第9話 「Dの正体」
麻生と守里は出来上がった機体と新たに加わった武器を見ていた。
麻生の説明に守里は飲み込みがよく、これなら接近だけでもミサイルだけでもない。
パワークロノスの充填にも時間がかかるが、これなら安心だった。
「パワークロノスはとっておきじゃな」
麻生がそう言うように、守里にも分かっていた。
ゲラザロナとの戦闘の時にも限界を感じ取っていたので、照準を間違えたら困る。
「GV(ジーヴィー)は、接近タイプじゃがV字型で高度な攻撃ができるはずじゃ」
刀はきちんと活かされて、いつでも使えるようになっている。
守里は父親を感じていた。
「…エンジニアだったんですよ。エンド・カンパニーにいないならアゼラに力を貸していてもおかしくない」
守里のセリフに麻生は疑問を抱いた。
「シロハタ・カンパニーの人間だったら、亡くなっているとか…はないかね?」
それと同時に麻生は会ったことがある謎の人物を思い出していた。
確か「D」と呼ばれている高官だった。
そこで守里に質問をした。
「守里君、親父さんの名前は?」
いずれ来ると分かっていたかのように、守里は答えた。
「守里諾(まもりだく)ですね。似た名前がありましたか?」
麻生は隠すことなく守里に答えた。
「エンド・カンパニーのアル・レレン艦長が高官のことを「D」と呼んでいたんじゃよ。関係あるかと思ってな」
守里は不思議そうに答えた。
「諾の「D」もですが…日本にいた時「ダークのD」とも呼ばれていたので…それともう一つ「堕落のD」とも呼ばれていたんですよ。どうも友人を裏切ったらしくて…あ、詳しいことは知らないんですけどね…」
「堕落のDか…確かに簡単にアル・レレンも放置したからな。あり得るかもしれん」
父親の存在をあまり詳しく知らないまでも、子供の時にいじめの対象だったことは覚えている。
思い出は海に行ったことがあることだけだった。
「父親が関与していたとなれば、頭は切れるらしいので何でもできるかも知れません」
守里の言葉に麻生は黙って聞いていた。
「新たな機体を作るほどの余力はあるまい。残っている戦力を調べる必要はあるが、分かっているだけでジャイワナーゾが2体、ゲラザロナが3体…おそらくその他には未知の戦力があっても僅かな戦力に違いないな」
守里は恐る恐る言った。
「ゲラザロナを超える戦力を隠していたとも考えられますよ?」
その場に現れたベラーナもその最後の言葉だけ聞いて、足を止めるほどだった。
「マイールがいるとなれば戦艦が隠されているかも知れないな」
ベラーナの言葉に守里と麻生が顔を見合わせると、施設の視察が必要と言う話になった。
キッチンに戻って父親の話から細かくみんなに話すと、トキノが言った。
「私はAIでも人型だから侵入しても大丈夫だわ。私が行く。誰も来ないで」
力強い言葉にみんなが何か言いかけると、トキノは準備を始めていた。