久喜市や加須市、行田市といった埼玉県北部から東部にかけての地域では、新米の収穫を祝い古くから「塩あんびん」を食べてきた。「塩あんびん」とは、砂糖の代わりに塩を使って味付けしたあんをもちで包んだもののことで、小豆やもち米本来の甘みを塩が引き立てているのが特徴。現在では甘いあんが主流だが、こちらは江戸時代中期に生まれたもので、当時砂糖は大変貴重だったため、庶民はめったに口にできなかったと言われている。「塩あんびん」が伝わる地域では、地元民の身近な郷土料理のひとつであるが、収穫祝いを始めとするハレの日に多く食べられてきた。小川遥資