8話 勇気
ゲンナマーズかぁ…
思いにふけっていた守里剣。
「Gビャクヤ」と決まってゲンナ号からジャンク屋の家の、「ビャクヤ」に戻った守里は「ビャクヤ…ありがとな、本当のっていうか…新しいビャクヤのところに行くことにするよ」と言い、自分がやるべきことを考え出した。
なかなか眠れないでいると、「せっかくこことの別れなのに、眠れやしない」と外へ出て空を眺めながら、あの先に行くことになると思いを巡らす。
良いように考えれば夢が叶う、でも気になることがあるので、空を眺めながら以前みた夢を思い出す。
「黒い機体…あれは本当におこることなのか…?」
夢が叶うことと同時に、アベルト・ゼスタローネという存在に、何ができるかと真剣に屋根の上で考えていた。
テストパイロットの時は相手は模擬型だったが、今度は実戦が待っている。
相手はどんなであれ人間。
善であれ、悪であれ…でもやらなきゃいけない時もあると考えていた。
テストパイロット時代そんな話になったことを思い出していた。
屋根と言っても、大きなトラックの荷台に1度上って、それからじゃないと登れない高さにある。
考え事をするときによく利用する、内緒の安心できる空間だったかもしれない…。
ジャンク屋にあるプレハブと言っても、2階建になっていて、1階は倉庫になっているので、2階の屋根にはハシゴでもないと登れない。
ただちょうど手頃なトラックがあり、つたって登れるようになっていた。
のんびりしていると、片付けなきゃいけないことを思い出し、慌てて2階の部屋に行き、必要なものを用意しだした。
「え?俺ってこんなに荷物ないの?」
ほとんど工具だらけで、あとは管理人に借りていたことを知って唖然とする。
頭をくしゃくしゃさせながら「笑われるくらい荷物少な!」とため息をつきながら、簡単でいいかぁとも思った。
「あいつらにも挨拶しないといけない」
早い方がいいと思ったのでしたが、
まずはゲンナ号に確認しないと思い、連絡すると麻生が変わって用意が出来たことをいう。
朝まで部屋でも片付けようと思っていると、イタリアへ鏡と安藤と3人で初めて来た時の写真を見つけ、荷物に入れる。
朝になって最初にきたのは安藤だったが、迷った挙句、鏡が来てからにしようと思う。
あくびをしながら鏡がきた。
「ちょっと2人ともいいかなぁ…」と真剣に、何とも言えない表情で呼んだ。
「安藤の飯(めし)の話かぁ?」と鏡が言うと、首を振って自分の家へと呼んだ。
「綺麗になってるな、あのさ、もしかして…」と安藤は言いかけるが、何か言いたげな守里を見て黙る。
息を整えた守里だったが、意を決したように「俺、ジャンク屋辞めてここも引き払うことにしたんだ」とサラッと言うので、鏡と安藤は顔を見合わせた。
鏡は冗談、と言いかけたが、綺麗になっている部屋を見て「俺たちどうすんだよ!お前はいいよな?でもさ…」と言うと、安藤は「なぁ、俺たちそれぞれの目的があってきたんだよな、親も了承してさ」
「守里は目的を叶えるため1歩進んだんだよ、鏡、俺たちだけでジャンク屋やろうや」
と言うと「あんど、お前もシェフになったらここ離れるって目的あんじゃん、俺は?」
すると安藤は「俺の目的はまだまだ遠い先に話だぜ?まず資金集めなんだからさ」
「それから学がない俺は勉強もする、何年、何十年先の話なんだ」
「考えても見ろよ、その間にかがが先に何か見つけるかもしれないんだぜ?」
ため息をついた安藤は「だから、ここは守里を温かく見送ろうぜ」
鏡はその場からどこかへ走っていってしまった。
守里は追うようにしたが、安藤は「そっとしておこうぜ、あいつも分かってくれるよ」
「ところで、俺、急いで今日ポトフ作ってご馳走するよ、味の保障はないけどな!」
何だか気になってはいた守里だが、夜まで鏡は帰って来なかった。
安藤の家に行く前に、照れながら花を買っていった守里だった。
安藤の家には、お母さんがいて花を喜んでくれたので安心しつつ、ポトフの準備をしている安藤の姿がシェフのように見えた。
お母さんは席を外してくれたが、そこへチャイム。
安藤が出ると、そこには照れている鏡の姿があった。
安藤は先に帰って準備をしていたのだが、最後の仕上げをして、3人で食べることにした。
すると鏡が「あのさ、あれから考えてあんどの家に来て話したんだけど…んでさ拾って…」
とおほんと言い、守里に「…ってまあそれはいいとして、来た時にど緊張で挨拶に来てテンパってたよな」すると安藤が「そうそう、ジャンク屋の守里でプレハブの人間で…とかわけわかんない説明親にして」と3人で笑っていた。
「ジャンク屋ってなんだぁとかさ、お前面白いからな」
と鏡は言いながら「あんど!お前このポトフ、マジで上手い!」
守里も一緒に「マジで上手い!まだまだ食える!」と楽しげに言った。
すると、鏡と安藤は、照れながら「まあさ、故郷だと思ってまた何かあったら戻って来いよ!」
そして「拾いものでなんだけど俺たちから…」と「勇気」と書いた缶バッチを渡してくれた。
握りしめながら、真剣な顔で「ありがとな!大事にするよ…!」
と2人と握手を交わしながら、2人を後に、ゲンナ号に向かうことにした。
「勇気…」
そう1人事を言いながら、ゲンナ号に向かった。