Story
周吉(笠智衆)、とみ(東山千栄子)の老夫婦は住みなれた尾道から二十年振りに東京にやって来た。途中大阪では三男の敬三に会えたし、東京では長男幸一の一家も長女志げの夫婦も歓待してくれて、熱海へ迄やって貰いながら、何か親身な温かさが欠けている事がやっぱりものたりなかった。それと云うのも、医学博士の肩書まである幸一も志げの美容院も、思っていた程楽でなく、それぞれの生活を守ることで精一杯にならざるを得なかったからである。周吉は同郷の老友との再会に僅かに慰められ、とみは戦死した次男昌二の未亡人紀子(原節子)の昔変らざる心遣いが何よりも嬉しかった。ハハキトク--尾道に居る末娘京子(香川京子)からの電報が東京のみんなを驚かしたのは、老夫婦が帰国してまもなくの事だった...。(goo映画より)
1953年/日本/小津安二郎監督作品
評価 ★★★★★
この映画は、昨年の「第10回小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」で上映された作品で、一昨年に引き続き、wancoと一緒に鑑賞してきました!
一昨年に鑑賞した「秋日和」もとても良かったのですが、この「東京物語」は更に良かったです。この映画は、どこにでもあるような家族の何気ない日常について描かれていますが、これだけ見応えのある素晴らしい映画に仕上がっているのは、さすが見事というしかありません。特に、心を打つような特別な台詞があるわけではないのに、観終わった後はとても心に迫ってくるものがあります。それは、この作品のひとつひとつのシーンがすべて完璧に計算しつくされたシナリオを基に描かれているからで、まったく無駄のないテンポで物語が進んでいき、最後の最後まですっかり惹き込まれてしまいます。
また、この映画は「家族」をテーマに、人間どうしの深い愛情について描かれた作品なので、万人に分かりやすく共感しやすい内容になっているのも魅力のひとつでしょう。
周吉、とみの老夫婦に、本物の家族よりも親身になってくれる戦死した次男の嫁・紀子と、いつまでも紀子が独り身でいることを気遣う老夫婦、というように、この映画は、お互いを思い遣る気持ちが実に見事に描かれているので、何十年経った今の私達が観ても、充分に共感できて、心に残る作品になっています。
そして、今では忘れ去られてしまった日本人の丁寧な言葉遣いに、上品な佇まいは、昭和の古き良き日本を思い起こして、とても懐かしい気持ちにさせてくれました。特に、紀子を演じた原節子は、聡明で美しく魅力的でしたね。
時代の流れでしょうがないのかもしれないですが、最近の映画は刺激の強い、奇をてらった内容の作品ばかりが増えてしまって、小津作品のように上質で、大人が楽しめるような映画がめっきり減ってしまったことが寂しいです。その理由に、面白い脚本が書ける脚本家があまり育っていないという現状があげられるのではないでしょうか。
人気コミックや話題になった小説を映画化したり、過去にヒットしたリメイク作品ばかりが増えてきたような気がするので、安易なヒットは狙わずに(特に日本映画はこの傾向が強いので)、映画制作者たちは、もっと良い脚本家が育つような環境づくりに専念してほしいと思いますね。
評価 ★★★★★
感想その1
これは、時間と距離の物語だと思いました。
ラストシーンがそのことを静かに語りかけてきます。電車の中で義母 とみの形見の懐中時計を見る原節子。教室で腕時計を見る香川京子。原節子が乗った電車を教室の窓から見送る京子。去って行く電車。二人の間に同じ時間は流れるけど、距離はどんどん離れて行く。これまでの物語が凝縮されたようなシンボリックなシーンで映画は終わります。時間とともに希薄になっていく人々の触れ合いと別れを描いた哀しくも感動的な映画でした。
感想その2
本当に頭の良い映画というのは、難しいセリフや奇をてらった描写を抜きにして、心に残る強いメッセージを打ち出す映画のことだということを示す、素晴らしい見本となる映画です。「東京物語」の1シーン、1シーンを抜き出して観て見ると、それは何の変哲もない、わざわざフィルムに撮って映写するまでもないような日常的場面ばかりです。しかし、一本の映画として全体を観て見ると、あたかもジグソーパズルの1片1片が組み合わさって、一枚の絵を形成するように、そこには見事な光景が映し出される。これはそんな映画でした。多くの人がベスト1映画として挙げることを納得させられます。ほんとに小津安二郎って偉大な監督だったんですね。
小津安二郎生誕100年記念 The Yasujiro Ozu 100th Anniversary
(「東京物語」2007年11月 長野 蓼科高原映画祭・茅野市民館にて鑑賞)
周吉(笠智衆)、とみ(東山千栄子)の老夫婦は住みなれた尾道から二十年振りに東京にやって来た。途中大阪では三男の敬三に会えたし、東京では長男幸一の一家も長女志げの夫婦も歓待してくれて、熱海へ迄やって貰いながら、何か親身な温かさが欠けている事がやっぱりものたりなかった。それと云うのも、医学博士の肩書まである幸一も志げの美容院も、思っていた程楽でなく、それぞれの生活を守ることで精一杯にならざるを得なかったからである。周吉は同郷の老友との再会に僅かに慰められ、とみは戦死した次男昌二の未亡人紀子(原節子)の昔変らざる心遣いが何よりも嬉しかった。ハハキトク--尾道に居る末娘京子(香川京子)からの電報が東京のみんなを驚かしたのは、老夫婦が帰国してまもなくの事だった...。(goo映画より)
1953年/日本/小津安二郎監督作品
評価 ★★★★★
この映画は、昨年の「第10回小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」で上映された作品で、一昨年に引き続き、wancoと一緒に鑑賞してきました!
一昨年に鑑賞した「秋日和」もとても良かったのですが、この「東京物語」は更に良かったです。この映画は、どこにでもあるような家族の何気ない日常について描かれていますが、これだけ見応えのある素晴らしい映画に仕上がっているのは、さすが見事というしかありません。特に、心を打つような特別な台詞があるわけではないのに、観終わった後はとても心に迫ってくるものがあります。それは、この作品のひとつひとつのシーンがすべて完璧に計算しつくされたシナリオを基に描かれているからで、まったく無駄のないテンポで物語が進んでいき、最後の最後まですっかり惹き込まれてしまいます。
また、この映画は「家族」をテーマに、人間どうしの深い愛情について描かれた作品なので、万人に分かりやすく共感しやすい内容になっているのも魅力のひとつでしょう。
周吉、とみの老夫婦に、本物の家族よりも親身になってくれる戦死した次男の嫁・紀子と、いつまでも紀子が独り身でいることを気遣う老夫婦、というように、この映画は、お互いを思い遣る気持ちが実に見事に描かれているので、何十年経った今の私達が観ても、充分に共感できて、心に残る作品になっています。
そして、今では忘れ去られてしまった日本人の丁寧な言葉遣いに、上品な佇まいは、昭和の古き良き日本を思い起こして、とても懐かしい気持ちにさせてくれました。特に、紀子を演じた原節子は、聡明で美しく魅力的でしたね。
時代の流れでしょうがないのかもしれないですが、最近の映画は刺激の強い、奇をてらった内容の作品ばかりが増えてしまって、小津作品のように上質で、大人が楽しめるような映画がめっきり減ってしまったことが寂しいです。その理由に、面白い脚本が書ける脚本家があまり育っていないという現状があげられるのではないでしょうか。
人気コミックや話題になった小説を映画化したり、過去にヒットしたリメイク作品ばかりが増えてきたような気がするので、安易なヒットは狙わずに(特に日本映画はこの傾向が強いので)、映画制作者たちは、もっと良い脚本家が育つような環境づくりに専念してほしいと思いますね。
評価 ★★★★★
感想その1
これは、時間と距離の物語だと思いました。
ラストシーンがそのことを静かに語りかけてきます。電車の中で義母 とみの形見の懐中時計を見る原節子。教室で腕時計を見る香川京子。原節子が乗った電車を教室の窓から見送る京子。去って行く電車。二人の間に同じ時間は流れるけど、距離はどんどん離れて行く。これまでの物語が凝縮されたようなシンボリックなシーンで映画は終わります。時間とともに希薄になっていく人々の触れ合いと別れを描いた哀しくも感動的な映画でした。
感想その2
本当に頭の良い映画というのは、難しいセリフや奇をてらった描写を抜きにして、心に残る強いメッセージを打ち出す映画のことだということを示す、素晴らしい見本となる映画です。「東京物語」の1シーン、1シーンを抜き出して観て見ると、それは何の変哲もない、わざわざフィルムに撮って映写するまでもないような日常的場面ばかりです。しかし、一本の映画として全体を観て見ると、あたかもジグソーパズルの1片1片が組み合わさって、一枚の絵を形成するように、そこには見事な光景が映し出される。これはそんな映画でした。多くの人がベスト1映画として挙げることを納得させられます。ほんとに小津安二郎って偉大な監督だったんですね。
小津安二郎生誕100年記念 The Yasujiro Ozu 100th Anniversary
(「東京物語」2007年11月 長野 蓼科高原映画祭・茅野市民館にて鑑賞)
こちらにもコメントありがとうございます♪
しんさんの「小津映画の一口」レビューについても、早速楽しく読ませて頂きました。
さすが、小津マニアと言われるだけあって、たくさんの小津作品をご覧になっていますね!
私達はまだ数えるほどしか観ていないので、しんさんのレビューを参考に、面白そうなものから他の作品もぜひ観てみたいです♪
市民図書館で小津作品のDVDが何本か置いてあるので、借りてみようかな~。
実はうちの主人も大学時代は山形だったんですよ~。^^
彼も山形の映画館に足繁く通っていたようなので、ひょっとしたら同じ映画館など行っているかもしれないですね!
奥様との「東京物語」のエピソード、とても素敵なお話ですね。
私も正直、観る前はそんなに期待していなかったのですが、物語が終盤のころになると、やっぱり感動して泣いてしまいました。。
だから、特に映画好きな方は、この映画の良さが分かって、泣いてしまうんでしょうね。。
「商店街映画祭」というのがあるんですか?知らなかったです!
「ALWAYS 松本の夕日」というタイトルが完全にパクリなので面白いですね~。
しんさんの作品が上映されるなら、ぜひ観てみたいです♪
ひょっとして新作ですか?それとも「猫取り名人」かな?(^^)
どんな映画祭なのか、ちょっとチェックしてみようと思います。
TBありがとうございました!
私は大学の時リバイバルで「秋刀魚の味」を観て「?????」
友達からビデオで借りて「東京物語」を観て「・・・・・」
その後ビデオで「麦秋」を観てやっと「!!!!!!!!!」
ちなみに大学時代は山形にいまして、とある変人映画館館長(でもないけど)が、小津現存全作上映イベントなどという自分の趣味以外のなにものでもないようなイベントをやゆってくれたおかげで、サイレント作品も含めてかなり劇場で観ることができました。
今は「秋刀魚」も「東京」も大好きでDVDで繰り返し観たり、劇場でかかればせDVD持ってるのにわざわざ観にいったりする、小津マニアです。
ちなみに、昔、カノジョに、とても暇だったある日、「東京物語でも観ようよ」と持ちかけ、「私寝ちゃうかも・・・」と言う彼女が終盤の方であり得ないくらい号泣していたのが、予想をはるかに超えて感動しすぎて嬉しいやら怖いやら少しフクザツでした。
そのカノジョは今、私の妻ですが・・・
2005年の記事なのでその後観た作品は増えていますが、当時の小津作品鑑賞全作の一口評の記事をTBしました。
ちなみに、3月末に「商店街映画祭 ALWAYS 松本の夕日」が松本市中町蔵シック館で行われます。
もしかすると私の作品が上映されるかもしれません。