のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

「日産」の大幅赤字は、金融危機にだけ原因するのか

2009年02月10日 14時20分47秒 | Weblog
昨夜、日産が2万人もの従業員を削減するとの発表がありました。

理由は、‘09年3月期の連結決算が大幅赤字に陥るためということでした。

日産の業績は、急激に悪化したのでしょうか。

ゴーンという救世主がいたはずです。かつての彼の経営方針の華々しさは、

どこへ行ったのでしょう。

“コミットメント(公約)”という言葉、一世を風靡しましたね。

しかし、このコミットメントの旗は、‘08年に降ろされています。

5月15日朝日新聞に取材された際、

この点をつかれ、ゴーン氏は、次のように応えたそうです。

「社員を怖がらせ、不安にさせていると思うようになった」と。

(・・・これぞブラックユーモア!)

コミットメントの意味は、<目標の達成を責任を負って約束すること>でした。

目標は、数字で示され、予期せぬ状況変化がない限り、

達成しなければならなかったわけです。

公約違反で、責任を負ったことがないのは、ゴーン氏ただ一人です。

ジャーナリストの大山功男氏によると、

「昔は、家族揃って、東京・代官山で味噌ラーメンを食べて、親日家ぶりを

アピールした。しかし、今や家族は引き上げている。彼が日本にいるのは、

多くて1年の4分の1でしょう」とのこと。

日本熱は去ったようです。

“コミットメント”の名の下に断罪されるつもりはない、ということでしょうか。

しかし、そもそも彼は何を狙っていたのか――。

それを分析するには、日産がどう変わったのかを分析すればいいようです。


第1に、英語が公用語になりました。その結果、TOEICの成績が重視され、

700点以上なければ、昇格が難しくなりました。


第2に、中間管理職を排除しました(若手の大量抜擢)。


第3には、1チーム10人ほどで11チームの検討会を作り、彼自らが統括責任者

となり、チームリーダーを選びました。

元幹部によると、検討会は、さながらゴーンの独演会の様相を呈し、

彼を神と仰ぐ社員のみそぎの儀式の場だったようです。


第4に、後継者に目すべき日本人候補は、ことごとく潰されたと言います。

一例をあげると、松村規雄氏。

この人がどんな苦汁をなめさせられたかを、

「月刊・現代」に寄稿している記者、有森氏の報告に従って、説明します。

ゴーンに欧州日産社長の実績を評価された松村氏は、

まずは、副社長に一気に昇格。

この後、がたがたの北米市場の開拓に回されました。しかし、北米でもやはり成功

した彼を見て、ゴーンは、今度は、自分ががどんなに頑張っても

どうにも立て直せなかった、

って言うか、彼が頑張ったために潰れてしまった日本事業の担当に指名しました。

ゴーン自らは、北米事業担当の後釜に座りました。

そして、わずか1年後の‘05年、松村氏に日本事業の不振の責任をとらせ、

島流し同様の処分(日産プリンス大阪販売所への移籍)に付したそうです。

また一例。志賀俊之氏です。

この人も、まずは取り立てられます。

21人いた常務執行委員の末席にいた彼をナンバー2のCOOに昇格させ

国内市場と中国やインドなど一般海外市場(GOM)を兼務させます。

成功と見るや、志賀氏を一般海外市場の担当者から外し、

またもや日本市場を押しつけます。

日本市場は、ゴーンの手によって、すでに潰されていたのでした。

GOMの後任には、ルノーからの派遣社員、コリン・ドッジに就任させました。

ゴーン自身は、難しくなった北米を西川廣人という日本人に任せ、

離れた(逃げた?)そうです。

ところで、どのようにしてゴーンは日本市場を潰したか。

それは、次に述べる彼の足跡によって分かります。すなわち、


第5に、日産的なものは無価値・無意味なものとして切り捨てました。

セドリックやグロリア、サニーなど、

有力ブランドをすべて系列破壊の名の下に捨て去りました。

このため、納入業者や下請業者がユーザー(お客)を紹介しなくなりました。

また、ゴーンは、蜘蛛のような販売政策(プッシュより、プルと言われる)

によって、営業の足腰が弱くしました。


第6に、日産をルノーの実質的な子会社にしました。第一段階として、

ルノーは、買収のための出費をします。

次のごとくです。

)第3者割当増資5857億円→日産株式36・8%の取得

)新株引受権付き社債(ワラント債)2159億円

これで、出資額は、 )+)=8016億円となります。

第二段階、日産がルノーの第3者割当増資を引受けます。

額にして、2470億円→ルノー株式15%の取得(ルノーはこれによって、

出資した金額の30%を回復。しかもこの株式には議決権がないので、

経営にくちばしをさしはさまれる心配がない)。

同時期、ルノーは、保有ワラント債を日産株に変換。

この結果、出資比率が四四・四%にアップ

(保有株式数は、14億6425株に及びます)。

これによって、日産はルノーにコントロールされる会社となりました。


第7に、日産から牛のよだれのごとく、ルノーに絶え間なく送金させました。

ゴーン改革によってV字回復した日産の‘01年3月期の配当金は、

一株につき7円です。

単純計算して、14億6425万株×七円=102億4975万円。

金がもうかって仕方のないルノーは、

また新株を引き受け、翌年には138億7300万円を受け取っています。

‘08年、米国市場の減速したこの時期でさえ、日産は

減配したものの、220億4400万円の配当を支払いました。

この9年間で配当金の累計額は、3668億675万円に及びます。

日産がルノーに出資した2470億円と合算すれば、

約6138億円となり、ルノーは、

出資額の76・6%をすでに回収したことになります。

何と、ルノーの‘05年純利益、約4700億円の内、

実に7割に当たる約3200億円が日産の貢献分です。


第8に、日産に技術開発させないようにしました。開発コストを減るので、

表面上は利益が出ました。

しかし、他社との技術格差が歴然としてきたことから、さすがに焦ったゴーンが

‘07年度(‘08年3月期)の研究開発費を4900億円に増額。

それでもトヨタの6割程度で、ホンダより1000億円も少ないです。


第9に、彼には不相応な、高額の報酬を手にしました。

どれほど高額なのか――。

日産の役員報酬総額は、22億3100万円です。取締役は10人いるようです

が、彼は総額の6割以上を手にしているようです。

賞与も含めると、彼の年収は18億円にもなるらしいです。

彼の取り分が如何にとんでもない額かは、

同種企業の役員報酬額と比較すると一目瞭然です。

ちなみに、あの世界のトヨタの役員報酬額でさえ、

一人当たりの取り分は、1億2200万円。

ホンダでは3552万円です。

役員が23人いるらしいホンダの取締役全員の分を合算しても

ゴーンの年収には負けます。


たどれた日産の変容は、以上の通りです。

彼が日産のV字回復をもたらしたのは事実です。

しかし、その実績の陰で、

日産という企業は、中身が溶けてなくなったようです。

日産プロパーで、経営を任せられる人材は皆、解雇され、誰もいません。

「選択と集中」と言えば聞こえはいいが、

資産は売却のしまくり。その結果、

工場の施設も、役員が乗る車もすべて借り物だそうです。

そこまでして、彼は、日産の総資産回転率を極限まで上げました・・・

しかし、それがどうした?

と、言いたいです。

昨年の10月28日、彼は、

「ザ・プリンス パークタワー東京」で開かれた第10回日経フォーラムで、

「(この金融危機の状況下で)重要なのは、キャッシュ(現金)」

だと言ったそうです。

現金を守るため、従業員を2万人削減することにしたのでしょうか。

彼の改革って、人を食うことだったと、思えてなりません。

  ――

数日前、雑誌「月刊・現代」から得る情報を題材にした投稿はしないと、

宣言しました。

廃刊になった雑誌に、いつまでもこだわる態度にくどさを感じたからです。

しかし、有森氏がゴーンにつき、力の入った記事を書いてました。

それを知っていたということもあって、

昨夜、ニュース番組に触れた際、突如として

何が何でもこの記事を参考にして、投稿をさせて頂く気になりました。

結果として、ある種、約束違反したことになります。

しかし、同誌の廃刊を悼むという趣旨からすれば、

紹介してよかった記事です。

日産のゴーンと言うと、未だに倒産に瀕した日本の会社を救った英雄であるかの

ような錯覚をまき散らす報道がなされています。

僕のこのブログ記事が、警鐘になればと思います。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (スマイル)
2009-02-10 22:53:59
私はルノー車の一部を造ってますが、今年は全然ありません(^^;)マイッタマイッタ
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な、長い~^^; (エルモリア)
2009-02-11 11:43:14
またまた、わたしには難しすぎる分野のお話で~

一時のカルロス・ゴーン氏への、称賛の声は
たしかに高かったですね。

今のご時世はさながら、グローバル・スタンダード
における、市場経済戦国時代とも云えます。

今まで、日本の雇用体系であった、終身雇用や
一見封建的にも見える、主従関係における「情」
みたいなものが、規制緩和の名の元にすっかり
崩壊してしまいました。

今になって、構造改革の痛みが、ジワリと広がりつつ
ありますね。
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☆スマイルさんへ (忠太)
2009-02-11 19:16:55
ルノーの部品ですか。日産系列でのお仕事をなさってこられたのでしょうね。この時期、どこも自動車関連は大変でしょうが、日産系列は、特に大変と思います。
何とか乗り切られることをお祈りします。
返信する
☆エルモリアさんへ (忠太)
2009-02-11 19:42:49

昨日、この記事を書いてから、脱力感に襲われてます。一旦、アップしてから、文章をつなげ直していった感じです。
難しい質問を控えて下さったご厚意に感謝します。たとえば、ワラント債以外の社債についても説明してくれとか、、、出資比率の計算の仕方とか、、、
訊かれたら、どうしよう!!!
それを考えながらでの新規投稿でした。
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