ネアンデルタール人はホモ・サピエンスに勝る体力と知性をもっていた・・・ホモ・サピエンスの脳は小さいが、コミュニケーションを図るための小脳が発達していたことがわかっている。弱い者は群れを作る。力の弱いホモ・サピエンスは集団を作って暮らしていた。そして、力のないホモ・サピエンスは自らの力を補うように道具を発達させていった・・・ネアンデルタール人も道具を使っていたが、生きる力に優れた彼らは集団を作ることはなかったと考えられている。そのため、暮らしの中で新たな道具が発明されたり、新たな工夫がなされても、他の人々に伝えることはなかった。・・・こうして、集団を作ることによって、ホモ・サピエンスはさまざまな道具や工夫を発達させていった。そして、結果として能力に劣ったホモ・サピエンスがこの地球にのこったのである。(稲垣栄洋『敗者の生命史38億年』PHPエディターズ・グループ2019年,pp.191-192)
【人間の脳が作り出した世界】意外なことに人間の脳は、自分たちが暮らす自然界をしっかりと把握することができない。進化が作りだした生物の世界は、多様性に満ちている。あらゆるものが個性を持ちながら、つながりを持っている複雑な世界である。人間の脳は、この複雑さが区分できないのだ。いや、できないというよりも自然界を生き抜くためには、複雑な世界をまるごと理解するよりも、自分に必要な情報のみを切り出して、単純化する能力を発達させてきたということなのだろう。自然界には境界はない。すべてがつながっている。・・・人間の脳は、複雑にこの世の中を、ありのまま理解することはできない。そのため、区分して単純化していくのである。理解しにくいから、「できるだけ揃えたい」と脳は考える。・・・・【「ふつう」という幻想】もともとは、生物の世界にふつうなどというものは存在しない。ふつうとふつうでないものとの区分もないのだ。もちろん、私たちは人間だから、多様なものを単純化して、平均化したり、順位をつけたりして理解するしかない。しかし、それは私たち人間の脳のために便宜的に行っているだけで、本当は、もっと多様で豊かな世界が広がっているということを忘れてはいけないだろう。(同pp.202-207)
・・・地球に異変が起こり、生命の絶滅の危機が訪れるたびに、命をつないだのは、繁栄していた生命ではなく僻地に追いやられていた生命だった・・・生物の歴史を振り返れば、生き延びてきたのは、弱き者たちであった。そして、常に新しい時代を作ってきたのは、時代の敗者であった。・・・敗者たちが逆境を乗り越え、雌伏の時を耐え抜いて、大逆転劇を演じ続けてきた・・・逃げ回りながら、追いやられながら、私たちの祖先は生き延びた。そして、どんなに細くとも命をつないできた。私たちはそんなたくましい敗者たちの子孫なのである。(同pp.209-211)
【人間の脳が作り出した世界】意外なことに人間の脳は、自分たちが暮らす自然界をしっかりと把握することができない。進化が作りだした生物の世界は、多様性に満ちている。あらゆるものが個性を持ちながら、つながりを持っている複雑な世界である。人間の脳は、この複雑さが区分できないのだ。いや、できないというよりも自然界を生き抜くためには、複雑な世界をまるごと理解するよりも、自分に必要な情報のみを切り出して、単純化する能力を発達させてきたということなのだろう。自然界には境界はない。すべてがつながっている。・・・人間の脳は、複雑にこの世の中を、ありのまま理解することはできない。そのため、区分して単純化していくのである。理解しにくいから、「できるだけ揃えたい」と脳は考える。・・・・【「ふつう」という幻想】もともとは、生物の世界にふつうなどというものは存在しない。ふつうとふつうでないものとの区分もないのだ。もちろん、私たちは人間だから、多様なものを単純化して、平均化したり、順位をつけたりして理解するしかない。しかし、それは私たち人間の脳のために便宜的に行っているだけで、本当は、もっと多様で豊かな世界が広がっているということを忘れてはいけないだろう。(同pp.202-207)
・・・地球に異変が起こり、生命の絶滅の危機が訪れるたびに、命をつないだのは、繁栄していた生命ではなく僻地に追いやられていた生命だった・・・生物の歴史を振り返れば、生き延びてきたのは、弱き者たちであった。そして、常に新しい時代を作ってきたのは、時代の敗者であった。・・・敗者たちが逆境を乗り越え、雌伏の時を耐え抜いて、大逆転劇を演じ続けてきた・・・逃げ回りながら、追いやられながら、私たちの祖先は生き延びた。そして、どんなに細くとも命をつないできた。私たちはそんなたくましい敗者たちの子孫なのである。(同pp.209-211)
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