福祉を犠牲にして得た代償がこれだ。
そのことに
気づかないと、
いつまでも不合理な労働環境から
脱せられないよ。
〔資料〕
「死ぬまで働く日本の若者 「karoshi(過労死)」の問題」
BBC/記者:エドウィン・レーンさん(2017年06月6日)
☆ 記事URL:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40169009
日本人の労働時間の長さは世界でもトップクラスだ。若者たちの中には、文字通り死ぬまで働く者もいる。そこで政府に対し、対策の強化を求める声が上がっている。
西垣迪世(みちよ)さんは、一人息子の和哉さんが新卒で日本の大手通信企業に就職したことを誇らしく思っていた。
和哉さんはコンピューターが大好きだった。競争の激しい日本の新卒採用市場で、素晴らしい就職先をつかんだように思われた。
だが調子がおかしくなり始めたのは、わずか2年後のことだった。
「息子は私には忙しいと言いながらも、大丈夫だと話していた」と迪世さんは振り返る。「でも私の父の葬儀があって帰省した時、起きられなかった。『ちょっと寝かしてくれ』と言い、時間になっても『無理だ。今日悪いけどオカン寝かしてくれ。明日はちゃんと行くから』と言いました」。
西垣さんは後になって息子の同僚たちから、和哉さんが当時、昼夜休みなく働いていたことを知らされた。
「いつも終電まで仕事をして、終電を逃すと会社の机に顔を突っ伏せて朝まで寝た。一番ひどい時には徹夜で翌日の夜10時まで、37時間連続勤務がありました」
それからさらに2年後、和哉さんは薬の飲み過ぎで亡くなった。27歳だった。日本で働きすぎによる死を意味する「karoshi」、過労死だと正式に認定された(訳注・英語の原文も「karoshi」と表記)。
日本には長時間労働の文化がある。これは1960年代から言われていたことで、新しい現象ではない。だが近年、人目を引くケースが相次いだことにより、過労死問題は再び注目されるようになった。
ひと月当たりの労働時間
2015年のクリスマス、広告会社の電通に勤めていた高橋まつりさん(当時24)が飛び降り自殺した。
亡くなる前には残業が月100時間を超え、ろくに眠っていなかったことが分かった。
若者から労働問題の電話相談を受け付けている非営利組織(NPO)、「POSSE(ポッセ)」の岩橋誠さんによれば、このような話は特に企業の新入社員にとって、珍しいことではない。POSSEに寄せられる電話の大半は長時間労働の悩みだという。
「やりきれないのは、若者たちがほかに選択肢はないと感じていること」だと、岩瀬さんは指摘する。「そのまま辞めなかったら100時間残業を強いられる。一方で辞めれば生活できなくなってしまう」。
近年は雇用の安定が崩れてきたため、状況は一段と厳しくなっていると岩橋さんは語る。
「過労死は1960年代、70年代にも起きていたが、大きな違いがある。当時は長時間労働を強いられても終身雇用が保証されていたが、今はそういうわけにいかない」
残業文化
公式なデータによると、年間の過労死は数百件とされる。なかには心臓発作、脳卒中、自殺が含まれる。しかし活動家らは、実際にはそれよりはるかに多いと主張する。
最近の調査は、日本では残業が月80時間を超える従業員のいる企業が全体の4分の1近くを占めると指摘する。残業代が支給されないことも多い。また12%の企業には、月100時間以上残業する従業員がいる。
これは重要な数字だ。月80時間の残業は、死亡率が上がる境目のラインとされているからだ。
日本政府に行動を求める圧力は強まっている。だが同僚や上司より先に帰ればいやな顔をされるという、数十年来の労働文化を打ち破るのは容易なことではない。
政府は今年、毎月最終金曜日には従業員を午後3時に帰すよう企業に促す「プレミアム・フライデー」を導入した。また労働者に向けて、もっと休暇を取るよう呼び掛けている。
法定の有給休暇は年に20日間だが、休暇をほとんど取らない労働者は現在、全体の約35%を占める。
一斉消灯
東京都の豊島区役所は今年1月から、職員が帰宅せざるを得ないように、午後7時に庁舎内を一斉消灯するという手段に打って出た。
担当する上野仁・政策経営部行政経営課長は、「目に見える形で全庁的な取り組み」を目指したと話す。
「超過勤務を減らすだけでなく、効率的な仕事を進めて仕事の生産性を上げて、それで自分自身の時間を確保して、その時間をそれぞれの自己実現のために楽しんで使ってもらいたい、トータルで働き方を変えていきたいという思いを込めて取り組んでいる」と課長は言う。
効率に着目したこの発言は、的を射ているかもしれない。日本は労働時間の長さは世界でトップクラスでも、労働生産性は主要先進7カ国中で最下位だ。
だがこうした対策は断片的で、問題の核心に取り組んでいないと、活動家たちは言う。若者たちは度を越した激務や長時間労働のせいで命を落としているのだと。
活動家たちによると、解決策はただひとつ。従業員が残業できる時間に法的上限を設けることだ。
政府は今年、残業時間を月平均60時間までに制限する法改正を提案した。ただし企業の「繁忙期」には月に100時間までの残業が認められる。これは過労死の警戒ラインを大きく超えることになる。
もっと対策が必要
政府が労働者の福祉を犠牲にして、企業と経済の利益を優先していると批判する声もある。
30年前から過労死問題を研究してきた関西大学の森岡孝二名誉教授は、「日本人は政府を頼りにしているが、裏切られている」と話す。
その間にも若い労働者の過労死は続き、遺族支援団体のメンバーが増え続ける。
息子を亡くした西垣迪世さんは、日本は大切にするべき労働者を逆に殺してしまっていると言う。
「目の前の利益、儲けることばっかりに近視眼的になってしまって、少し遠くを見通してこの国を造っていく、会社を運営していく、という自信がないんだ。怖いんだと思います」
「息子たちは仕事をすることを嫌っていません。良い仕事をしたいと思っています。そして能力も持っています」
「その子たちを、うつ病などの病気にしたり、過労死で亡くなってしまうまで使わないで、ちゃんと健康的に働かせていただいたら、会社もそしてこの日本の国も栄える。生産性も絶対に上がると思っています」
(英語記事 The young Japanese working themselves to death)
そのことに
気づかないと、
いつまでも不合理な労働環境から
脱せられないよ。
〔資料〕
「死ぬまで働く日本の若者 「karoshi(過労死)」の問題」
BBC/記者:エドウィン・レーンさん(2017年06月6日)
☆ 記事URL:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40169009
日本人の労働時間の長さは世界でもトップクラスだ。若者たちの中には、文字通り死ぬまで働く者もいる。そこで政府に対し、対策の強化を求める声が上がっている。
西垣迪世(みちよ)さんは、一人息子の和哉さんが新卒で日本の大手通信企業に就職したことを誇らしく思っていた。
和哉さんはコンピューターが大好きだった。競争の激しい日本の新卒採用市場で、素晴らしい就職先をつかんだように思われた。
だが調子がおかしくなり始めたのは、わずか2年後のことだった。
「息子は私には忙しいと言いながらも、大丈夫だと話していた」と迪世さんは振り返る。「でも私の父の葬儀があって帰省した時、起きられなかった。『ちょっと寝かしてくれ』と言い、時間になっても『無理だ。今日悪いけどオカン寝かしてくれ。明日はちゃんと行くから』と言いました」。
西垣さんは後になって息子の同僚たちから、和哉さんが当時、昼夜休みなく働いていたことを知らされた。
「いつも終電まで仕事をして、終電を逃すと会社の机に顔を突っ伏せて朝まで寝た。一番ひどい時には徹夜で翌日の夜10時まで、37時間連続勤務がありました」
それからさらに2年後、和哉さんは薬の飲み過ぎで亡くなった。27歳だった。日本で働きすぎによる死を意味する「karoshi」、過労死だと正式に認定された(訳注・英語の原文も「karoshi」と表記)。
日本には長時間労働の文化がある。これは1960年代から言われていたことで、新しい現象ではない。だが近年、人目を引くケースが相次いだことにより、過労死問題は再び注目されるようになった。
ひと月当たりの労働時間
2015年のクリスマス、広告会社の電通に勤めていた高橋まつりさん(当時24)が飛び降り自殺した。
亡くなる前には残業が月100時間を超え、ろくに眠っていなかったことが分かった。
若者から労働問題の電話相談を受け付けている非営利組織(NPO)、「POSSE(ポッセ)」の岩橋誠さんによれば、このような話は特に企業の新入社員にとって、珍しいことではない。POSSEに寄せられる電話の大半は長時間労働の悩みだという。
「やりきれないのは、若者たちがほかに選択肢はないと感じていること」だと、岩瀬さんは指摘する。「そのまま辞めなかったら100時間残業を強いられる。一方で辞めれば生活できなくなってしまう」。
近年は雇用の安定が崩れてきたため、状況は一段と厳しくなっていると岩橋さんは語る。
「過労死は1960年代、70年代にも起きていたが、大きな違いがある。当時は長時間労働を強いられても終身雇用が保証されていたが、今はそういうわけにいかない」
残業文化
公式なデータによると、年間の過労死は数百件とされる。なかには心臓発作、脳卒中、自殺が含まれる。しかし活動家らは、実際にはそれよりはるかに多いと主張する。
最近の調査は、日本では残業が月80時間を超える従業員のいる企業が全体の4分の1近くを占めると指摘する。残業代が支給されないことも多い。また12%の企業には、月100時間以上残業する従業員がいる。
これは重要な数字だ。月80時間の残業は、死亡率が上がる境目のラインとされているからだ。
日本政府に行動を求める圧力は強まっている。だが同僚や上司より先に帰ればいやな顔をされるという、数十年来の労働文化を打ち破るのは容易なことではない。
政府は今年、毎月最終金曜日には従業員を午後3時に帰すよう企業に促す「プレミアム・フライデー」を導入した。また労働者に向けて、もっと休暇を取るよう呼び掛けている。
法定の有給休暇は年に20日間だが、休暇をほとんど取らない労働者は現在、全体の約35%を占める。
一斉消灯
東京都の豊島区役所は今年1月から、職員が帰宅せざるを得ないように、午後7時に庁舎内を一斉消灯するという手段に打って出た。
担当する上野仁・政策経営部行政経営課長は、「目に見える形で全庁的な取り組み」を目指したと話す。
「超過勤務を減らすだけでなく、効率的な仕事を進めて仕事の生産性を上げて、それで自分自身の時間を確保して、その時間をそれぞれの自己実現のために楽しんで使ってもらいたい、トータルで働き方を変えていきたいという思いを込めて取り組んでいる」と課長は言う。
効率に着目したこの発言は、的を射ているかもしれない。日本は労働時間の長さは世界でトップクラスでも、労働生産性は主要先進7カ国中で最下位だ。
だがこうした対策は断片的で、問題の核心に取り組んでいないと、活動家たちは言う。若者たちは度を越した激務や長時間労働のせいで命を落としているのだと。
活動家たちによると、解決策はただひとつ。従業員が残業できる時間に法的上限を設けることだ。
政府は今年、残業時間を月平均60時間までに制限する法改正を提案した。ただし企業の「繁忙期」には月に100時間までの残業が認められる。これは過労死の警戒ラインを大きく超えることになる。
もっと対策が必要
政府が労働者の福祉を犠牲にして、企業と経済の利益を優先していると批判する声もある。
30年前から過労死問題を研究してきた関西大学の森岡孝二名誉教授は、「日本人は政府を頼りにしているが、裏切られている」と話す。
その間にも若い労働者の過労死は続き、遺族支援団体のメンバーが増え続ける。
息子を亡くした西垣迪世さんは、日本は大切にするべき労働者を逆に殺してしまっていると言う。
「目の前の利益、儲けることばっかりに近視眼的になってしまって、少し遠くを見通してこの国を造っていく、会社を運営していく、という自信がないんだ。怖いんだと思います」
「息子たちは仕事をすることを嫌っていません。良い仕事をしたいと思っています。そして能力も持っています」
「その子たちを、うつ病などの病気にしたり、過労死で亡くなってしまうまで使わないで、ちゃんと健康的に働かせていただいたら、会社もそしてこの日本の国も栄える。生産性も絶対に上がると思っています」
(英語記事 The young Japanese working themselves to death)
拙稿「パリサイ人がキリストに対してなした問いかけ。税金の支払い義務をどう思うか」のコメント欄で触れておきました。
*http://blog.goo.ne.jp/nrn54484/e/d2cc450ceb5e9217cd5937d5479b1c3e?st=0#comment-form
佐藤さんはさすが鋭い分析をされる方ではありますが、こちら側の人間ではないような気が致します。。
また、忠太さんもなかぬか鋭い分析をされる方だと思います。
もっとメジャーになられてもいい方のような気が致しますね・・・。。。
でも、何と言うか、そう言って頂いただけで十分に嬉しいです。その気持ち、大切にしたいからメジャーデビューなんかできなくていいです。
とはいえ、Twitterも含めて、そこそこは有名な方のような気もしなくはないですが・・・笑。
その内、警察に捕まるだろうという意味で(笑)。
ただ、そうなったとき、猫ちゃんたち、どうやって守ってやればいいのかなと、本当、頭痛めています――。
そうはさせません!
・・・猫ちゃんは・・・たくましく生き抜くでしょう・・・おそらく。。。