
Story
シングルマザーのアンジー(キルストン・ウェアリング)の仕事は外国へ行き、労働者を集める事。ある日突然クビを告げられた彼女は、今までのノウハウと経験を生かして、自分で職業紹介所を立ち上げる。親友のローズ(ジュリエット・エリス)を共同経営者に、二人は移民労働者たちを集めて仕事の斡旋を始めた。アンジーの努力もあり、仕事は増えていくが、やがてトラブルが出始める。会社の賃金未払いのため、移民たちにお金を払えなくなった事から、彼女は道を踏み外していく…。(goo映画より)
2007年/イギリス=イタリア=ドイツ=スペイン/ ケン・ローチ監督作品

評価 ★★★★☆
ケン・ローチの映画はいつも、たちまち登場人物達の世界に引き込まれてしまうのですが、この映画も、地味な設定ながら彼等の世界の中に放り込まれてしまった感覚を味わいました。ケン・ローチの映画は究極の体感ムービーと言えるかもしれないですね。やっぱり主人公達の生活感がとても上手く描かれているのがその要因かと思います。
「この自由な世界で」というのは、非常に逆説的な題名です。シングルマザーで、職場でセクハラを受けた上に、不当に解雇されてしまうアンジー。しかし、自由な世界だからこそ、人材派遣会社に雇われていた彼女が逆に職業紹介所を立ち上げることもできたのですね。下の者が一転して上に立つ事が出来る下克上も自由な社会だからこそ出来る事だと思います。
しかし、自由には責任が伴います。そして、他人への思いやりを失ってしまった所に自由はありません。移民労働者への思いやりを無くしてしまったアンジーには、手酷いしっぺ返しが待っていました。責任を欠いた自由がまかり通れば、それこそアナーキー・イン・UKになってしまうでしょう。劇中パトカーのサイレンが何度か聞こえてきますが、結局警察は一度も登場しないのは象徴的で、全ては自浄作用に任せているような感じです。
映画の前半でポーランドの青年が何気なく話していたケイオス(混沌)ゴルフ。工場の廃屋でのゴルフショットで、ゴルフボールがランダムに飛び交う話が、サブリミナルのように効いてきます。
痛い目にあっても、健気に職業紹介の仕事を続けるアンジーを映して映画は終わります。社会の問題は、個人の問題でもある。彼女の、そしてあなた自身の”自由”は何処へ行くのか?そんなことを問いかけてくるラストです。
ところで、この映画で脚光を浴びたアンジー役のキルストン・ウェアリングの魅力が光っていました。決して美人ではないんだけど、マリアンヌ・フェイスフルみたいにつなぎの革ジャン着て颯爽とバイクに乗る姿は、セクシーで格好良かったです。
映画『この自由な世界で』公式サイト
(「この自由な世界で」2008年11月 松本市 エンギ座にて鑑賞)
シングルマザーのアンジー(キルストン・ウェアリング)の仕事は外国へ行き、労働者を集める事。ある日突然クビを告げられた彼女は、今までのノウハウと経験を生かして、自分で職業紹介所を立ち上げる。親友のローズ(ジュリエット・エリス)を共同経営者に、二人は移民労働者たちを集めて仕事の斡旋を始めた。アンジーの努力もあり、仕事は増えていくが、やがてトラブルが出始める。会社の賃金未払いのため、移民たちにお金を払えなくなった事から、彼女は道を踏み外していく…。(goo映画より)
2007年/イギリス=イタリア=ドイツ=スペイン/ ケン・ローチ監督作品

評価 ★★★★☆
ケン・ローチの映画はいつも、たちまち登場人物達の世界に引き込まれてしまうのですが、この映画も、地味な設定ながら彼等の世界の中に放り込まれてしまった感覚を味わいました。ケン・ローチの映画は究極の体感ムービーと言えるかもしれないですね。やっぱり主人公達の生活感がとても上手く描かれているのがその要因かと思います。
「この自由な世界で」というのは、非常に逆説的な題名です。シングルマザーで、職場でセクハラを受けた上に、不当に解雇されてしまうアンジー。しかし、自由な世界だからこそ、人材派遣会社に雇われていた彼女が逆に職業紹介所を立ち上げることもできたのですね。下の者が一転して上に立つ事が出来る下克上も自由な社会だからこそ出来る事だと思います。
しかし、自由には責任が伴います。そして、他人への思いやりを失ってしまった所に自由はありません。移民労働者への思いやりを無くしてしまったアンジーには、手酷いしっぺ返しが待っていました。責任を欠いた自由がまかり通れば、それこそアナーキー・イン・UKになってしまうでしょう。劇中パトカーのサイレンが何度か聞こえてきますが、結局警察は一度も登場しないのは象徴的で、全ては自浄作用に任せているような感じです。
映画の前半でポーランドの青年が何気なく話していたケイオス(混沌)ゴルフ。工場の廃屋でのゴルフショットで、ゴルフボールがランダムに飛び交う話が、サブリミナルのように効いてきます。
痛い目にあっても、健気に職業紹介の仕事を続けるアンジーを映して映画は終わります。社会の問題は、個人の問題でもある。彼女の、そしてあなた自身の”自由”は何処へ行くのか?そんなことを問いかけてくるラストです。
ところで、この映画で脚光を浴びたアンジー役のキルストン・ウェアリングの魅力が光っていました。決して美人ではないんだけど、マリアンヌ・フェイスフルみたいにつなぎの革ジャン着て颯爽とバイクに乗る姿は、セクシーで格好良かったです。
映画『この自由な世界で』公式サイト
(「この自由な世界で」2008年11月 松本市 エンギ座にて鑑賞)
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