人はなぜ戦争をするのか

循環器と抗加齢医学の専門医が健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

地獄の一丁目一番地

2017年07月05日 07時47分37秒 | 社会
東京都議会選挙で大敗した政府自民党は、野党の求めに応じて、加計学園疑惑に関する閉会中審査を開催すること決めました。そこには、前川前文科省事務次官が参考人として呼ばれ、加計学園獣医学部設置に関わる安倍総理官邸側からの働きかけについて改めて証言することになります。残念ながらその審査には、加計学園疑惑に対して最も説明責任を負うはずの安倍総理は出席しません。官邸側は安倍総理の外遊に合わせて閉会中審査の日程を組んだのです。前川氏からの証言に対して、安倍総理が面と向かって説明することを避けたかったのでしょう。

先日の都議会選挙では都民ファーストの小池前代表が、「情報公開は都政にとって一丁目一番地だ」とアピールしました。正しい情報公開こそが政治の入り口だということです。すべての情報を公開してこそ、政治の透明性、公平性が担保されることは言うまでもありません。

これまで総理官邸は、一貫して森友学園や加計学園疑惑に関する情報公開を避けてきました。それは、国民にとっての「一丁目一番地」が政権にとっては「地獄の一丁目一番地」になりかねないからです。

今後は、安倍総理を含めて、疑惑の渦中にある政権幹部が真に丁寧な説明責任を果たすことが求められます。前川氏や加計学園理事長本人の証人喚問も必要となるでしょう。それがたとえ、政権にとって「地獄の一丁目一番地」だとしても、自民党が国民の信頼を回復するためには避けて通れない道であると思います。


ついに下されたアポトーシスの審判

2017年07月03日 08時33分13秒 | 社会
昨日、東京都議会選挙が行われました。結果は自民党の惨敗でした。ついにミトコンドリアがアポトーシスの審判を下したのです。

ミトコンドリアは細胞の中に住んでいます。ミトコンドリアは国家の枠組みの中に暮らす国民によく似ています。国家が国民を守り、国民が国家を支えるように、細胞とミトコンドリアとの間には相互支配の関係が成立しています。個々のミトコンドリアの立場は弱く、細胞に対しては従属的です。しかし、一方でミトコンドリアは細胞に対して生殺与奪の権利を有しています。それはアポトーシスという細胞を自殺に追い込む権利です。アポトーシスは、ちょうど選挙で政権を崩壊させる有様に似ています。

細胞の中のしくみはとても民主的です。それは、私たちの祖先がガン細胞だったからです。ガン細胞は無限に増殖する能力を有しています。人がガンになるのは、遺伝子に組み込まれた細胞の欲望が頭をもたげる時です。少しでも自分の勢力を拡大したいという細胞が本来持っている国家権力にも似た欲望です。
 
同様に国家を脅かす危機は、細胞の増殖を企てる勢力が多数を占め、それが暴走した時に訪れます。生命は細胞の暴走を抑える増殖制御装置などの憲法を遺伝子に組み入れながら進化してきました。その憲法に保障された民主的なしくみを支えているのが、メディアに相当する細胞内情報伝達系です。例えば、国際紛争や原発事故のような大事件は、細胞内情報伝達系を介して細胞のすみずみまで瞬時に正しく情報が伝えられます。その結果、細胞内に暮らす数々の小器官は、細胞を守り、ひいては個体を守るために適切な対応をとることができるのです。ところが、ガン化を企てる細胞は、細胞内外で発生した事件を正しく細胞内小器官に知らせず、自らの増殖にとって都合のいい方向にのみ情報を伝えようとします。特定秘密保護法、安全保障関連法や共謀罪処罰法は、まさに国民が国内外の変化に正しく対応するための情報を隠蔽し、国家権力の暴走を許すガン化促進法なのです。

民主主義国家では三権分立の制度が確立されているように、細胞内でも何かの権力が突出してくると、それを抑制する権力が働きます。例えば正常な細胞内では細胞の増殖を促す遺伝子とこれを抑える遺伝子が拮抗しています。前者がガン遺伝子であり、後者が増殖制御装置の一つであるガン抑制遺伝子です。ガン遺伝子は細胞の成長や分裂を促し、逆にガン抑制遺伝子は細胞が無秩序に増殖しないように監視する独立した機関としての役割を果たしています。どちらの勢力が優っても細胞を秩序ある成長に導くことはできません。ガン細胞では、ガン遺伝子を活性化する情報のみが溢れ、ガン抑制遺伝子を活性化するはずの情報はブロックされているのです。
それでは、ガン抑制遺伝子は本来どのように機能しているのでしょうか。ガン抑制遺伝子は、もし細胞が無秩序に増殖しようと企てると、それを察知して細胞分裂に待ったをかけます。それでも従わないときは、細胞内小器官の一つであるミトコンドリアに知らせてアポトーシスという自殺の機構に訴え、細胞に引導を渡します。このしくみは、細胞のガン化を未然に防ぐため、細胞内に暮らす国民とも言えるミトコンドリアに与えられた大切な権利です。国会で内閣不信任の決議を下し、選挙によって政権を交代させることができる権利と同じです。

ミトコンドリアは細胞のガン化を防ぐ最後の砦です。細胞内では、もし民主的な制度が機能せず、細胞がガン化しようとしても、細胞の生死を決定する権限を持つミトコンドリアがアポトーシスによって細胞を裁いてくれます。アポトーシスは、細胞や個体の正常な発育を担保するために生命進化の過程で備わった最も大切な命の制御機構です。アポトーシスは、周りの細胞や、ひいては個体に迷惑をかけるような身勝手な細胞を消去するために不可欠な犠牲死のシステムです。東京都議選で自民党に下されたアポトーシスの宣告は、まさにガン化しようとする安倍政権に対して、正しい国家のあり方を問い正す国民の審判だったと言えるのではないでしょうか。

建国記念日に思うこと

2017年02月11日 10時05分25秒 | 社会
今年も建国記念日が訪れた。私も日本人の一人として、素直に日本という素晴らしい国に生まれたことを感謝したい。私たちの祖先が営々と築き上げたこの国を守り、よりよい国として子孫に引き継ぎたいと思う。

すべての日本人は私と同じように、わが国と子孫の繁栄を願っている。しかし昨今、こういった愛国心とは一線を画す国家主義が台頭しようとしている。言うまでもなく、安倍政権が目指す国家ファーストの全体主義である。それはあたかも私たちの体の中にできたガンのようである。ガンはどこまでも成長を目指し、行き着く先は破滅しかないことを知らない。

ガンとは何か。ガンは悪性新生物と呼ばれたこともあった。新生物と聞くと、他の細胞と全く構造を異にしたエイリアンのような生物を思い描く方がいるかも知れない。しかし、ガンこそが生命の本来の姿なのだ。そのガン細胞が何十億年の歴史を経て高度に進化した姿が人間なのである。それでは、人体という何十兆個の細胞が協調して暮らすグローバルな小宇宙はどのように出来上がったのか。

細胞を始めとして、すべての生命体は、自らの不死と子孫の繁栄を目指している。しかし限られた空間と資源の中でその欲望を満たす時、他の生物との軋轢は必発である。そういった生物本来の欲望を取り戻し、行動に移しているのがガン細胞なのである。しかし私たちの祖先は、細胞同士の繰り返される争いの中で、ガン細胞のままでは幸せに暮らせないこと学んだ。子孫の繁栄に最も大切なことは共生であることを学んだのだ。いや正確には、他の生物と共生できた生物のみが生き延びたのである。細胞同士の共生を進めるうえで中心的な役割を果たしたのが遺伝子の憲法9条とも言える「接触阻止」の遺伝子である。ガン細胞は他の細胞を乗り越え、折り重なるように増殖を続ける。接触阻止の遺伝子は、細胞同士が接触した時に増殖をやめさせる働きを持つ。細胞は接触阻止遺伝子を持ったことにより、人体という小宇宙を作り上げた。

ガン細胞とは、端的に言えば、先祖返りした未熟な細胞である。日本もかつては限りない増殖を目指す未熟な国家であったと言える。しかし、未熟は成熟に至る過程である。成長期には精神や肉体を強くすることが必要なように、国家も富国強兵を目指すのは自然の成り行きであった。だれもが「坂の上の雲」を目指した明治は、未だ未熟な社会であったかもしれないが、近代日本の青春時代でもあった。青春には常にほろ苦い思い出がつきものである。太平洋戦争はわが国とって「青春の蹉跌」であった。あれから71年、わが国は戦後の高度経済成長期を経て成熟した社会になった。過去20年間景気は低迷していると言われたが、単に豊かさが定常的になっただけのことである。それでも一部日本人の中には物欲が満たされない人達がいる。さらなる経済成長を追い求める貪欲な人達の代表として安倍総理が君臨している。安倍総理は無理に成長を取り戻すことの怖さを知らない。成熟期に成長ホルモンの過剰な分泌を促すことは動脈硬化やガンなどの生活習慣病の発生を許し、寿命を縮めるのである。つらい青春時代の経験を生かし成熟したわが国は同じ過ちを繰り返してはいけない。私たちは青春時代の思い出をそっと胸に秘めて成熟への道を歩んでいかなければならないのである。

社会は人間の集団である。人間は細胞から出来ている。したがって、細胞の考えることを人間が行動に移し、社会が動く。生命は無限の成長という欲望を抑える遺伝子を備え付けて進化した。人間社会が進化するためにも、国家の暴走を食い止める憲法が必要なのだ。安倍政権は強い経済力を持った軍事大国を目指している。そのためには、全体主義でで国民の権利を縛り、敵がいれば戦争も辞さない姿勢である。私たちは、小銭に眼が眩んでわが国の将来への道を踏み外してはならないと思う。人種差別や戦争のないグローバルな世の中を築くことこそが、子孫の繁栄を約束するのだから。

人類進化の流れに逆行するイギリスのEU離脱

2016年06月24日 17時22分15秒 | 社会
国民投票の結果、イギリスがEUから離脱することが決まった。26年前に東西ヨーロッパの壁が取り払われ、ヨーロッパが一つに統合されるという画期的な歴史的流れに一つの終止符が打たれた。

イギリスのEU離脱の影響は単に経済的ダメージにとどまらない。イギリスにおける閉鎖的国家主義の台頭は、アメリカにおけるトランプ氏の躍進に代表される世界的な排他的民族主義の流れを加速させることになるであろう。わが国も例外ではない。自民党の改憲草案にもみられるように、安倍政権は粛々と個人主義から国家主義への転換を図ろうとしている。世界の主要国がナショナリズムに走り、軍事力で国益を守ろうとする時、その先にあるのはささいなきっかけに端を発した世界的規模の戦争の勃発である。

人類はこれまでの歴史の中で着々とグローバル化を進めてきた。多くの人々は、国家や民族を超越した国際協調の時代が訪れ、やがて戦争やテロはなくなるであろうと信じてきた。今回のイギリスのEU離脱は人間社会の歴史が後戻りしたことを意味している。

人間社会の進化の歴史は、生命進化の歴史を彷彿とさせる。我々の祖先である古細菌が20億年前にミトコンドリアと共生し、莫大な力を持つ細胞に進化した。しかし、これらの単細胞は自らの利益のためにのみ増殖し、決して他の細胞と相いれることはなかった。しかし、生命は個体がよりよく生存する方向に進化する。10億年前に細胞が寄り集まり、多細胞化したのは、個々の細胞が独立して生活するよりも、細胞同士が協調して機能した方が、生存に有利だったからだ。細胞間の壁を取り払い、食物や情報を共有するようになった多細胞は、やがて生命社会を凌駕するようになった。我々人間は、60兆個におよぶ細胞が、それぞれ独立しているにもかかわらず、栄養と情報を共有して、何と100年におよぶ寿命を謳歌しているのだ。

しかし、人間の細胞も閉鎖的に振る舞うことが多々ある。たとえば、ガンである。ガン細胞は先祖返りした細胞である。ガン細胞は、多細胞生物への進化に画期的な役目を果たした「接触阻止」という不戦の遺伝子、いわば細胞の憲法9条をないがしろにして他の細胞に浸潤していく。憲法9条を変えたからといって侵略戦争を始めるわけではないという意見もあるが、ガン細胞も最初から浸潤するような悪性の細胞ばかりではない。多重遺伝子変異と言って、ガン化制御を司る遺伝子を少しずつ突然変異させ、徐々に悪性度を強めていくのである。

人間が長く健康でいられるのは、細胞が構成する小宇宙が協調して機能を果たしているからである。軍事力は一時的な戦争の抑止力にはなっても、決して恒久的な平和をもたらさない。北太平洋プレートとユーラシアプレートが力で押し合い、やがてその均衡が破綻した時、東日本大震災が起きた。軍事力による見かけ上の平和は必ず均衡が崩れるのである。この地球上から、戦争やテロをなくすには、根気の要る作業ではあるが、民族や宗教、国家の垣根を超えて融和し、協調する以外にない。いつの日か、世界がEUを超えたグローバルな組織を作り、そこにイギリスを含めた世界中の国が参加することを願ってやまない。人類のさらなる進化の方向性はそれ以外にないと思うからである。

このブログは少子高齢化社会を生き抜く真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場と視点からメッセージを送っています。

「核なき世界」実現のために

2016年05月28日 08時10分18秒 | 社会
昨日オバマ大統領が被爆地広島を訪問した。世界一の権力者の眼に、人類を破滅に導く核の惨状はどのように映ったのだろうか。

オバマ大統領自身が演説したように「核なき世界」実現への道は険しい。それは、戦争の抑止力として各国が核に頼るからだ。言い換えれば、この世に戦争が存在する限り、核はなくならない。「戦争なき世界」が、「核なき世界」に通じるのである。それでは、どうすれば戦争がなくなるのか。国際紛争の解決手段として戦争を禁じることが必要である。すべての国が日本国憲法第9条を採用しなければならない。世界がが憲法9条の理念を共有するとき、始めて「核なき世界」が実現する。

現実には、核武装によって独裁政権の延命を図ろうとする国、国家の威信や国益を守るために核の脅威をちらつかせるような国、またテロの手段として核兵器を利用しようとする集団があることも否めない。しかし、「緊迫した安全保障環境の中で国民の生命と財産を守るため」という大義名分の下、わが国が安易に憲法9条を放棄すれば、世界は永遠に核を廃絶するチャンスを失うかもしれない。わが国は唯一の被爆国として、世界平和と核の廃絶に向けて世界をリードしなければならない立場にある。人類が戦争の悲劇から解放されるにはまだまだ長い年月が必要であろう。その日がくるまで、わが国は粘り強く憲法9条を守り抜かねばならない。

人間社会の進歩を思うとき、生命進化の歴史に想いを馳せる。なぜなら、人間社会は人間の集団であり、人間は細胞の集団で成り立っているからである。人間の考えていることは、細胞が考えている。人間の祖先はガン細胞であった。他の細胞のことはおかまいなしに、ただひたすら成長を求めるガンであった。生命が画期的な進化を遂げることができたのは、ガン細胞の群れが手を取り、協調して多細胞化したからである。

今から10億年以上前、ガン細胞たちは毎日餌を巡る争いを繰り返していた。あるとき、壮絶な争いで大きなダメージを被った細胞の一つが突然変異した。国の形を作るのが憲法ならば、細胞の形を作るのが遺伝子である。ガン細胞が突然変異で獲得した憲法は「接触阻止」と呼ばれる遺伝子であった。「接触阻止」とは細胞が他の細胞に接触すると増殖をやめるしくみである。ガン細胞は細胞同士が接触しても、折り重なるように増殖を続ける。これでは、臓器の形成も個体への成長も不可能である。生命は、細胞同士が接触した際に増殖をやめることで多細胞化した。他の細胞と争わない遺伝子を持つ進化した細胞は、最初は他の細胞から侮られ、侵略に晒されたりもした。しかし、「接触阻止」遺伝子のお陰で悲惨な争いに巻き込まれる機会は減り、この細胞は高い確率で子孫を残せるようになった。やがて、「接触阻止」遺伝子を持った細胞が他の生命体を凌駕した。すべての細胞が「接触阻止」遺伝子を持った細胞に置き換わったとき、生命は個体という小宇宙にグローバル化したのである。

「接触阻止」はまさに、遺伝子の憲法9条であった。世界がこの憲法の価値を共有するにはまだ時間がかかるかも知れない。しかし、「接触阻止」の遺伝子を獲得して進化した祖先のように、すべての国が憲法9条の恩恵を受けるとき、真に「核なき世界」が訪れるのではないかと思う。