温存していた沢

自分にとっては、今日が今シーズン最終釣行となる。
数日前からどこにいこうか色々思案していたのだが、やはりホームリバーでしめるのが自分らしいかなと思い秋川へ。

朝の気温は、１０℃。水も冷たい。
そこら中に太公望が踏み入った痕跡があり、それに反比例するように魚の反応は極端に薄い。


本流筋はあきらめ、枝沢へ。
解禁日以来入っていない、温存していたあの沢へ行ってみた。


ここは小さな落ち込みの連続で、ルアーを引ける距離がほとんど無い。
ワンアクション、ツーアクションでバイトさせる必要がある。
まずはリッジで。

Ｋさんにいただいたリッジは、今シーズンでぼろぼろになってしまった。
塗装が剥げても、渓魚には大人気である。


ざーざーと流れる水に負けないように、Ｄ－ダイレクトを結んでみた。
このルアーをこんな所で使うのは私ぐらいのものか。
ルアーの自重を利用して振り込み、着水と同時にチョンチョン…グッ！


チョンチョン…、グッ！

可愛いヤマメやイワナが戯れに付き合ってくれた。
ラスト釣行は感謝の釣りである。
魚の大小を越えて、一つ一つの出会いを大切にしたい。


しばらく登り、解禁日に釣れたあの神々しいヤマメのポイントまでやって来た。
台風の影響か、深くえぐられ青々とした水を湛えた魅力的な淵になっていた。
期待感を十分にふくらませて、Ｄ－ダイレクトを操る。
が、数投しても異常なし。

ルアーをバフェットに代えての一投目。
ピックアップ寸前に、右から左へ大きな黒い影がすーっと一直線に動いた。
まるでルアーを無視するかのような動きだった。
「そんなもんには騙されないよ。」と言っているかのような動きだった。

それっきり何もなかった。
あれは、あのヤマメだったのだろうか。
その答えを見つけに、来シーズンもきっとまたこの沢に立つのだろう。