のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

活字情報といえど、汝、鵜呑みにするなかれ

2010年03月25日 00時53分42秒 | Weblog
「生活保護って、なぜ未だに手渡しなのでしょう?」

そう疑問を呈されるのは、台東区内の不動産会社に勤められる

桑島知己氏です。

同氏は、

「派遣村バッシング」

という記事のインタビューに答えて、

アパート等の家賃の滞納を防ぐ手段として

銀行振り込みが有効だとお話されています(岩波書店刊「世界」'10年4月号所収 )。


実際、代理納付制度と言って、

福祉事務所が家賃を家主に直接振り込む仕組みがあります。

しかし、自治体にもよるでしょうが、

あまり利用されていないようです。

銀行の自動振り込み制度を利用すれば、

家賃滞納など起こりうるはずがなく、

したがって、不動産業者が賃貸物件を仲介しやすくなります。

保証会社も尻込みしないで済むことでしょう。

貧困ビジネスを抑止する効果もあります。

結果として、地方自治体や国の支援が確実に及ぶようになります。

なのに、しないのですね。

保護費の手渡しによって「生活保護を受けている」という自覚を促し、

“どん底からの立ち直り”に賭けるわけなのでしょうか。

一見、意気やよし、です。

しかし、合理性のある戦略と思えないです。

世間は、

アパートにしろ何にしろ、定住場所を喪失した貧困者を前にして

“立ち直り”を期待するより、

まずその人を疎(うと)んじてしまうのではないでしょうか。

しかし、社会から受容されて初めて、自立を本物にする手掛かりを得ます。

自立の果実を得るまでには時間がとてもかかります。

住所があるのは、

その果実を手にするための必須の条件だと言い切っていいくらいのものです。

だったら、住む場所を追われないことを最優先に考慮すべきです。

そうしないと、かえって自立の芽を削がれるのでは、

と危惧します。

現に、市民は、

つけているその性善説的な仮面とは裏腹に

性悪説の見方をしてそうなのが、

“不心得者”騒動で揉めた公設派遣村の

村民に対する人々の反応により、明らかです。

たちどころに、

わっと皆で寄ってたかって貧困者をなぶり殺しのような目に合わせました。

そこでは、本音が出まくりの状態になったわけですな。


たとえば次の如し。


年越し派遣村が「公設派遣村」として運営された今年、

産経新聞(1月7日付朝刊)が

「都は入所期限の18日までの就労活動の交通費と昼食代として、

入所者一人当たり計2万2千円を支給した

(562人、総額約236万円)。

ところが、多くの入所者が活動費を受け取った直後に

近くの小売店で酒やたばこを購入していたことが判明。

(中略)

派遣村は午後4時半が施設に戻ってくる“門限”となっているが、

6日は午後8時を過ぎても約100人が戻っていなかった」と報道したとのこと。


朝日新聞も負けじと

「利用者約560人のうち、

約200人が6~7日、都が禁じた無断外泊をした。

6日に都は宿泊施設の外へ仕事探しに行く交通費などとして、

ほぼ全員に二万円を支給した。

(中略)

外泊の連絡は一部しかなかったという。

担当者は「社会復帰のためにはルールを守る必要がある。

残念な状況だ」(1月7日付夕刊)

と、貧困者叩きの情報を垂れ流しました。


ネット空間には

利用者らへの罵言雑言が溢れたそうです。

彼らを尾行して、

パチンコ店から出てきたところを難詰する様子を

動画で流すサイトまであったらしいです。


寒い話ですね~


しかし、こんなにも影響が出た新聞の報道なのに、よく調べると

事実誤認に基づくミスリードだったそうです。

つまり、誤報です。


まず、産経新聞が云々する“門限”は、なかったそうです。

朝日新聞の報道も含め、

住まいや職探しのため外泊せざるを得ない事情に一切触れていない点で

公平さに欠けていました。


実際に外泊したのは、40人程度だったらしく、

朝日が揚げた200人という数字は

都によると、朝食を食べた人数と夕食を食べた人数との差だろう、とのことです。


寮での夕食は、5時半からだったと言います。

福祉事務所の職員に

「二日間のうちに住居を決めなさい」と指導され、

夜遅くまでアパートを探していたという人が大勢いたようです。

公設派遣村の「なぎさ寮」があったのは、

東京都大田区東海。

工業団地と巨大な倉庫群に囲まれた、

大型トラックがひっきりなしに行き交う埋立地です。

そりゃあ5時半には帰れないでしょう。


次に、帰れない旨の連絡がなかったという点についても、

理由があったようです。

施設の性質上、電話番号が公開されていなく、

何と利用者にも知らされていなかったっていうのです!

連絡したくとも、連絡のしようがなかったわけです。

井上久さんという「ワンストップの会」のメンバーから指摘を受け、

翌日、東京都も施設内に携帯電話を導入したらしいですが、

周知徹底されないままだったそうです。


思うに、新聞社は、明らかに叩く相手を間違えています。


派遣村を支えたのは、

前出の「ワンストップの会」というボランティア団体です。

しかし、村にある宿泊施設を仕切ったのは、

「やまて福祉会」という法人でした。

この法人は、治安対策との一線を明瞭に画すこともなく

派遣村を運営したと言います。

メディアは、そこにメスを入れるべきだったでしょう。

なお、「やまて福祉会」は、Sなる人物がを牛耳っているそうです。

実は、このS氏、「やまて企業組合」の放漫経営のつわものらしいのです。

路上生活者を食い物にしているという批判が高まる中、

理事会を開催したと称し

(理事の会議は、でっち上げ。高裁判決で決議不存在が確認されています)、

元経理部長を懲戒免職処分、前理事長らの除名や解任をした挙げ句、

現在、東京地裁で係争中という、いわく因縁つきの人物です。

2009年4月、名古屋市は、

「やまて」への名城公園宿泊施設に関する委託契約を打ち切っています。

どうしてなのでしょう。

S氏が実力者でいる内は、

「やまて」が限りなく信用ならない団体だったからではないでしょうか。

そのような団体に、なぜまた都は、寮の運営を委託したのでしょうか。

雑誌「世界」の記事を執筆した斎藤貴男さんが、都の福祉保健局生活福祉部、

稲見徹副参事(山谷対策・自立支援担当)に質すと

「契約相手はあくまでも『やまて福祉会』です。

(『やまて企業組合』とは)別の法人ですし、

企業組合の方の過去の話が何かと出ているのを聞いていますが、

私ども、そういう事実は確認しておりません」という答えが返ってきたそうです。


新聞記事を鵜呑みにしては意見を言う石原都知事に

改めて聞きたいですね、

運営団体の選定にあたって都は無責任すぎなかったか、と。


こんな話もあります。

1月7日午前8時40分頃、

様子がおかしくなった50歳代の男性利用者がいたらしいです。

同室の利用者が施設側に知らせ、

救急車を呼んだが、既にこと切れていたそうです。

119番した利用者は、後で東京都の職員から

「なんで勝手に救急車を呼んだんだ!」と怒鳴られたと言います。


また、この日、39度の高熱で動けない人もいたらしいです。

インフルエンザを発症していれば、

集団感染の恐れが高かったはずです。

そういう問題については都の職員たちは口をつぐんでいるようです。

“自己責任”を言うばっかりでは社会は益々閉塞してしまいます。

少しは失業者ないし貧困層に対する、

一般の人の悪感情、

すなわち、差別や偏見を軽減しないことには、

大衆迎合主義のメディアが

またミスリードな情報を発信し、

社会保障政策に暗い影を落とすことになるでしょう。

そんなことにならないよう

基盤作りをするのも、行政の責任の内にあると考えます。


その責任を果たす方策の一つとして、

冒頭に掲げた「家賃の銀行振り込み」の仕組みを挙げえます。

ただ、「足の不自由な人のため」という

趣旨から制度化されたためか、上に述べたように

幅広く活用されていないようです。

一般化するには、制度を改善すべきなのかもしれません。


それと、年末、同様の支援をするつもりなら、

今回の派遣村で行われた、

期限分の補助金の全額(一人当たり2万円)を

いっぺんに支給するようなやり方は、避けるべきです。

その丸投げ感覚が、持ち逃げを誘発した可能性があります。

久し振りに見る万札で、

とりあえず、「カンパイだ~♪」

みたいな気分になってしまった人もいたでしょう。

パチンコで頂いたお金を全部すってしまった人もいたかもしれない・・・

互いに接点を無くしつつある社会にあって、

善隣の期待に背く欲求を完璧に払い除けられる人は、

それこそ、聖人君子です。

水戸黄門様です。

でなければ、ガッチャマン様です。

普通に、聖人君子でない人は、

誘惑に負けることもあることでしょう。

だから人間と言えなくもないのです。

それを念頭に入れて置くことが必要です。

鬱憤晴らしを予想して、初日は、3千円ほど。

夕食は、遅くなっても極力、寮で摂ってもらうことにします。

金銭出納帳をつけさせ、様子を見ながら2,3日後に2千円という風な具合に

小分けして渡すべきだったのではないでしょうか。

本人保護の見地からも、そうすべきだったように思います。

扱っているのは公金です。

溝(どぶ)に金を捨てるような真似をさせるわけには行かないのです。

気配りに欠ければ、公金管理体制の杜撰さが問われます。

石原都知事は、この点を衝かれ、

「国はそれ(国の財源)、責任持ったらいいじゃないか。

役人派遣してきたらいいじゃないか。

人が余っているんだから」と、返答したそうです。

こういう発言は、没主体性の現れだと非難されても仕方ないでしょう。

大きな教訓として、今後に生かしたいものです。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
最近難しいですね… (アルギンにっこ)
2010-04-01 11:46:37
忠太さん、最近難しい話題をアップされてますね。

おバカなウチにもコメントが出来るように、
もう少し簡単な話題も入れて下さいね♪
返信する
☆アルギンにっこさんへ (忠太)
2010-04-01 21:59:55
アルギンさん、コメント、ありがとうっす。

えっ、なになに、内容がムズイ、とな。

まねぇ、政治の話、普通はタブーですものね。

今しばらく、我慢してやって下さい。

と言いながら、ずっと続くかもしれんけど。
返信する
お願いです (アルギンにっこ)
2010-04-02 18:12:20
政治等も勉強してスーパーレディーになりたいアルギンです。
ニュースは見てるのにな~?
おバカなウチにも分かるように、子供ニュース並みの分かりやすさで解説も、あの~して頂けると、その~助かるのですが…。

ずうずうしいお願いですね…
返信する
☆アルギンにっこさんへ (忠太)
2010-04-03 00:47:17
恐縮させると申し訳ないので、なにも答えないで置きますね。
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