パピとママ映画のblog

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砂漠でサーモン・フィッシング  ★★★

2013年01月23日 | さ行の映画
英国でベストセラーになったポール・トーデーの小説「イエメンで鮭釣り」を、「スラムドッグ$ミリオネア」のサイモン・ビューフォイが脚色し、「ショコラ」のラッセ・ハルストレムが監督する、前代未聞のプロジェクトに挑んだ男の成長物語。

主演は「人生はビギナーズ」のユアン・マクレガー。彼を支えるキャリアウーマン役にエミリー・ブラント。
物語は、主人公は、ユアン・マクレガー扮するアルフレッド・ジョーンズ博士という英国人水産学者である。彼は砂漠の国イエメンに、鮭を泳がせて釣りをするという実にメチャクチャなプロジェクトを頼まれ呆れ果てる。
依頼人はイエメンの大富豪のシャイフ(アマール・ワケド)だ。すでに英国外務省の支持も得ているという。

ジョーンズ博士は、窓口である投資コンサルタントのハリエット(エミリー・ブラント)に「まったく実行不可能である」という返信メールを送る。
実行不可能宣言したジョーンズ博士なのだが、上司に命じられるままにハリエットと会う。水のない砂漠に魚あんど無理だという、子供でも解る事実を伝えるジョーンズ博士だが、科学者としてのプライドと、給料が倍になると言われ、家のローンのことなどを考えしぶしぶと引き受けることになる。

ジョーンズはハリエットと二人で大富豪シャイフと会うため、彼の暮らすスコットランドの城へと向かう。シャイフはお金で買えないものはないと、考える不遜な男と思っていたのだが、実は人間味あふれる一人の釣り人だった。
ジョーンズ自身も学問と釣りだけが趣味の、自称変わり者なのだ。二人は意気投合してしまう。
シャイフに会うことによって、この突拍子もない話に、ジョーンズは魅力とやる気を感じはじめていく。果たして砂漠でサーモン・フィッシングができるのだろうか?・・・。
タイトルだけ聞くと、なんじゃそりゃと思うかもしれない。「砂漠で鮭なんか釣れるわけないじゃん」と冷静に突っ込む人もいるでしょうね。でも実際に見てみると、それがなんと見事にそのとおりのお話なのである。

でもこの映画の監督が、「ギルバート・グレイプ」や「ショコラ」のラッセ・ハルストレムが映像化。脚本は「スラムドッグ$ミリオネア」のサイモン・ビューフォイという黄金コンビです。この制作陣の名を聞けば、なんとなく作風の想像がつくというもの
実際もそのとおりの作風で、のほほんとしていて、オフビートに可笑しくて、観ているうちにだんだん心のモヤモヤがほぐれていくのだ。
主役のユアンの演技もさることながら、イエメンの大富豪シャイフにアマール・ワケドが、個性的な顔もてのイケメン男性に惚れ惚れする。それに広報担当官のクリスティン・スコット・トーマスというベテラン女優が。

砂漠とは、アラビア半島南西部にある「イエメン共和国」を指すのだが、文字通りイエメンの砂漠で鮭釣りをしようとするお話なのだ。とはいえこれはイエメンの釣り好きな大富豪の思いつきから出た話ではない。いや最初はそう思っていたジョーンズも、両社を取り持つ投資コンサルタントのハリエットも、大富豪の鮭放流の夢を聞いている内にすっかりその気になるというのだ。前代未聞の国家的プロジェクトに狭路y句することになるのだ。
仕事の充実ぶりとは裏腹に、ジョーンズは妻との関係が破綻し、さらにハリエットにも不幸が襲い掛かる。戦地に出兵している恋人が行方不明となり、家に引きこもってしまう。彼はなんとか説得して現場復帰させるのだが、連日連夜、イエメンで鮭が暮らせる環境作りに取り掛かるジョーンズ。そこで、何だかハリエットといいムードになっていき、すべてが順調にいくようだった。
そんな時に、またしてもイエメン国民からのバッシングや、鮭の養殖方法の問題などのトラブルが降りかかる。
「プロジェクトは成功するのだろうか」「ジョーンズ博士とハリエットの二人は結ばれることになるのか」と先の展開が気になるが、ラブストーリーを強調しているだけでなく、監督は脚本に盛り込まれた様々な要素をバランス良く描き、政治風刺の部分も疎かにしていない。
つまり、イギリスの頭脳とアラブ資本が手を組む生々しい現実をちらつかせながら、「鮭釣り」の話を愛や友情という極めて人間的な物語へと転化させていくのもいい。その意味では、これは一種の寓話には違いないが、細部はリアリズムで裏打ちされているからとんでもないホラ話にはならない。
何かが新しいという映画ではまったくないが、人生のもっとも美しい瞬間は、バカバカしい夢を信じたところから始まるのだということを忘れかけている。このありえない夢のような話を、人間の信頼の絆の物語に仕立て直すのだから。最近ちょっとお疲れ気味の方には、是非お勧めの映画ですよ。
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