のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

なぜノルウェーでは厳罰化が進まないのか

2009年10月05日 00時34分54秒 | Weblog
 なぜノルウエ―では厳罰化が進まないのか――。

 ≪犯罪者のほとんどは、教育や愛情の不足、貧しい環境などが原因で犯罪を起こしている。ならば彼らに与えるべきは罰ではない。良好な環境と愛情、そして正しい教育だ。もちろんとても少数ではあるが、いわゆるサイコパス的な人はいる。でもそうであるならばなおのこと、彼らに苦痛を与えても意味はない。この場合はできるかぎりの治療をしなければならない≫

 ドキュメンタリー作家であり、映画監督の森達也氏の質問に、寛容化政策をとる北欧において、こう答えたのは、ノルウェーの法務省の高級官僚だそうです。


 ちなみに、気になる治安状況ですが、殺人件数は年間で一件前後(傷害致死は除く)だと言います。


 司法改革に当たっては、ニルス・クリスティの存在が大きく影響したようです。参考までにこの人の著作を紹介します。『人が人をさばくとき~裁判員の修復的司法入門』という本が分かりやすそうですね。有信堂高文社から発行されています。

 さて、ノルウェーは、国民の100人に1人が囚人というアメリカと比べ、驚異的に犯罪発生率が低いです。なぜ犯罪に厳罰で臨むアメリカにおいて、それほど犯罪抑制効果を期待できないのかを、逆に問いたくなります――。

 アメリカ、なかでも厳罰化傾向が著しいカリフォルニア州やワシントン州などを分析すると、論点が明らかになるでしょう。これ等の諸州では3ストライク制と言って、どんな軽い罪であっても再々犯で起訴されたら無期懲役を科せられるのです。その結果、刑務所は、常に過剰収容。受刑者の更生や矯正どころではありません。ただ押し込めているだけなんですね。暴動も起きます。刑務所は、受刑者同士の情報交換の場になっている、と言ってよさそうです。完全に負のスパイラルが形成されているわけですね。犯罪が誘発的なはずです。

 なお、比較の具体的数値については、上記に紹介した本、『人が人をさばくとき~裁判員の修復的司法入門』を解説をしている福岡県弁護士会のHPに詳しいです(←ブログのようで、面白いです。たとえば、「アメリカみたいな国に日本をしてはいけないとつくづく思います。悪いことをした連中はどんどん刑務所に入れてしまえばいいんだ。こういう考えを持つ国民は多いと思いますが、それはすごく危険です。だって、みんないずれ出てくるんですよ。お隣さんが社会への復讐心に燃えていたらどうしますか。やっぱり、いろんな人がいるわけなんですから、それなりに折りあいをつけて生きていくしかありません 」という箇所では笑ってしまいました。確かに向こう3軒両隣に住んでいる人が全員、フラストレーションだらけの非合法のスナイパーだったとすれば、おっかないです。引っ越しを考えるのが賢明でしょう! しかし、国全体が危険地域なら、出国しない限り逃げ場がありません)。

 特に、ここで強調しておきたいのは、寛容化政策の実際的な姿は、死刑制度がないという点に尽きないことです。終身刑はもちろんのこと、無期懲役もないらしいです。ノルウェーでは、最高刑は懲役21年だと言います。

 日本でこのような刑事司法を提唱すれば、現実を見ない理想主義者のレッテルを間違いなく貼られるでしょう。でも、この考えに則る国が実際に存在し、アメリカなどに比べ、圧倒的によい治安を実現しています。学ぶべきところは、素直に学べばよいと思います。最後にノルウェーの司法制度に大きな影響を与えたという、ニルス・クリスティが森氏に語った言葉を紹介して、この稿を終えます。

 ≪私は今まで多くの犯罪者に会った。でも、モンスターになど、一人も会ったことがない。どこかにいるのかな。君がもし知っているのなら是非教えて欲しい≫


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