ハンチントン病とは、優勢遺伝する遺伝病として現在認識されている。この病は、起きている間に勝手に体中の筋肉が痙攣を起こして、症状は進行することがあっても回復することがないという進行性の病でありおおよそが40代で発症する。発症が遅いため、既に子供があり、子供にも発症リスクが伴う。このものがたりは、ハンチントン病を発症した母を持つ家族のハンチントン病との戦いを記した本である。父はハンチントン病の研究を進めるために、基礎研究に資金援助を行う機関を設立、次女はその先陣を切ってハンチントン病と戦う。そして長女である著者はこの戦いを本に残す。ハンチントン病という得体のしれなかった病を、様々な角度から分析し、あるベネズエラの大家族の家系の発見と、遺伝子工学の最先端の技術が、病気の原因が遺伝子にあることを証拠として突き止めることにつながった。さらにヒトゲノムが解読される遙か以前に無謀とも思われた、原因遺伝子の染色体上の位置を断定、さらに遺伝子の特定、解読に成功する。この成功とはまた別個に、遺伝子診断による、発症前診断による、発症の有無が個人そして家族に与える迷い、悩み、希望、絶望が本人の体験を通じて赤裸々に語られる。愛とは、家族とはなにかを考えさせられる本だ。最後にハンチントン病で現在苦しんでいる人々に勇気をそしてハンチントン病の治療方法の早期発見が実現するよう祈りたい。