戦間期の思想

現代思想に係る引用と私的メモ

国民国家とは

2020-06-05 14:47:10 | 日記
 現代は、国民国家が終焉に向かう時代である。国民国家は、18世紀後半にイギリスで始まったいわゆる「産業革命」と、同時期に起きたフランス革命(1789年)、特にその中でナポレオンが形成した義務徴兵制(1793年)に基づく「国民軍」とが主軸となって国家である。それゆえ、国民国家に指導原理は、両者合わせて「富国強兵」ということになる。
 それに、両国の相互影響で発生した「議会」制民主主義と、試験によって選抜される司法を含む「官僚」制度、その試験の準備をする「学校」制度とが補完して形成された。
 学校において国民が養成され、その国民は徴兵制によって国民軍を形成するとともに、選挙権に基づいて間接的に議会に参加する。学校でよく勉強のできた国民は、試験を通じて国民軍の将校、司法および政府の官僚、さらには議会の議員となって、国家権力を運営する側に回る。成績が良くなかった国民は、支配される側に回る。
 この成績による分離構造は、見たところ個人の「能力」に依るように見えるが、実際には出身家庭と結びついている。家庭の文化が、そういう選抜試験の文化と一致しているかどうかによって、進学の成否に大きな差が出るからである。
 両国と同時期に、イギリスから1776年に独立したアメリカでは、これらの制度が理念に基づいた形で早期に形成された。日本は、そのアメリカの圧力で開国し、1868年になって国民国家形成を開始した。既に形成されていた列強の国家体制を、さまざまな形で日本の・・・
(安冨歩「一人ひとりが大事にされない社会構造とその変革」,はらっぱNo.392,こども情報研究センター,2020,p.3)

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