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「暗い雨」

2025-01-15 06:16:14 | 小説

             「暗い雨」

暗い雨が降る日に彼女は不安を抱いていて何時ものように急にふと僕に会いたくなり、しかし、今は忙しいかなと思って自室でずっと一人で心を苦しんでいた。

彼女は大学を中退してからずっと何をするでもなく、ただずっと家で過ごしてテーブルワインを飲みながら自室のベッドでずっと横になり漫画を読んだり音楽を聞いたりしていた。

暗い雨を見ると彼女は暗闇にいる気がする。この先もずっと暗闇で生きていく気がする。そんな時、彼女は僕に連絡をする。返事が遅くなったら睡眠導入剤を飲んで寝る事にしている。

夕方に彼女はシャワーを浴びて彼女はその後にテーブルワインを一本飲み干してから飯をようやく食べて酔いが醒めてしまう時間帯に彼女は治療薬を飲んで、そして、彼女は頑丈なシェルターのような自室に戻り僕の返信を待っている。

それでも、暗い雨が降らない時は外出もするし、外出をすると暗闇から心の色が変化して気分が大分、晴れる。それでも、彼女は僕がいない間は心が暗闇にいる時が多かった。

 

暗い闇に降る暗闇の雨に打たれながら僕と彼女は手を握って歩いていた。

離れないように壊れて終わってしまわないように手を繋いでいた。

時間が終わるまでは。僕と彼女が永遠に会えなくなるまでは。

 

僕は今までの彼女の恋人で一番長く付き合い、結婚を意識するようになった最初の恋人だ。

彼女も僕と出会う前から恋愛はしているし、純情という訳でもなさそうな感じだけど軽い女ではない。最初は告白されて付き合い、その次は彼女から告白して恋愛をして、その次はどちらともなく付き合って楽しい思い出もある事はある。

友人とも色々、一緒に旅行に行ったり、アトラクション施設に行く事もあったし、食事に行ったりする事もあり楽しかったと思う時もあったけど、その頃から少しずつ純粋に友人との交友や恋人といる時間が暗くなりつつあり、いずれ楽しい時間を過ごせないような気がしていて、そう感じ始めてから、少しずつ彼女は自分の中でもう終わったと感じ始めていた。

そして、彼女はある日、急に投げやりになりデートをしても、友人と遊んでも楽しいと思えない日々を生きていた。彼女の心が暗くなりつつあり、そして、無理して明るそうに生きていたけど限界で、投げやりになった一年後、彼女は急に自室で引きこもるようになっていた。

急に彼女は太陽の光が届く事のない暗闇で深海のような場所で生きて行く事になった。昔の友人とかとも一切連絡を絶ち、一人になってしまい更に彼女は精神的に不安定になった。僕はそんな彼女を救える訳ではないけど、ただ一緒にいて生きて行く事だけは出来る。

彼女の暗闇は一人で過ごす時が一番、暗い。しかし、彼女は僕といる時は少しだけ暗さが減る。しかし、今は休む時で彼女が僕と出会ってから少しずつ立ち直り始めている気がしている。だから、僕は彼女が何年後、再起してまた社会生活が出来ると思っていた。

今はただ、彼女が求めたらするし、求めない時はただ普通に何もしない。僕は何時か別れが訪れるかもしれないと思うから今は彼女が求める事をしている。

僕は何時も彼女の傍にいたいけど、カウンセラーとして他の人達の話を聞いてから僕は彼女の家に行く。疲れているけど、でも、僕は何時もその疲れがあっても彼女といるとストレスが緩和されていく。僕の前の恋人の知り合いから買った国産の黒色のSUVで彼女の家まで行く。もう違う車に買い替えようかなとは思っているけど、車自体は気に入っていたのでしばらくはこの車で行きたい場所に行く。未だにその事は彼女には言っていないけど、言わなくても良い事だろうと思っている。また車を走らせて完全燃焼したら買い替える事を決めていた。彼女が好きなオフホワイトカラーの乗用車を。

今日も僕は今の職場から車で二十分ぐらいの彼女の住む家まで交通規則は全て守って走っている。僕は彼女と出会う前は貸マンションの五階の部屋で住んでいたけど、約三年付き合った前の女と別れてから実家に引っ越して、その後は僕の実家で勝手気ままに生きていた。

実家暮らしを再開して一年半後に彼女と出会い、付き合い始めてから、しばらく経ち基本は実家で生活して彼女が求めてきたら実家には戻らないという暮らしをしていた。

もう彼女の両親とは家族ぐるみの付き合いをしていて食事やシャワーを浴びさせてくれる。彼女の自室に行き、ただ彼女の不安や苦しみを緩和していく事を願って一緒にいる。そして、最近、彼女だけではなく僕も彼女と結婚したいと思っている。

彼女はとても繊細過ぎて脆い。でも、彼女は何時か今よりは強くなれると思っている。

僕は彼女を見ると嬉しくなるから別れたくないけど、でも、もし僕が彼女以外の女を愛する事もあり得るからそうなったら悪いけど僕は彼女と別れたいと思う。

でも、彼女も僕ではない男を好きになり、彼女がその男と一緒になる為に僕と別れるのかは別として恋人としての別れは充分考えられる気がする。

 

もう僕と彼女は出会ってから五年が経つ。

出会った頃の彼女はかなり心を閉ざしていたからカウンセリングを受ける時間が長くなると思って取り敢えず、表面的な事だけを聞き、何時かなるべく彼女の気が晴れるような時間を過ごせるようになって欲しいと思っていた。

この頃、僕は最初から彼女と付き合いたいとは思っていなくて、あくまで彼女を特に意識する事なく、でも、少しでも彼女が暗闇から脱けだして欲しいなという事だけは考えていた。

あくまでもカウンセラーとして少しでも彼女が前向きになれたら良いなとは思っていた。彼女がカウンセリングを受ける内に僕の事を気に入ってくれたようで、僕はその頃に初めて私生活でも一緒に話をしたいと思うように感情が変化していた。それから半年後ぐらいに二人共、もっと会いたくなってしまい、彼女はクリニックでのカウンセリングを止めて後は僕と私生活で話をするようになっていった。彼女が少しだけ心を開いてくれた事が嬉しいし、それがきっかけで僕も変わっていたから久しぶりに大切な人が現れたと思うようになり、僕は彼女と付き合えるのが例え短い間だとしても一緒にいたいと思っていた。

最初は喫茶店で何気ない話をしていて、次第に一緒に食事をたまにする間柄に発展して最初に会った時から一年後に本格的に付き合い始めていた。

彼女は暗い雨を見ると心が暗闇に陥ると会う度に話してくれるようになり、テーブルワインを飲みながら一日、過ごす日々が嫌だと思っていて、出来ればまた社会生活を送りたいと相談してくれた。僕は取り敢えず時間が経てば充分、何とかなるという事を言った。少しずつ時を共にして僕は彼女の暗闇の暗さが減っていたから、何時かは立ち直る事が可能だと思っていた。どうして、彼女がこうなったのか分からないけど、その理由は敢えて詳しく聞かなかった。それを彼女は理解していて僕といる時間が長く続きそうだなという事で僕と付き合っている事を黙っていたかったけど、敢えて彼女は自分の家族に僕を紹介していた。

付き合っているという話は彼女の家族は聞いていなかったみたいで何とも言えない空気になっていたけど、でも、彼女自身が前向きに少しずつなっているのを知っていたので最終的に受け入れた。彼女の闇は僕が思っているよりも暗い、しかし、一日、ずっと暗闇にいるのではなく、普通な所もある。それでも、その頃の彼女は僕といる時以外はかなり苦しんでいた。僕といる時は普通に話をする事だけで充分、心の苦しさが緩和しているようだ。

そして、僕達が一緒にいても誰も反対はしなかったし、彼女の家族は僕と彼女が付き合って二年が経つと僕の家族と一緒にたまに外食を共にして色々、話すようになっていって、それからしばらく経ち、僕と彼女の家族も互いに半分、家族のようになっていた。

僕は彼女の家で一緒にいる時は彼女と殆ど一緒にいる。結婚の事も期待されているようで、いずれは彼女の家族も僕の家族も僕と彼女が結婚する事を望まれていた。

しかし、僕は彼女が社会生活を送れるぐらい心が回復した時に結婚したいと思っている。

その事を僕の家族に言って彼女の家族にも彼女がいない時にそれが彼女の為だという内容の言葉を伝えた。彼女の家族も僕の家族も賛成でしばらくは婚約者という形で折り合った。

彼女は敢えて結婚の事ははっきりと言わず、ただ僕が仕事を終えて職場から彼女の家に帰ってくる前にシャワーや食事など必要な事を済ましてから彼女の自室で僕を待っていた。

僕は寝ているけど彼女はスマホをずっと見ていて僕が目覚めると彼女は寝ている。

この頃、僕は僕の家族に会いに行く時になるべく彼女と一緒に行くようにしていた。彼女は疲れているけど、暗い雨が降らない日にはなるべく外に行こうと考えるようになっていた。

僕の家族も彼女は特別で大事な僕の婚約者だと思っている。だから、面倒な事を避ける僕の家族が時間を割いてまで彼女と少しだけ一緒に話をする。

その状況を見て、僕は驚いていた。僕の家族も彼女を受け入れていた。自分の家族のように。

彼女がバイトを二年間、続いた日に本当に僕は彼女にプロポーズをしようと思っていた。

 

僕達が出会ってから八年ぐらい経ち、今、彼女はバイトの仕事をするようになっていた。

彼女はまた再び、髪を明るい色の茶色に染めて、衣服もスーツも自分の気に入った物を買いそろえて、この先、もう暗い雨が降っていても心が暗闇にならなければ良いなと思った。

とても、明るい色は眩しすぎるから暗闇で良いと思っていた彼女はもういない。

今の彼女はこの先、もう大学を中退した頃のように投げやりにならないで生きて行こうと思った。僕は彼女が暗く沈んでいく時間があっても話だけは聞く事に決めていた。

結婚式は挙げずに僕の家族と彼女の家族で少し格式の高い中華料理店で祝う事にしていた。

僕達も異議なしで彼女は多分、昔の姿になった気が僕はしていたけど、それでもまだ彼女は無理をしているけど、でも、出来れば彼女が一人になっても生きて行く事を願い、敢えて直ぐに僕は彼女と結婚せず、ずっと彼女の心が少しでも打たれ強くなって欲しいと思いプロポーズの条件は二年間、彼女がバイトを続けられる事を条件とした。

その事を彼女は家族と僕がいない時に話し合ったようでついに再起をかける事にした。

彼女は通信講座で医療事務の講座を学びながら、まずは色々バイトをして生活のリズムを直して、そして、中規模のクリニックで三か月前から何とか医療事務のバイトをしていて大分、精神的に安定してきたようだ。彼女の暗闇はもう心の一部分の色になり今は心の殆どの色合いは割と明るい色になった。三日後に彼女が丁度、再起後の最初のバイトをしてから今の医療事務のバイトも含めてもう二年が経つから、そして、彼女の指輪のサイズは分かっているから今度はもっと高い指輪を買おうかなと思っていた。

本当の暗闇を知っているはずだった彼女はもしかしたら自分の暗闇が本当の暗闇ではなかったのだろうと過去を振り返ってそう思うようになっていた。

そして、僕は今日もカウンセラーの仕事を終えて彼女の家に車で交通規則を全て守って走っている。プロポーズの当日に指輪を渡せるように明日、僕一人で僕達の結婚指輪を買いに行く事にした。彼女は今頃、疲れて寝ているだろうと思った。

体力よりも精神的に疲れやすい彼女も何とか生きていけるだろうと思ったからもう大丈夫だと思った。彼女はウェディングドレスよりも普通のスーツの方が気に入っているようで

僕は僕で普通のスーツの方がめでたい時に着る衣装よりも気が楽でいいなと思っていた。

今夜は雨が降るけど彼女は疲れて寝ているだろうから暗闇を見る事がない気がしていた。

彼女の暗闇は本当の闇ではなかったと思えるぐらい回復してくれて、今まで僕が知らなかった彼女の新しい一面を知り、より彼女を愛せるようになっていた。

彼女が医療事務のバイトをしてから約二か月後のデートの時に車をオフホワイトのSUVに買い替えて欲しいと言ってきたので僕と彼女が休みの日に黒いSUVを中古車販売店に売り払い、そして、国産の同じメーカーの同じ車種のオフホワイト色のSUVを新しく買った。

僕はこの先、彼女と有限だけど長い時間を過ごしたい。そう思っていた。

僕は彼女が好きだと改めて思っていた。だから、結婚をする。それでいい。結婚する当日、僕達が休みの日に朝と昼は二人で、そして、夕方頃に互いの家族と過ごす。それでいいと思っていた。僕達はこの先も長くいる事が出来ると思いたいから。

そして、後五分で彼女の家に着く。今改めて昔の僕は結婚しなくてもいいかなと思っていたけど彼女と出会い初めて結婚しようと思った。そして、後少しで本当に僕達は結婚する。

 

今、僕は真昼の太陽の下で彼女の手を握って歩いている。

二人は明るい世界で生きながら何時か来る別れを考えながら手を繋いでいた。

今、何よりもずっと大切な瞬間を思う存分、共有しながら。

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