のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

きけわだつみのこえ(第二集) / 板尾興市さん

2014年02月13日 14時05分26秒 | きけわだつみのこえ(2)
板尾さんの略歴。

1923年10月2日生。東京都出身。

1943年10月、東京商科大学商学部進学。

1943年12月10日、横須賀の武山海兵団に入団

1945年2月18日、本州東方海上にて戦死。海軍中尉。21歳

<父への手紙>

法文科の学生はこの戦争時にあたり、自然科学方面の学生とは異なり用はないから戦線に送られるわけですが、我々の征く後、国家の運営はなお頭の切り替えの絶対望まれぬ老朽政治家や、社会科学方面の知識に乏しくかつ学問精神の点で貧弱なる技術者たちに任されるわけです。それゆえ、国家の前途すこぶる多難なるは予測されます。東条首相は問題は機構より人だ、良き立派な指導者こそ必要なのだと叫びます。彼の言わんとする方向は正しいのです。何となれば人間こそ動く主体であり、動かす主体であるからです。しかし、彼が現実についてこの言を適用せんとすることは根本的に間違いです。

――***――***――

この文章を読んで、

まず驚かされたのは、

東条首相に対する批判が記されていることです。

検閲されているはずですけど、

学徒兵の書くこととて許されたのですね。

さて、僕が

この方の手紙の一節を引用するにあたって、

「東条首相に対する批判」を書いた

学徒兵の

勇気に触れたかったからではありません。

ここには、

戦後形成された、

学問分野に関する偏見について、

重要な証言がなされているからです。

「法文科の学生はこの戦争時にあたり、

自然科学方面の学生とは異なり用はないから戦線に送られるわけです」

という個所に注意して下さい。

戦時、不用だから、

文科系の学生が戦地に送られました。

そこを不当に

拡大解釈されている方が

いらっしゃいます。

原発事故が起きたとき、

ツイッター上で文科系の知識人が

とやかく言うな、

という批判を幾度となく見ました。

その方には、

「理科系=優秀」

「文科系=劣等」

という分類が成り立っているようでした。

こんな偏見が

なぜ出来上がったのかと言うと、

戦争で

優秀な文科系の人間が戦死してしまったことが

原因と思えます。

それを言いたかったことが一つと、

「人より機構(システム)」

だという視点が提示されていることです。

人に任せる、信じるというのは、

仲間内の信頼関係として

重宝します。

しかし、考えようによっては、

これほどのブラック・ボックスって

ないでしょ?

戦後の官僚独裁と言うほどの

腐敗は、

この人への信頼において

形成されたのだと思うと感無量です。

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