第7.5話: 「忍び寄る影」
エディアの心は、シヴィーの教えを受けて少しずつ成長していた。
カサバ村の平和な日々は続いていたが、村人たちにはわからないところで、不穏な影が忍び寄っていた。
ある晩、エディアとシヴィーはタマ吉と共に家でゆったりと過ごしていた。タマ吉はエディアの膝の上で丸くなり、時折目を開けて周囲を警戒していた。
「エディア、最近の練習はどう?」シヴィーが優しく問いかけた。
「少しずつだけど、魔力のコントロールができるようになってきたよ。ありがとう、シヴィー。」エディアは微笑んで答えた。
その時、タマ吉が突然耳を立て、緊張した様子で外を見つめた。
エディアもタマ吉の異変に気づき、窓の外を覗いた。
「どうしたの、タマ吉?」シヴィーも不安げに外を見た。
外には何も異常は見当たらなかったが、タマ吉の目は警戒心で鋭く光っていた。
「未来を予見するタマ吉の力が何かを感じているのかもしれない」とエディアは思った。
翌日、エディアは市場に向かった。
グレゴールの店で新しい魔法の知識を学ぶためだ。
市場はいつものように賑わっていたが、どこか張り詰めた空気が漂っていた。
「エディア、何か困っていることがあるのか?」グレゴールが優しい目で問いかけた。
「昨晩、タマ吉が何かを感じ取ったみたいで…。それが何なのか分からないんです。」エディアは不安を隠せなかった。
「ふむ、それは気になるな。最近、魔族の動きが活発になっているという噂を聞いたが…。警戒しておくに越したことはない。」グレゴールは心配そうに眉をひそめた。
その日、エディアはグレゴールから新しい魔法の知識を学びながらも、心の片隅に不安を抱えていた。
夕方、エディアが家に帰る途中、シリオンの工房に立ち寄った。
シリオンは忙しそうに鍛冶作業をしていたが、エディアに気づくと笑顔を向けた。
「エディア、どうしたんだ?」シリオンが尋ねた。
「何か不安なことがあって…。タマ吉が何かを感じ取ったみたいで、気になってるんです。」エディアはシリオンに相談した。
「なるほど、タマ吉の予感は信頼できるからな。何かあれば、俺も協力するよ。君は家族同然だから。」シリオンは優しく言った。
エディアはシリオンの言葉に少し安心し、家に向かった。
家に着くと、シヴィーが待っていた。
「エディア、おかえり。何かあったの?」
シヴィーが心配そうに尋ねた。
「タマ吉が何かを感じ取ったみたいで…。でも、グレゴールやシリオンが協力してくれるって。」
エディアは状況を説明した。
シヴィーはエディアを抱きしめ、「心配しないで、エディア。私たち家族と友人たちが一緒にいるから、何があっても乗り越えられるわ。」と励ました。
その夜、エディアは少しずつ不安を解消しながら眠りについた。
しかし、忍び寄る影は確実に近づいていた。
エディアとシヴィー、そしてカサバ村の人々は、その影に立ち向かう覚悟を決めなければならなかった。