度は…と連絡先を交換して、また連絡するから…でもいい?」と顔を覗いて聞くと、イタタタと言いながら、「分かった!今日は渡すだけになったけど…」とセイナに伝えながら、みんなには「ありがとうございました」と挨拶して帰って行くことにした。
「シロハタ・カンパニー…その名前だった…」
と真剣な顔で、何か繋がりがあるのか…と思いつつゲンナ号を後にした。
しっかし、久しぶりに悲鳴聞いたなぁ…セイナ大丈夫かなぁと考えていた。
「なあに、あの悲鳴!」
と、カンナが問いただすと、セイナはトキノの作ったマシュマロ入りココアをまず一口。
セイナは落ち着きを取り戻すように、「剣のお父さんの勤めている会社って言うのが…」
とみんなはセイナの顔をジッと見ているので、恐る恐る、「シロハタ・カンパニーなんだって…」となぜか小声で言った。
「は~~~~~~~っ??」
みんなが一斉に言うので、セイナはすかさず、「どの会社か知らなかったらしいの、でも、あたしがママの話しようとしたら…」
みんなで顔を見合わせてから、カンナがウロウロと歩きだした。
「それは大変だわ、一大事!かもしれないわね?」
とカンナが言うと、トキノは何も言わずララは、「ねえねぇ、カンナ姉!ママやパパに連絡してみた方がいいんじゃない?」
と言い出した。
セイナは、なんか言っちゃたからかなぁと不安な感じ。
トキノは足をカタカタ立ったまま揺らしながら、対策を考えている様子。
トキノは考えつつ「そうね、連絡した方がいいわね」となった。
ララが、まさかねぇという顔をしながら、「あの、自動戦機が敵になったら困るんだよ」
と言うが、セイナが真剣になって、「ララ姉!だったら自分から話さないと思うよ!」
と言い、「セイナ…まあ、確かにそれはいえるわね」
と沈黙が続いていたのですが、セイナたちはは不安そうにしていた。
カンナ、ララ、トキノ、そしてセイナも加わり、
提案のまま、母リリアンと父である麻生(あさお)を呼ぶことにした。
すぐにとのことで、次の日麻生が先にきた。
みんなと久しぶりに会うのでハグをしたり、麻生はロロナに夢中になっていた。
一番喜んだのはセイナだったのかもしれません。
リリアンとは別に暮らしているので、後に来た。
リリアンは何か暗い顔をして、真剣に経緯を聞いていた。
母親のリリアンに守里という名前に心当たりがないと聞くと、
考えに考えたようではあったものの、検討がつかない様子ではありため息を交えて言った。
「エンジニアもたくさんいるわ、幹部なのかもしれないし…分からないわね…」
「全員が全員知っていないわ、それに話によると家庭が複雑でしょ?偽名かもしれないし…」
そして、深呼吸をしながら話すことがあるようで、何から話していいか分からないようなリリアンでしたが、この話を先にした方がいいかもしれない…と思い、ため息交じりに全てを話し始めた。
「あなた達が忘れようとも忘れられない人の話をするわ」
「驚くかもしれないけど、避けては通れない話だから…」
みんながゴクッと息を飲みながら話を聞くことになり、その際、お父さんも知っている話だからと付け加えた。
麻生も頷いてから、セイナの顔をみて大丈夫だからという表情をしました。
「アベルト・ゼスタローネの話なんだけどね…」みんなが動揺し始めた。
冷酷非道で自分の義理ではあっても父を殺した人間。
「実は、アベルト・ゼスタローネの裁判だけ非公開で、しかも秘密裡に行われたの」
カンナがすかさず「どういうこと??だってあれだけ多くの人の前で殺して…」
まで言いかけるのをトキノは黙って聞くように促した。
「しかも、結果がどうなっていると思う?たぶん無罪かもしれないの」
「秘密理だったから、公表もされず、もしかしたら無罪…その後の消息は不明になっているわ」
さすがにトキノも含めて驚いていると、更に「もし、アベルト・ゼスタローネが復帰していたら大変なことになるわ」「彼は次期社長だったから、社長になっていたらと思うと…」
カンナが、「殺人で無罪なんてり得ない!権力の力って奴?法律はそんなことで…」
と落胆するのだった。
ただ、みんなには同時に、アベルト・ゼスタローネならやりかねないとも感じていた。
忘れもしないあの殺戮、狙われていたころ、みんなで恐怖したことを誰もが口に出さずとも感じていた。
また、争いになる、狙われると誰もが痛感していた。
セイナは思わず外へ出た。
そして何気なく空を見上げ眺め、空気を吸っていた。
その時と同じころ、守里は夢を見ていた。
やっと自分の願っていた自動戦機に乗れる時がきた。
操縦は、守里が半年前のこと、父親にテストパイロットとして操縦したのみの経験だけ。
でも夢の中では、操縦になれ自由に乗りこなせるようになっている。
自由になった自分もつかの間、そこへ、何か光るものが現れ狙ってきたが、動きが早く対応ができない。
その光るものは黒い物体、それしか出てこない。
動かない状態になってしまった守里。
そんな時目が覚めた。
息づかいまで荒くなって本当に乗っていたような感覚。
「なんなんだ、あの黒い物体は…いや、夢だ…」
そう思いつつ外に出て、真っ暗な闇の中空を見上げていた。
何とも言えない不思議な感覚を体験したのだった。
そして、また真っ暗な空をただぼんやり見ていた。
広がる空にいつか…そんな想いが強くなった気がした。