黒い砲弾

秋雨前線も一休み。
よく降ったので、川はほどよく水量を増していた。
しかし、入渓した沢にはつい最近のものと見られる真新しい足跡があった。雨は昨日からやんでいる。誰かしら入っても不思議ではない。

魚の反応は悪かった。
ひょっとしたら、入渓者は餌師ではなくアングラーかもしれない。
そう考えると、自分の立ち位置に足跡が残っているような気がする。
狭い沢だ。アングラーなら、ほぼ同じ位置に立つにちがいない。
あきらめムードが漂ってくる。
それでも竿抜けをねらって、なんとか１尾。

きれいなヤマメだが、サイズは…。この後、５ｃｍのチビを追加。となりの沢に移動した。

気分を取り直して入渓。魚の反応はやや良い。しかし、サイズが上がらない。

もういっちょ。

小さい。

車に戻り、さらに上流へ移動。
４月に２５ｃｍのヤマメが出た場所へ行ってみる。
特徴的な場所なので、画像は載せられないが、小滝から落ちた流れが狭まった岩盤の間を流れ、１０ｍほどの細長い淵を形成している。淵の幅は1.5ｍ程度。
立ち位置は、淵尻から続く瀬が開いた左岸。
私は右利きなので、出来れば右岸に立ちたいのだが沢が狭くてできない。
１０回に一回しかきまらないバックキャストが偶然決まり、落ち込みにルアーを投げられた。
全神経を集中してリトリーブ＆トゥィッチング。何の反応も無いまま、ルアーは淵を通り抜け、浅瀬に出てきた。
「だめか…」と思った瞬間、全く予想しない方向から黒い砲弾のような２つの影がダーッとルアーを追ってきた！
「あっ」と思ったのと同時にその砲弾は元の方向にすごい勢いで逃げていった…。
ルアーを見切られたのではない。黒い２つの砲弾は、私に気付いたのだ。

雨、水量増加…ヤマメ達は落ち込みから流下するエサを待ち伏せているはず、という先入観がミスを招いた。
確実に尺を越えていた２つの黒い砲弾は、私の立つ浅瀬の反対側の岸際、小さなエゴに潜んでいた。
淵にしか目が向いていなかったため、手前右岸にあったエゴを見のがしていたのである。
視野が狭いっ！

一発勝負に完敗し、すっかり毒気を抜かれてしまった。
さて、巷は連休だが、これから出勤。明日も休日出勤。
あの黒い砲弾がちらついて仕事になりそうもない。