37話 「それぞれの向かう先」
無線の周波数を戻して守里とベラーナ、ゲンナ号だけにする。
「おい!このまま行くか?それともゲンナ号に戻るか?」
ベラーナは守里に聞いてきたが、このまま戻ったらまずいとも感じていた。
守里が無線を通して言った。
「…小林さんのところにいる少年は守らないと。それにマーズの鉱石のあとも心配だし。敵のことが分からな過ぎる。一旦小林さんのところに行かないか?」
ベラーナは反対することもなく、ゲンナ号へ一緒に戻った。
ゲンナ号ではカンナが出迎え興奮しているように手招きする。
準備をしていたララ機から驚いて出てきてカンナのところに行く。
麻生とリリアンはマズい、と言うばかりに守里をスクリーンから避けようとしていたが、反対にベラーナと一緒に近づいてきた。
誰も言葉が出ない状態でスクリーンを見ている。
「セイナ・凛、マーズの鉱石はどこだ?2人が死ぬぞ」
スクリーンには鏡俊一と安藤成が銃口を向けられたまま写っている。
傍らには小林が立っていたが動けないでいた。
「…な…何やってんだよ…かが…あんど…」
守里からやっと出た言葉だった。
「私たちも見つけられなかった。どこかも分かるはずないわ!」
トキノが話すと突然セイナが言った。
「…そこにいるのは誰なの?」
みんなが鏡と安藤の後ろの人物に気づいてよく見ると、顔を隠した人物がいた。
カイリもいることを知って、謎の人物を見るがアベルトは無視をしていた。
「そうか」
同時に銃口が小林に向いて両足に向かって放たれた。
「あ…くっ…!」
苦しむ小林にカイリは微笑んでいる。
鏡と安藤はわけが分からないように動揺し、俯(うつむ)いた。
守里は怒りを抑えることができなかった。
「カイリだったな!真っ向勝負しようじゃないか!」
叫ぶように言うとアベルトは無表情のまま続けて言った。
「知らないのか、嘘なのか分からんがアゼラに来い。まずは君から話を聞こう」
リリアンが止めようとするのをベラーナが静止する。
ベラーナは怒った顔でアベルトに告げた。
「弱いもんいじめは止めないか?そっちが来いって言うなら俺も行く。そもそもザンラがいるんだろ?卑怯だぜ」
カイリは笑いながら言った。
「この2人はどうすんの?」
顔を隠した男は一言だけ告げた。
「セイナ・凛を人質にする。この2人は山に置いて行く。それとも殺した方が良いか?」
落ち着いた、なんだか優しい声で言う男にセイナが言った。
「私が人質になるから2人を山小屋に残してください」
カンナとララが止めようとすると、セイナはトキノと麻生、リリアンに言った。
「ゲンナ号で2人を迎えに行って。小林さんも助けて。私はアゼラに行く。あの2人は殺させない」
力強く話すセイナを止めることはできなかった。
守里がセイナに言った。
「取り返すから。必ずだと信じて」
頷くセイナにベラーナは機体の手に乗るように言って歩き出すのを誰も止められなかった。
守里もベラーナもそれぞれの機体に乗る。
「アゼラがどこにあるか誘導は?」
守里が顔を隠した男に聞いた。
「私の戦艦の信号弾が見えたらその後ろに来ると良い。俺はマイール・ゼスタローネ」
男が話すと信号弾がそんなに離れていない場所から見えた。
「Gビャクヤ発進!」
「ベラーナ機発進!」
ベラーナの手にセイナを乗せると、アゼラに向かう。
それと同時にゲンナ号はトキノとカンナによって、日本へ向かった。
謎の人物は消えて、スクリーンも砂嵐になっていた。
麻生とリリアンはララに、一応機体に乗っているよう指示してそれぞれが動き出した。
麻生は同時に思った。
「この男がアベルトやカイリの弟マイール…ゼスタローネ…3兄弟の弟か…」