「昨日大量に入荷したのに明日には完売しそうです。もっと注文すべきでした」 昨年12月24日、京畿道にある大型スーパーの酒類コーナーに赴くと、スタッフがそういった。クリスマスイブのこの日、欧米のビールがあまり売れずに山積みされていたのとは対照的に、すぐそばに置かれていたアサヒスーパードライの缶ビールは在庫がほとんど残っていなかった。 ビールの棚の前に立っていると、 「買うなら、いまのうちにカートに入れたほうがいいですよ。戻ってきたら売り切れてるかもしれない」 とスタッフにいわれ、急きょカートに突っ込んだ。値段は340mlの缶が6本で1万5000ウォン(約1646円)と、他の海外ビールより高い。それでもスーパードライを買い求める客は多いのだ。 22年比で250.2%増 昨年の日本ビールの売り上げは追い風に帆を張った勢いだった。韓国関税庁が12月15日に発表した輸出入統計によると、2023年の日本ビールの輸入量は6万300トン。2022年と比べてなんと250.2%増加した。ほかの海外ビールの中で最も輸入量が多かったのは中国ビールで、それでも4万6500トンに過ぎない。日本ビールはそれをはるかに上回ったのだ。 2022年までの日本ビールの輸入量は、中国とオランダ(4万5124トン)を追っていた。それがいまや、圧倒的にシェアを伸ばしている。 全体販売量をみても、日本ビールは韓国ビールに匹敵する勢いだ。韓国のコンビニ3社の2023年の売り上げ結果を見ると、アサヒビールがどこも4〜5位内に入っていた。これはCassやTerraなど韓国ビールに次ぐ順位。海外ビールの中では断然トップだ。 昨年12月1〜20日のある大型コンビニの海外ビール売り上げは、1位がアサヒ、2位がバドワイザー、3位がハイネケンだった。10位の中には、キリン一番搾り(8位)、サッポロ(10位)が入っている。 「NO JAPAN」で不遇も 2018年までの時点でも、日本ビールの売り上げは決して悪くなかった。コンビニやスーパーでは、アサヒ、サッポロ、キリン、サントリーなどの缶ビール(500ml)が4本1万ウォンで買えた時期もある。 しかし、2019年に文在寅(ムン・ジェイン)政権下で日本製品不買運動「NO JAPAN」の波が起こった。日本のビールを販売する業者も購入する消費者も「売国奴」と非難された。日本ビールの売り上げは急落した。ほとんどの店舗の店頭から消え、買うことは容易ではなかった。 アサヒビールを輸入していた「ロッテアサヒ酒類」は、2019年末にリストラを断行してもいる。それほど経営が厳しくなったのだ。2020年のコロナパンデミック以降「NO JAPAN」の勢いは消えたが、それでも消費心理は回復せず、売り上げは停滞していた。 V字回復を成し遂げた「ある商品」 ところが韓国で日本ビールの売り上げがV字回復。トップをうかがうほどになったのは、3つの決定的な要因がある。 ひとつ目は日本に旅行する韓国人が増えたことだ。日本政府観光局(JNTO)によると、2023年1〜11月までに日本を訪れた外国人観光客は2233万人。そのうち全体の27.7%である618万人(27.1%)と、韓国人旅行者が最も多かった。福岡の博多や大阪の難波を歩いていると、「ここは日本人より韓国人のほうが多い」と感じるほどだったとも聞く。 日本を旅行して、日本の料理と酒に親しんで帰国すれば、日本で食べた味が懐かしくなる。当然、日本ビールに食指が動く、というわけだ。 ふたつ目はアサヒスーパードライの人気だ。昨年5月に輸入が始まったアサヒスーパードライ生ジョッキ缶は、韓国内で旋風を巻き起こした。コンビニやスーパーでは品薄が続き、中古取引サイトでは、2倍以上のお金を払ってもこのビールを買うというコメントもしばしば見られた。ブログやコミュニティ、SNSでこのビールが売られている場所の情報のシェアや、ビールを飲んだレビューに関するポスティングが人気を集めた。 アサヒスーパードライ生ジョッキ缶は、日本ではコンビニで簡単に購入できたが、韓国への輸入は数が限定されていたため取り合い状態になった。昨年末から韓国への輸入量が増えたものの、依然として人気を保っている。ジョッキ缶を買った会社員のシン・ジョンテさん(38)は「缶の蓋が一気に大きく開くのがすごい。韓国ビールでは味わえない“ビールらしい強い味”が感じられて虜になってしまった」と話してくれた。 ありえない“敵失” そして最後の3つ目の要因は“敵失”、中国ビールの没落だ。昨年の夏頃までは、韓国での青島ビールの売り上げはそれほど悪くなかった。CMの「羊肉と中国料理にはなにより青島」というコピーが人気を集め、中国料理店では青島ビールを飲む人が急増した。 しかし昨年10月、青島ビール、いや中国ビールの没落を招く事件が発生した。中国現地の青島工場で、ある男性がビールの原料保管場所に放尿する映像がネットに流れたのだ。この映像は瞬く間に世界に広がった。青島ビールの時価総額は1カ月で67億元(約1兆2300億ウォン、約1349億3500万円)減少したという。 当然ながら、韓国での青島ビールの売り上げと輸入量は激減した。問題の映像が公開された2023年10月の売り上げは約66億ウォンと、9月の125億ウォンに比べて半分程度になった。11月の売り上げはランキングの10位以内にも入らず、公開すらされなかった(10位の売り上げが40億ウォン台だったので、それ以下である)。昨年12月と今年1月の売り上げはさらに下落するといわれている。 もともと中国産の食品には衛生面で問題があるというイメージが強かった。そこへの放尿映像は決定的だった。 結果、日本のビールが急激に売れる事態となった。今年はアサヒのノンアルコールビールが国内で本格的に発売される予定だ。日本ビールのシェアはさらに拡大するだろう。 約4年前までは「NO JAPAN」という狂気で、日本産を無視していた人たちが、現在は日本産ビールの売り上げ上昇を牽引している。(デイリー新潮) |
残念です。
韓国の皆さんが楽しそうに始めた「NO JAPAN」運動。
もっとを続けてほしいです。