7月31日は、今月2回目の満月の夜。
ひと月に2回満月を迎えることは、結構珍しいことのようで、2回目の満月は「ブルームーン」と呼ぶらしい。
その日の月も煌々と闇を照らし、そして私とshinichiさんは南アルプスの玄関口にいた。
月夜は美しいが、車の窓を開けて寝ていると、ヒトの血を求めていろんな虫が入ってくる。
shinichiさんは、案の定刺されてしまって、寝苦しい夜となってしまった。
オジサンたちの短い夏が始まった。
その第1弾は、南アルプス源流釣行。
テントを担いで、長い道を歩いていく。
仕事でなまり切った体にはそれなりに堪えるアプローチだが、shinichiさんは楽勝ムードで足取りが軽い。普段鍛えている人にはかなわん。
真夏の太陽はぐんぐん気温を上昇させ、それに伴い体温も急上昇する。
噴き出す汗に、日焼け止めも流れていく。
それでも、南アルプスの雄大な眺めに眼をやれば、疲労が蓄積するスピードも心なしか遅くなる気がする。
美しい河畔林に囲まれたトレイルが見えてくると、目指すテント場は目と鼻の先だ。
おー、やっと着いたぞ。
2年ぶりの懐かしい風景だ。
小屋のおばちゃんにあいさつし幕営料を支払うと、「クマが出るんで、気をつけて。昨日は3頭も出たよ。」
とニコニコしながら教えてくれた。
野生のクマ。出会いたいけど、出会いたくない。
さっそくテントを張って、釣りの支度をしていると、shinichiさんはしばらく昼寝をするという。
夜中に運転をして、仮眠中も虫に悩まされ、眠くない方がおかしいよね。
それに、shinichiさんは、今シーズン3回目の南アルプス。
久しぶりでがっついている私と違って余裕があるのだ。
まずは、単独でテント場付近を偵察。
それなりに先行者も入っているので厳しいことも覚悟していたが、そんな不安を吹き飛ばす第一投目でのヒット!
かなり大物だったが、あいにくバラシ。
でも、そのすぐ後にかかったイワナは、南アルプスらしい色合いと顔つきの25cm。
さっそくニューロッドの入魂が完了してほっとした。
今日は祭の予感がする。。。
いったんテントに戻ると、shinichiさんが起きてきた。
一緒に小屋でラーメンを食べる。
このラーメンの味も2年前と変わらない。
山でのラーメンは、なんでこんなにうまいのだろう。
エネルギー補給も完了し、今度はshinichiさんと二人で遡行を開始。
熊鈴をチリンチリンならし、周りをキョロキョロしながら、なかなかスリルのある釣りである。
原生の谷を流れる清冽な水に誘われるように、奥へ奥へと進んでいく。
先行者がいたというのに、そんなこと全く意に介さないかのように、イワナの反応はとても素直。
やっぱりこの時期、この時間帯がいいのかもしれないな。
お決まりの「1匹釣ったら交代ルール」なのだが、先行しようが、後から追っていこうが、関係なく釣れてしまう。おまけに型揃い。
ここは天国か?
この日のクライマックスは、shinichiさんのヤマトイワナ。
釣り上げた時は、真っ黒な魚体に腹部の濃いオレンジがひときわ目立った。
太古のDNAを引き継ぐ完璧な野生。
文豪にして無類の釣り好きである開高健になぞらえて言うなら、ヤマトイワナはまさに「地球の分泌物」。
初日の釣りは、大満足で終了した。
テント場に戻って、ちょっと早いがビールで乾杯。つまみも充実(笑)
寝不足と心地よい疲れの相乗効果で、ビール1本でほろ酔い。
明るいうちに始まった宴は、明るいうちに終了。
どちらからということもなく、「もう寝ますか…」
早々にテントにもぐりこみ、バタンキューとなったわけで。
shinichiさんによれば、この日の月も素晴らしかったらしい。
月光は澄んだアルプスの大気を通り抜け、尋常でない明るさで谷底を照らした。
それはまるで昼間のように明るかったのだとか。
私は、テントの中でうつらうつらしながら、「なかなか暗くならないなぁ。。。」などと思っていたが、それは月の光のためだった。
***********
第2日目
明け方は10度まで気温が下がり、薄手のフリースを着てちょうどよいくらいだった。
周囲のテントは暗いうちからごそごそ支度をはじめ、山屋も釣り師もそれぞれのロマンを求めて散っていったが、こちらは明るくなってからテントを這い出す。
shinichiさんと本日の作戦会議をしながら、スープとパンで簡単な朝食を済ませた。
帰りの時間を逆算してから、さぁ、今日もいっちょ釣ってやりますか!
遙か3000mの稜線は朝日に輝いているが、谷底はまだ暗い。
水温が上がらないうちはダメかなと思っていたら、一発でゴンッ!
底へ底へと引っ張りながら流心を力強く下っていく手ごたえで、これはでかいと確信する。
果たしてランディングした魚体は、なんとヤマトイワナ。
ジャスト30cm!
太陽の光が谷まで届かない朝は、写真を撮るにも光量が足りなくて、この素晴らしく深い色合いが思うように撮れないのが悔しい。
様々なアングルから写真に収め、再び流れに返すと悠々と流心に向かって泳いで行った。
南アルプスは、その水温の低さからイワナの成長スピードがとても遅いという。
尺クラスになるには、およそ8年の歳月がかかるということだ。
一年の半分以上は雪の下で過ごすイワナたちの生命力に敬意を払わずにはいられないのである。
ここでタックルのインプレッションを少々。
先日購入したばかりのロッド。テンリュウ・レイズ インテグラル。
買うときにULかLかで迷ったが、結果として、Lで大正解。
源流の急で複雑な流れの中をしっかりとシンキングミノーにアクションを加えるにはもってこいのロッドである。
また、ただ硬いだけでなく、絶妙なティップの柔軟性が、バイトをはじかずにきっちり乗ってくれる(ような気がする)。
4本継ぎだが、スムーズなベントカーブで、尺ヤマトとのやりとりも不安なく楽しめた。
さすがテンリュウ。日本製バンザイ。
ミノーは、shinichiさんのハンドメイドミノーと、市販品としてはジップベイツ・リッジフラット45sをパイロットルアーにした。
shinichiさんのミノーの威力はもう言うまでもない。常によい魚をつれてきてくれる。
リッジフラット45sは初めて使ってみたが、とても安定しているし、自分の釣り方との相性がよいのかもしれない。
同じ釣り方をしていても、例えばD-インサイトやスピアヘッドリュウキでは、底石に引っかかったり、ラインがベリーのフックに絡んだりしてしまうのだが、リッジフラットはそういうことがない。
ライントラブルもなく、いい感じで底すれすれに引くことができ、縦のシェイクとステイでがつんとバイトしてくる。
今回の尺ヤマトは、リッジフラットで出た。
さてさて、朝一のクライマックスで満ち足りてしまったが、まだ時間はある。
このあとも、shinichiさんと交代しながら、良型とのやり取りを楽しんだ。
これで終わればすべては完璧だったのだが、思わぬところでオチがつくものだ。
退渓中にロッドティップを紛失するという大失態をやらかした。
今来たところを何度か往復し、注意深く目を凝らしてみたが発見できず。
shinichiさんも探してくれたがダメだった。
全ては自分の不注意によるものだが、南アルプスの山と川の神様にロッドを献上したみたいな気分である。
普段だったら、買ったばかりのロッドのティップを失くしたなんて、天地がひっくり返るくらいの衝撃だが、この2日間があまりに楽しく充実してしまったため、「まぁ、しょうがねぇか…」程度のお気楽さで受け止めてしまう。
脳ミソが幸せのモルヒネで完全にいかれちまった。
さぁ、楽しかった思い出を反芻しながら、長い道のりを帰ろう。
そして、ロッドティップを探すという大義名分で、またここに来るぞ。
ひと月に2回満月を迎えることは、結構珍しいことのようで、2回目の満月は「ブルームーン」と呼ぶらしい。
その日の月も煌々と闇を照らし、そして私とshinichiさんは南アルプスの玄関口にいた。
月夜は美しいが、車の窓を開けて寝ていると、ヒトの血を求めていろんな虫が入ってくる。
shinichiさんは、案の定刺されてしまって、寝苦しい夜となってしまった。
オジサンたちの短い夏が始まった。
その第1弾は、南アルプス源流釣行。
テントを担いで、長い道を歩いていく。
仕事でなまり切った体にはそれなりに堪えるアプローチだが、shinichiさんは楽勝ムードで足取りが軽い。普段鍛えている人にはかなわん。
真夏の太陽はぐんぐん気温を上昇させ、それに伴い体温も急上昇する。
噴き出す汗に、日焼け止めも流れていく。
それでも、南アルプスの雄大な眺めに眼をやれば、疲労が蓄積するスピードも心なしか遅くなる気がする。
美しい河畔林に囲まれたトレイルが見えてくると、目指すテント場は目と鼻の先だ。
おー、やっと着いたぞ。
2年ぶりの懐かしい風景だ。
小屋のおばちゃんにあいさつし幕営料を支払うと、「クマが出るんで、気をつけて。昨日は3頭も出たよ。」
とニコニコしながら教えてくれた。
野生のクマ。出会いたいけど、出会いたくない。
さっそくテントを張って、釣りの支度をしていると、shinichiさんはしばらく昼寝をするという。
夜中に運転をして、仮眠中も虫に悩まされ、眠くない方がおかしいよね。
それに、shinichiさんは、今シーズン3回目の南アルプス。
久しぶりでがっついている私と違って余裕があるのだ。
まずは、単独でテント場付近を偵察。
それなりに先行者も入っているので厳しいことも覚悟していたが、そんな不安を吹き飛ばす第一投目でのヒット!
かなり大物だったが、あいにくバラシ。
でも、そのすぐ後にかかったイワナは、南アルプスらしい色合いと顔つきの25cm。
さっそくニューロッドの入魂が完了してほっとした。
今日は祭の予感がする。。。
いったんテントに戻ると、shinichiさんが起きてきた。
一緒に小屋でラーメンを食べる。
このラーメンの味も2年前と変わらない。
山でのラーメンは、なんでこんなにうまいのだろう。
エネルギー補給も完了し、今度はshinichiさんと二人で遡行を開始。
熊鈴をチリンチリンならし、周りをキョロキョロしながら、なかなかスリルのある釣りである。
原生の谷を流れる清冽な水に誘われるように、奥へ奥へと進んでいく。
先行者がいたというのに、そんなこと全く意に介さないかのように、イワナの反応はとても素直。
やっぱりこの時期、この時間帯がいいのかもしれないな。
お決まりの「1匹釣ったら交代ルール」なのだが、先行しようが、後から追っていこうが、関係なく釣れてしまう。おまけに型揃い。
ここは天国か?
この日のクライマックスは、shinichiさんのヤマトイワナ。
釣り上げた時は、真っ黒な魚体に腹部の濃いオレンジがひときわ目立った。
太古のDNAを引き継ぐ完璧な野生。
文豪にして無類の釣り好きである開高健になぞらえて言うなら、ヤマトイワナはまさに「地球の分泌物」。
初日の釣りは、大満足で終了した。
テント場に戻って、ちょっと早いがビールで乾杯。つまみも充実(笑)
寝不足と心地よい疲れの相乗効果で、ビール1本でほろ酔い。
明るいうちに始まった宴は、明るいうちに終了。
どちらからということもなく、「もう寝ますか…」
早々にテントにもぐりこみ、バタンキューとなったわけで。
shinichiさんによれば、この日の月も素晴らしかったらしい。
月光は澄んだアルプスの大気を通り抜け、尋常でない明るさで谷底を照らした。
それはまるで昼間のように明るかったのだとか。
私は、テントの中でうつらうつらしながら、「なかなか暗くならないなぁ。。。」などと思っていたが、それは月の光のためだった。
***********
第2日目
明け方は10度まで気温が下がり、薄手のフリースを着てちょうどよいくらいだった。
周囲のテントは暗いうちからごそごそ支度をはじめ、山屋も釣り師もそれぞれのロマンを求めて散っていったが、こちらは明るくなってからテントを這い出す。
shinichiさんと本日の作戦会議をしながら、スープとパンで簡単な朝食を済ませた。
帰りの時間を逆算してから、さぁ、今日もいっちょ釣ってやりますか!
遙か3000mの稜線は朝日に輝いているが、谷底はまだ暗い。
水温が上がらないうちはダメかなと思っていたら、一発でゴンッ!
底へ底へと引っ張りながら流心を力強く下っていく手ごたえで、これはでかいと確信する。
果たしてランディングした魚体は、なんとヤマトイワナ。
ジャスト30cm!
太陽の光が谷まで届かない朝は、写真を撮るにも光量が足りなくて、この素晴らしく深い色合いが思うように撮れないのが悔しい。
様々なアングルから写真に収め、再び流れに返すと悠々と流心に向かって泳いで行った。
南アルプスは、その水温の低さからイワナの成長スピードがとても遅いという。
尺クラスになるには、およそ8年の歳月がかかるということだ。
一年の半分以上は雪の下で過ごすイワナたちの生命力に敬意を払わずにはいられないのである。
ここでタックルのインプレッションを少々。
先日購入したばかりのロッド。テンリュウ・レイズ インテグラル。
買うときにULかLかで迷ったが、結果として、Lで大正解。
源流の急で複雑な流れの中をしっかりとシンキングミノーにアクションを加えるにはもってこいのロッドである。
また、ただ硬いだけでなく、絶妙なティップの柔軟性が、バイトをはじかずにきっちり乗ってくれる(ような気がする)。
4本継ぎだが、スムーズなベントカーブで、尺ヤマトとのやりとりも不安なく楽しめた。
さすがテンリュウ。日本製バンザイ。
ミノーは、shinichiさんのハンドメイドミノーと、市販品としてはジップベイツ・リッジフラット45sをパイロットルアーにした。
shinichiさんのミノーの威力はもう言うまでもない。常によい魚をつれてきてくれる。
リッジフラット45sは初めて使ってみたが、とても安定しているし、自分の釣り方との相性がよいのかもしれない。
同じ釣り方をしていても、例えばD-インサイトやスピアヘッドリュウキでは、底石に引っかかったり、ラインがベリーのフックに絡んだりしてしまうのだが、リッジフラットはそういうことがない。
ライントラブルもなく、いい感じで底すれすれに引くことができ、縦のシェイクとステイでがつんとバイトしてくる。
今回の尺ヤマトは、リッジフラットで出た。
さてさて、朝一のクライマックスで満ち足りてしまったが、まだ時間はある。
このあとも、shinichiさんと交代しながら、良型とのやり取りを楽しんだ。
これで終わればすべては完璧だったのだが、思わぬところでオチがつくものだ。
退渓中にロッドティップを紛失するという大失態をやらかした。
今来たところを何度か往復し、注意深く目を凝らしてみたが発見できず。
shinichiさんも探してくれたがダメだった。
全ては自分の不注意によるものだが、南アルプスの山と川の神様にロッドを献上したみたいな気分である。
普段だったら、買ったばかりのロッドのティップを失くしたなんて、天地がひっくり返るくらいの衝撃だが、この2日間があまりに楽しく充実してしまったため、「まぁ、しょうがねぇか…」程度のお気楽さで受け止めてしまう。
脳ミソが幸せのモルヒネで完全にいかれちまった。
さぁ、楽しかった思い出を反芻しながら、長い道のりを帰ろう。
そして、ロッドティップを探すという大義名分で、またここに来るぞ。
Once in a Blue Moonは、『極々希に』という意味だそうで、
今回、希有な体験を導いてくれたのかもしれませんね ♪
でも、ロッドティップまで持ってかれたのは、アイタタタ…(汗)
こんばんは!
ありがとうございます!
確かに今回はあらゆる意味でレアな釣行でした。
ロッドティップは、パーツ注文だけでなく、調整費もかかるようです。
でも、なんで落としたんだろう???
良い釣りしてますね~。羨ましい。
ロッドティップは折れたときと同じと考えればいかがでしょうか?僕の友人の中にはロッド全体を現場に忘れてきた人がいますよ。彼もそうでしたが、たしかに大物釣って幸福感たっぷりだったんですよ。脳内にアドレナリンやらエンドロフィンが出ていたんでしょうね。
滅多に行けないところなので、結果が伴うと嬉しさ倍増です。
ロッドティップを落とすなんて、初めてのことでした。
落とす直前まで、あることを確認していたのに。また、落とした場所はだいたい目星はついていたのに、見つからないのも不思議です。
ロッド全体を落としたほうが、見つけやすかったかな(笑)