佐藤治彦
@SatoHaruhiko さんのツイートです。
――しりあがり寿さんの傑作漫画。安倍首相の「この道しかないんです!」に対して、道なんてあとからできる! 怖いのは、「景気回復 この道しかない!」としか言ってませんが、「経済以外も この道しかない!」と思ってることが見え見えだ からです。 〔15:40 - 2014年12月12日 〕――
この道しかないと言いながら、その道は歩まない(正確には、歩めない)だろうな
と思うのは、
現在の自民党の選挙活動のやり方に見て取れる。
たとえば、
「この道」に自信があれば、
梁田貴之@YANADATakayuki さんがツイートするような
――公開討論をキャンセルする、ひきょうな自民党〔17:15 - 2014年12月12日 〕――
と批難されるような事態は、
生じないだろう。
然るに、
自民党は逃げっ放しだ。
自信のなさは、
自民党に批判的な野党がアベノミクスという言葉を合計で290回つぶやいているのに対し、
自民党候補は、
41回しかツイートしていないという現象にも現われている
(毎日新聞の調査、下記〔資料〕参照)。
12月13日付(12日発行)日刊ゲンダイ記事
「安倍選挙演説のペテン詐欺大ウソ」に
経済評論家・斉藤満氏の
次のような言葉が紹介されてあったが、
痛烈だ。
曰く、『この道しかない』と訴える安倍首相は『アベノミクスはいまだ途上』と言ってますが、景気回復の『途上』なのではありません。そもそも『道』を誤っているのです。ゴールに達することはありません云々。
だが、結局、
道を誤った責任の帳尻合わせは、
軍国化から戦争という流れでなされるのだろう。
だからこそ
安倍政権に勝利を握らせてはならない。
〔資料〕
「ネット選挙 ツイッター分析―毎日新聞・立命館大共同研究」
毎日新聞(2013年07月31日)
☆ 記事URL:http://senkyo.mainichi.jp/2013san/analyze/20130731.html
参院選からネット選挙が解禁されるのに当たり、毎日新聞は立命館大の西田亮介・特別招聘准教授(社会学、ツイッターアカウント:@Ryosuke_Nishida)との共同研究プロジェクトをスタートさせました。政党・政治家や有権者のつぶやきを分析するとともに、従来型の世論調査も駆使し、「ネット選挙解禁で日本の政治は変わるのか」を探ります。
参院選期間中のツイッター分析
ネット選挙が解禁された参院選で毎日新聞は立命館大と共同研究に取り組んだ。「自民党1強」の選挙戦にネット選挙が与えた影響は極めて限定的だったが、政治家と有権者の双方向対話が始まる兆しは確認できた。今後、各党・政治家が有権者との対話で日常的にネット活用を競い、政治と国民の距離が近づけばー。そんな期待を込めて共同研究の結果を報告する。
双方向対話すれ違い
ネット選挙の解禁によって何が変わるのか。従来の選挙運動は、政党・候補者側が街頭演説や討論会、新聞・テレビなどのマスメディアを通じて一方的に発信するばかりで、有権者側が政党・候補者側に意見を伝える機会は乏しかった。ネットの特性は、政党・候補者側だけでなく一般の有権者側も発信できる「双方向性」。共同研究では双方向の対話が深まるかに着目した。
結論から言えば、今回は双方の発信にすれ違いが目立ったほか、ネット空間の政策的な関心と「リアルな(現実社会の)世論」のズレも鮮明となり、今回の参院選で、選挙結果や日本の政治そのものに与える大きな影響は見いだせなかった。
分析結果を説明しよう。参院選の選挙期間(公示された7月4日から投票前日の20日までの17日間)にツイッターで全候補者が投稿(ツイート)した件数を集計(100未満切り捨て)。最も多く含まれていた単語は「演説」で1万件に達し、「選挙」9000件、「駅」6700件、「街頭」6200件と続いた。ツイートの多くを街頭演説の告知が占めたことが分かる。
一方、ツイッター利用者全体の話題は「原発」が117万8400件で突出し、続く「憲法・改憲」が56万3700件。候補者側も野党の一部が積極的に脱原発や憲法問題を訴えたが、「原発」は3200件、「憲法」も1400件にとどまった。候補者とネット利用者の政策対話は深まっていない。
党勢映す拡散力の差
ネットと選挙情勢が無関係だったわけではない。期間中、ツイッター利用者がつぶやいた政党名の件数をみると、最も多かったのが自民党の38万2300件。共産党が34万200件、民主党が31万4100件で続き、日単位のツイート件数でもこの3党が競り合う展開となった。
ネット利用者の関心を集めたという意味では3党がほぼ横並びで、自民圧勝の選挙情勢にそぐわない。だが、各党候補者のツイート数と、それがリツイート(RT=引用・転送)された件数をみると、3党の党勢の違いがくっきりと表れた。
選挙期間中、各党候補者がツイートした件数を政党別に集計すると、共産党(ツイッター利用者57人)が1万100件で群を抜いてトップ。続いて日本維新の会(37人)6600件、民主党(35人)5600件、みんなの党(30人)4700件、自民党(37人)3800件だった。スマートフォン向け無料通話アプリ「LINE(ライン)」を重視した公明党(11人)は1800件にとどまった。
これらのオリジナルツイートがツイッター利用者によってRTされた件数をみると、やはり共産党が23万2200件でトップだが、2位には自民党が7万1100件で入った。多くの利用者に関心や共感を持たれたツイートがRTによって拡散するのがツイッターの特徴。ツイッターを組織的に積極活用した共産党とともに、候補者の約半数しかツイッターを利用していない自民党もオリジナルツイートがRTにより20倍前後に拡散していた。
これに対し、民主党候補者のRT数は1万5800件。自民党より積極的に発信したにもかかわらず、RT数はオリジナルの3倍程度にとどまった。ツイッター利用者は民主党候補者のつぶやきに対してはあまり関心を示さず、一方で民主党に関するツイッター利用者全体のつぶやきを分析すると、批判的な内容が大半を占めた。
共同研究では、オリジナルツイートの件数を「発信力」、RT数を「拡散力」と位置づけた。ネット発信で無理をしなくても拡散力の高かった自民党が圧勝▽ネットの有効活用で自民批判票の受け皿になった共産党が躍進▽「政権失敗」批判を前にネット発信が空振りに終わった民主党−−という構図がデータに表れたと言える。
「リアル世論」とズレ
ネット利用者は選挙情勢に敏感に反応しているのに、なぜ候補者との対話がかみ合わないのか。その背景に「リアルな世論」とのズレが潜んでいた。全国約3万人の有権者を対象とした電話による特別世論調査(7月4、5日)で重視する争点を聞くと「景気対策」と「年金・医療・介護・子育て」が28%で並び、「原発・エネルギー政策」の8%、「憲法改正」の5%を大きく上回った。
では、なぜネット上の関心と世論のズレが生じるのか。その理由にもツイッターのRT機能が関係していた。
「原発」や「憲法・改憲」といった賛否の分かれるテーマは、関心を持つ特定の利用者間でツイートとRTが繰り返されやすい。ツイッター利用者全体の「原発」ツイート数のうち、RTを除いたオリジナルツイートの割合は30%、「憲法・改憲」では41%だった。RTによってオリジナルの2.5〜3倍に膨らんだことになる。
双方向のネット上だからこそ、議論が活発化しやすい。そこに政治家が参加することで、有権者との政策対話につながる可能性もある。例えば、具体的で実現可能な年金制度や子育て支援策を提示できれば、選挙での争点化を期待する層が声を上げるだろう。
参院選で野党はアベノミクスの副作用を批判したが、説得力のある対案を示せなかった結果、景気対策を重視する層を取り込めなかった。一方で共産党は政策面の主張拡散にネットを有効活用し、その効果が候補者の得票にも表れたと言えそうだ。仮に与野党の勢力が拮抗(きっこう)していて、野党側が脱原発の争点化に成功していたら、ネット上の対話につながったかもしれない。
ネット選挙解禁を機に政治家のネット発信が当たり前の時代に突入する。我々マスメディアも含め、有権者(読者・視聴者)を双方向の対話に引き込めるコンテンツ(情報内容)を提供できるかが問われている。
つぶやき数、選挙後激減
参院選当選者によるネット上の書き込みは選挙戦終了後、急減した。当選者121人のうちツイッターを利用している79人について投開票された21日から25日まで5日間の1日当たりの平均ツイート数を集計したところ、選挙期間中の1人5.1件から4分の1の1.3件まで減少。過半数の41人が選挙後5件以下しかつぶやかず、うち22人が自民党、9人が民主党だった。ゼロ件が10人いた。
選挙後5日間のつぶやき数が最も多かったのは共産党の吉良佳子氏(東京選挙区)で140件。続いて同党の小池晃氏(比例代表)、無所属の山本太郎氏(東京)が40件を超えた。継続して活用することでフォロワー(閲覧者)を増やすのが効果的な発信・拡散への道とされるが、6年間の任期が保証される参院議員の緩みが出たと言えそうだ。
公選法の理念見直しを —— 西田亮介・立命館大特別招聘准教授(30)
今回の共同研究ではツイッターと世論のズレを可視化したうえで、ネット選挙が中長期的に「政治の透明化」に大きな影響を与える可能性を指摘できた。
ツイッター内の意見分布と電話世論調査を比較してみたが、世論調査で上位にある景気対策や社会保障系の争点がツイッターではさほど話題にならず、「原発」や「憲法・改憲」に話題が集中していた。これはツイッターでの議論が「意味がない」ということではない。世論調査における「世論」はその時点の意思の集積であり、ネットでの議論は集積に至っていない途中経過だ。争点に関するコミュニケーションの可視化としてネットが機能していると捉え直すことが重要だろう。
今回の結果をみる限り、ネットが今後、選挙に大きな影響を与えるかは未知数だ。候補者をネット上で支援する動きも一部には見られたが、米大統領選のように有権者同士で投票や運動を促す動きは少なかった。
政治家もネットの議論をどう現実の政治に落とすかというプランに乏しい。世論調査に表れたように、30代以降の世代にはネットが政治を議論する場、情報を得る場として認識されていないという問題が背景にあるだろう。
しかし、ネット上のコミュニケーションに政治家が参加する意義は大きい。今後、政治家によるネット利用が日常化していけば、政治家の発信がネット上で可視化される。それを従来メディアが報道することで、過去の発言との整合性を検証し、より有意義な発信を促すこともできる。
「政治の透明化」につながるネットの技術的特性を生かすためにも、戸別訪問の禁止などによって政治と有権者を遠ざけてきた公職選挙法を理念から見直し、日本の政治文化を再点検することが求められる。(談)
共同研究の分析方法
共同研究では、短文投稿サイト「ツイッター」の投稿(ツイート)を収集・分析。政治取材の内容や、電話による全国世論調査の結果などと比較し、ネット選挙が日本の政治に与える影響を探った。
ツイッターは、インターネット上で利用者同士が文章や画像を投稿して共有する「ソーシャルメディア」の一つ。140字以内の短文でやりとりする。匿名で利用できるうえに、他者のツイートを簡単にリツイート(引用・転送)できる機能もあり、情報が急速に拡散する特徴がある。
共同研究では、各党候補者のツイートを集め、つぶやかれた件数の多い単語を抽出する「テキストマイニング」と呼ばれる解析手法で集計した。その一方で、ツイッター利用者全体のツイートも「NTTコム オンライン」社の分析ツール「バズファインダー」で収集。選挙の争点になりそうな政策や政党名など関連語を抽出・集計した。各党候補者がネット上で発信する単語の収集では、政治情報サイト「ソーシャルタイムス」からもデータの提供を受けた。
立命館大とのネット選挙共同研究は政治部の平田崇浩、影山哲也、大阪社会部の石戸諭、世論調査室の大隈慎吾、RT編集部の佐藤岳幸、デジタルメディア局の楢本隆治、平野啓輔が担当しました。
毎日新聞 2013年07月31日 東京朝刊
@SatoHaruhiko さんのツイートです。
――しりあがり寿さんの傑作漫画。安倍首相の「この道しかないんです!」に対して、道なんてあとからできる! 怖いのは、「景気回復 この道しかない!」としか言ってませんが、「経済以外も この道しかない!」と思ってることが見え見えだ からです。 〔15:40 - 2014年12月12日 〕――
この道しかないと言いながら、その道は歩まない(正確には、歩めない)だろうな
と思うのは、
現在の自民党の選挙活動のやり方に見て取れる。
たとえば、
「この道」に自信があれば、
梁田貴之@YANADATakayuki さんがツイートするような
――公開討論をキャンセルする、ひきょうな自民党〔17:15 - 2014年12月12日 〕――
と批難されるような事態は、
生じないだろう。
然るに、
自民党は逃げっ放しだ。
自信のなさは、
自民党に批判的な野党がアベノミクスという言葉を合計で290回つぶやいているのに対し、
自民党候補は、
41回しかツイートしていないという現象にも現われている
(毎日新聞の調査、下記〔資料〕参照)。
12月13日付(12日発行)日刊ゲンダイ記事
「安倍選挙演説のペテン詐欺大ウソ」に
経済評論家・斉藤満氏の
次のような言葉が紹介されてあったが、
痛烈だ。
曰く、『この道しかない』と訴える安倍首相は『アベノミクスはいまだ途上』と言ってますが、景気回復の『途上』なのではありません。そもそも『道』を誤っているのです。ゴールに達することはありません云々。
だが、結局、
道を誤った責任の帳尻合わせは、
軍国化から戦争という流れでなされるのだろう。
だからこそ
安倍政権に勝利を握らせてはならない。
〔資料〕
「ネット選挙 ツイッター分析―毎日新聞・立命館大共同研究」
毎日新聞(2013年07月31日)
☆ 記事URL:http://senkyo.mainichi.jp/2013san/analyze/20130731.html
参院選からネット選挙が解禁されるのに当たり、毎日新聞は立命館大の西田亮介・特別招聘准教授(社会学、ツイッターアカウント:@Ryosuke_Nishida)との共同研究プロジェクトをスタートさせました。政党・政治家や有権者のつぶやきを分析するとともに、従来型の世論調査も駆使し、「ネット選挙解禁で日本の政治は変わるのか」を探ります。
参院選期間中のツイッター分析
ネット選挙が解禁された参院選で毎日新聞は立命館大と共同研究に取り組んだ。「自民党1強」の選挙戦にネット選挙が与えた影響は極めて限定的だったが、政治家と有権者の双方向対話が始まる兆しは確認できた。今後、各党・政治家が有権者との対話で日常的にネット活用を競い、政治と国民の距離が近づけばー。そんな期待を込めて共同研究の結果を報告する。
双方向対話すれ違い
ネット選挙の解禁によって何が変わるのか。従来の選挙運動は、政党・候補者側が街頭演説や討論会、新聞・テレビなどのマスメディアを通じて一方的に発信するばかりで、有権者側が政党・候補者側に意見を伝える機会は乏しかった。ネットの特性は、政党・候補者側だけでなく一般の有権者側も発信できる「双方向性」。共同研究では双方向の対話が深まるかに着目した。
結論から言えば、今回は双方の発信にすれ違いが目立ったほか、ネット空間の政策的な関心と「リアルな(現実社会の)世論」のズレも鮮明となり、今回の参院選で、選挙結果や日本の政治そのものに与える大きな影響は見いだせなかった。
分析結果を説明しよう。参院選の選挙期間(公示された7月4日から投票前日の20日までの17日間)にツイッターで全候補者が投稿(ツイート)した件数を集計(100未満切り捨て)。最も多く含まれていた単語は「演説」で1万件に達し、「選挙」9000件、「駅」6700件、「街頭」6200件と続いた。ツイートの多くを街頭演説の告知が占めたことが分かる。
一方、ツイッター利用者全体の話題は「原発」が117万8400件で突出し、続く「憲法・改憲」が56万3700件。候補者側も野党の一部が積極的に脱原発や憲法問題を訴えたが、「原発」は3200件、「憲法」も1400件にとどまった。候補者とネット利用者の政策対話は深まっていない。
党勢映す拡散力の差
ネットと選挙情勢が無関係だったわけではない。期間中、ツイッター利用者がつぶやいた政党名の件数をみると、最も多かったのが自民党の38万2300件。共産党が34万200件、民主党が31万4100件で続き、日単位のツイート件数でもこの3党が競り合う展開となった。
ネット利用者の関心を集めたという意味では3党がほぼ横並びで、自民圧勝の選挙情勢にそぐわない。だが、各党候補者のツイート数と、それがリツイート(RT=引用・転送)された件数をみると、3党の党勢の違いがくっきりと表れた。
選挙期間中、各党候補者がツイートした件数を政党別に集計すると、共産党(ツイッター利用者57人)が1万100件で群を抜いてトップ。続いて日本維新の会(37人)6600件、民主党(35人)5600件、みんなの党(30人)4700件、自民党(37人)3800件だった。スマートフォン向け無料通話アプリ「LINE(ライン)」を重視した公明党(11人)は1800件にとどまった。
これらのオリジナルツイートがツイッター利用者によってRTされた件数をみると、やはり共産党が23万2200件でトップだが、2位には自民党が7万1100件で入った。多くの利用者に関心や共感を持たれたツイートがRTによって拡散するのがツイッターの特徴。ツイッターを組織的に積極活用した共産党とともに、候補者の約半数しかツイッターを利用していない自民党もオリジナルツイートがRTにより20倍前後に拡散していた。
これに対し、民主党候補者のRT数は1万5800件。自民党より積極的に発信したにもかかわらず、RT数はオリジナルの3倍程度にとどまった。ツイッター利用者は民主党候補者のつぶやきに対してはあまり関心を示さず、一方で民主党に関するツイッター利用者全体のつぶやきを分析すると、批判的な内容が大半を占めた。
共同研究では、オリジナルツイートの件数を「発信力」、RT数を「拡散力」と位置づけた。ネット発信で無理をしなくても拡散力の高かった自民党が圧勝▽ネットの有効活用で自民批判票の受け皿になった共産党が躍進▽「政権失敗」批判を前にネット発信が空振りに終わった民主党−−という構図がデータに表れたと言える。
「リアル世論」とズレ
ネット利用者は選挙情勢に敏感に反応しているのに、なぜ候補者との対話がかみ合わないのか。その背景に「リアルな世論」とのズレが潜んでいた。全国約3万人の有権者を対象とした電話による特別世論調査(7月4、5日)で重視する争点を聞くと「景気対策」と「年金・医療・介護・子育て」が28%で並び、「原発・エネルギー政策」の8%、「憲法改正」の5%を大きく上回った。
では、なぜネット上の関心と世論のズレが生じるのか。その理由にもツイッターのRT機能が関係していた。
「原発」や「憲法・改憲」といった賛否の分かれるテーマは、関心を持つ特定の利用者間でツイートとRTが繰り返されやすい。ツイッター利用者全体の「原発」ツイート数のうち、RTを除いたオリジナルツイートの割合は30%、「憲法・改憲」では41%だった。RTによってオリジナルの2.5〜3倍に膨らんだことになる。
双方向のネット上だからこそ、議論が活発化しやすい。そこに政治家が参加することで、有権者との政策対話につながる可能性もある。例えば、具体的で実現可能な年金制度や子育て支援策を提示できれば、選挙での争点化を期待する層が声を上げるだろう。
参院選で野党はアベノミクスの副作用を批判したが、説得力のある対案を示せなかった結果、景気対策を重視する層を取り込めなかった。一方で共産党は政策面の主張拡散にネットを有効活用し、その効果が候補者の得票にも表れたと言えそうだ。仮に与野党の勢力が拮抗(きっこう)していて、野党側が脱原発の争点化に成功していたら、ネット上の対話につながったかもしれない。
ネット選挙解禁を機に政治家のネット発信が当たり前の時代に突入する。我々マスメディアも含め、有権者(読者・視聴者)を双方向の対話に引き込めるコンテンツ(情報内容)を提供できるかが問われている。
つぶやき数、選挙後激減
参院選当選者によるネット上の書き込みは選挙戦終了後、急減した。当選者121人のうちツイッターを利用している79人について投開票された21日から25日まで5日間の1日当たりの平均ツイート数を集計したところ、選挙期間中の1人5.1件から4分の1の1.3件まで減少。過半数の41人が選挙後5件以下しかつぶやかず、うち22人が自民党、9人が民主党だった。ゼロ件が10人いた。
選挙後5日間のつぶやき数が最も多かったのは共産党の吉良佳子氏(東京選挙区)で140件。続いて同党の小池晃氏(比例代表)、無所属の山本太郎氏(東京)が40件を超えた。継続して活用することでフォロワー(閲覧者)を増やすのが効果的な発信・拡散への道とされるが、6年間の任期が保証される参院議員の緩みが出たと言えそうだ。
公選法の理念見直しを —— 西田亮介・立命館大特別招聘准教授(30)
今回の共同研究ではツイッターと世論のズレを可視化したうえで、ネット選挙が中長期的に「政治の透明化」に大きな影響を与える可能性を指摘できた。
ツイッター内の意見分布と電話世論調査を比較してみたが、世論調査で上位にある景気対策や社会保障系の争点がツイッターではさほど話題にならず、「原発」や「憲法・改憲」に話題が集中していた。これはツイッターでの議論が「意味がない」ということではない。世論調査における「世論」はその時点の意思の集積であり、ネットでの議論は集積に至っていない途中経過だ。争点に関するコミュニケーションの可視化としてネットが機能していると捉え直すことが重要だろう。
今回の結果をみる限り、ネットが今後、選挙に大きな影響を与えるかは未知数だ。候補者をネット上で支援する動きも一部には見られたが、米大統領選のように有権者同士で投票や運動を促す動きは少なかった。
政治家もネットの議論をどう現実の政治に落とすかというプランに乏しい。世論調査に表れたように、30代以降の世代にはネットが政治を議論する場、情報を得る場として認識されていないという問題が背景にあるだろう。
しかし、ネット上のコミュニケーションに政治家が参加する意義は大きい。今後、政治家によるネット利用が日常化していけば、政治家の発信がネット上で可視化される。それを従来メディアが報道することで、過去の発言との整合性を検証し、より有意義な発信を促すこともできる。
「政治の透明化」につながるネットの技術的特性を生かすためにも、戸別訪問の禁止などによって政治と有権者を遠ざけてきた公職選挙法を理念から見直し、日本の政治文化を再点検することが求められる。(談)
共同研究の分析方法
共同研究では、短文投稿サイト「ツイッター」の投稿(ツイート)を収集・分析。政治取材の内容や、電話による全国世論調査の結果などと比較し、ネット選挙が日本の政治に与える影響を探った。
ツイッターは、インターネット上で利用者同士が文章や画像を投稿して共有する「ソーシャルメディア」の一つ。140字以内の短文でやりとりする。匿名で利用できるうえに、他者のツイートを簡単にリツイート(引用・転送)できる機能もあり、情報が急速に拡散する特徴がある。
共同研究では、各党候補者のツイートを集め、つぶやかれた件数の多い単語を抽出する「テキストマイニング」と呼ばれる解析手法で集計した。その一方で、ツイッター利用者全体のツイートも「NTTコム オンライン」社の分析ツール「バズファインダー」で収集。選挙の争点になりそうな政策や政党名など関連語を抽出・集計した。各党候補者がネット上で発信する単語の収集では、政治情報サイト「ソーシャルタイムス」からもデータの提供を受けた。
立命館大とのネット選挙共同研究は政治部の平田崇浩、影山哲也、大阪社会部の石戸諭、世論調査室の大隈慎吾、RT編集部の佐藤岳幸、デジタルメディア局の楢本隆治、平野啓輔が担当しました。
毎日新聞 2013年07月31日 東京朝刊
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