6月15日(土) 子ども支援学研究会 が
「子どもの権利の視点から『いじめ』と『体罰』を考える~『いじめ防止法』制定等の動向を視野に入れて~」というテーマで、子どもオンブズパーソン研究会、子ども情報研究センター、子どもの権利条約総合研究所の共催で開催されました。
まずは、特別報告として、東日本大震災子ども支援ネットワーク事務局長 森田明美さんから、
子どもの権利条約に基づく子どもにやさしいまちづくりを ということで 子どもの暮らし復興への提言 について話されました。
大震災から2年が経ちましたが、まだまだ多くの困難に直面しています。
そこで、第1に、子どもの権利条約の視点 を始めとした10の提言を具体的に述べられました。
①子どもの権利条約の視点
②「今」を支援する視点
③インクルーシブな(包括的な)視点に基づいた施策の徹底
④権利侵害を許さない、子ども固有の相談・救済の仕組みづくり
⑤多様な分野の横断的なネットワークづくり
⑥行政と市民社会との協同の推進
⑦支援者の多様な支援
⑧つながりをつくるためのコーディネート役割の必要性
⑨支援の継続性:希望をつなぐ
⑩「子どもにやさしいまち」づくり
東日本大震災子どもネットワークは、最低5年間はかかるでしょうが…以上の「提言」の実現に向けて活動を続けることを明言されました。
本題については・・・
1番目に 住友 剛さん(京都精華大学)から、「いじめ」「体罰」の防止を考えるための「前置き」の話―この約30年間、私たちはいったい何を論じ、何に取り組んできたのか?ーを話されました。
結局、この30年間、政府(文科省)のいじめ対策の方針に共通して流れることは、①「家庭教育のあり方」の問題視 ②規範意識の強化 ③事実関係の解明に対する関心の薄さ ④学校が子どもにとって、居心地のいい場になっているのか、という問いかけの薄さ ⑤学校における子どもの人権の保障、子どもの救済という視点の弱さ など、何も変わらず、その検証もされていない。
ことを強調されました。
2番目に 荒牧 重人さん(山梨学院大学法科大学院)から、「いじめ対策推進法案」の問題点と課題 について話されました。
法律案は学校や家庭に対する不信感を前提して法律を通じた国家介入、厳罰化の方向であり、子ども・教職員・保護者等の信頼関係を損なう。
「いじめに特化」した法律では問題の解決にならない。
いじめについてのとらえ方が、いじめを受けた子どもといじめを行った子どもの単純な対立構造として、対応する ということが最大の欠陥。
いじめが、子どもの人格と権利を侵害する行為であるという認識がない。
子ども自身が問題を解決していく(エンパワメント)視点がない。
「通報義務」や「厳罰化」など、子どもに寄り添う視点がない。 等々 問題点を指摘されました。
3番目に 吉永 省三さん(千里金蘭大学)から、「いじめ」問題検討の論点提起~「いじめ防止法」の成立を視野に入れながら~ を話されました。
「いじめる―いじめられる」という子どもの関係性についての理解と認識の必要性。
関係の問題が行為の問題にすり替えられている。体罰も関係性(支配・服従の関係)の問題である。
子どもの最善の利益原則を具体的に確保する視点と方法の必要性。
学校の主体性は法案にはほとんど書かれていない⇒学校は変わらなくてよいのか。
教育活動の実践として、「いじめ」というものに対処する力をつけていくことが求められる。
「子どもにやさしいまち」を具体化する自治体の視点と施策の必要性。
「子どもにやさしいまち」をつくる仕掛けとして公的第三者機関を活用。
個別救済から制度改善を行い、「子どもにやさしいまち」の実現に子どもが参加できる仕組みを。
等、どう具体的に対応していくかを示されました。
「いじめ対策推進法案」
なんとなく、法律でいじめがなくなるわけでもないのに…とは思っていましたが、やはり法律には重みがあります。
子どもの関係性から生じる問題であるわけですから、この法律では真の解決にはなりません。
いじめる子どもを学校から排除することになり、厳罰化、周りは、通報義務まで課せられてしまう、誰が安心して相談できるでしょうか。
また、道徳教育の強化が強調され、規範意識の問題に特化されてしまいます。
当事者性もなく、「子どもの権利」という言葉がありません。
「いじめ」に特化したそんな法律、本当につくっていいのでしょうか。
子どもが権利の主体であり、その権利侵害がおこなわれている関係性の問題、という視点を持って、自ら解決していく力をつけていくことが大切である、と思うわけですが・・・
大体学校で子どもたちの関係は、「いじめ」だけの問題はあり得ないわけです。様々な関連性があり、それを解きほぐしていくことが大切なわけです。
法律が成立したとしても、現場では、子どもに寄り添い、子どもの側からの視点で組織をつくっていく、子どもが権利の主体であることを具現化していく必要性があると思います!
枚方市教育委員会では、枚方市生徒指導マニュアル(いじめ防止編・体罰防止編)を4月に制定しましたが、
「人権侵害」であること、人権を尊重し合う関係性をつくること が重要である ことが明示されています。
「権利の主体としてお互いを尊重する」その視点がなければ、絶対にダメだと思います。
子どもの権利侵害について真摯に向き合うことが、今、求められているのではないでしょうか。
「子どもにやさしいまち」づくり…議会での質問のコンセプトにして、一般質問に立ったのは、ずいぶん前ですね。
「子どもの権利条約」を基盤にした条例をつくり、それに則った公的第三者機関をつくること、をこれからも求めていくつもりです。