美男子俱楽部

※単行本はBOOTHにて発売中。

白い皿「逆襲のやまのうち(1)」

2023-12-06 | 白い皿

 拙宅にはロボット掃除機というのがある。

 直径四十cm弱程の、背の低い円壔状のロボットである。是れによって、態態掃除機を引っぱりだしてきて、部屋を動き回りながら塵や埃を吸引せずともスイッチ一つでこのロボが稼働、勝手に移動して、勝手にごみを吸引、勝手に所定の位置に戻って来るという非常に目覚ましいアイテームなのである。

 自分はこれを二万円くらいで買った。

 俺の様な売れて無い物書きでも、これ位は頑張れば買える。ふほほ。こんなに便利な物を使い便利な思いをして、便利な暮らしをしている人間もあまりいないだろう。

 と、調子に乗るがしかし俺は何だ、物書きとか言っておいて最近は全然物を書いていないじゃないか。この原稿を書くのに一体何箇月空白をあけているのか。自分に物書きを取り除いたら何になるのだろうか。ただの売れてない奴。むなしい。

 そんな只の売れていない奴でも、ロボット掃除機のお蔭で、そこそこ快適なおそうじライフを過ごしていたのだけれども、問題が生じた。

 自分は風呂に入るタイミングで、これを稼働させる。

 なぜなら、自分が部屋でくつろいでいる時にロボット掃除機を稼働させると、くつろいでいる自分の周辺のゴミを吸引しに来たこれに「おらおら、邪魔やんけ。足どけんかい、足」と言わんばかりに足をくんくん小突かれるからである。折角の寛ぎの時間まで吸引して欲しくはない。ならば、自分が浴室にいるタイミングで部屋の中を思う存分綺麗にしてもらおうかしらん。と考えたのである。

 しかし、このロボット掃除機たるや、自分が入浴を終え、脱衣所に降りたタイミングを見計らって真直ぐ突進してきやがるのである。「はぁーい、お掃除しますよー」と体をがんがんにぶつけてくるおばはんのごときである。

 俺は足をくんくんされるものだから、おばはんの邪魔にならぬ様に片足を上げたり、股を開いたりしてこれを除けるのだけれども、おばはんは容赦ない。お構い無しに連続攻撃をあびせてくる。

 むかつくぜ。何故俺は脱衣所でひとり、両足を交互に上げたり股を開閉したりしてマリオネットのごとくアホーに動かなければならないのだろう。まあ、元はといえば機械なんぞに掃除を全面的に任せた俺も悪いのかもしれない。これくらいの偶然で腹を立ててどうする。これ位で怒っていては、俺は一生ただの売れない奴だ。