パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

東京家族 ★★★

2013年01月28日 | た行の映画
小津安二郎の名作を蘇えらせた、山田洋次が紡ぐ現代の家族物語。
あらすじ:2012年5月、東京で暮らす3人の子供に会うため、瀬戸内海の小島から周吉と、とみこ夫婦が上京して来る。子供たちは歓迎するが、長男と長女は仕事や地域の活動に追われ、二男は説教くさい父親を敬遠し、結果的に両親をおろそかにしてしまう。しかし、2人が帰郷を決めたやさきに、母とみこが倒れる。

<感想>山田洋次監督が小津安二郎監督の「東京物語」(53)をモチーフに制作した、2012年の家族のドラマ。田舎から上京してきた親と、多忙な都会生活を送る子供たちとの隔たりや、結びつきを、日常的な風景を通して丁寧に映し出している。
ストーリーのみならず、固定カメラや正座目線のロー・ポジションなど、小津作品から受け継いだ撮影技法や、エッセンスが随所に散りばめられています。

クランクイン目前に東日本大震災が起きたため、監督は制作の延期を決断。そこで、二男の昌次と紀子が震災のボランティアで出会ったなど、脚本に震災関連のエピソードを追加したそうです。
また「東京物語」では戦死していた二男を存命にしたりと家族構成も変更した。疎ましく思いつつも、離れられない家族の絆という普遍的なテーマを、戦後復興後の50年代と震災後の問題を抱える現代。社会背景は変われど家族の姿は変わらないという、社会の相違を描ききっている。
本作のオリジナル部分は、俳優もゴージャスで楽しめるのだが、原作を踏襲した箇所がおとなしいせいでやたら長いのだ。郊外で開業医を営む幸一に、西村雅彦が、その妻に夏川結衣が家庭的で、2人の息子がいる。一応両親を歓迎するも、狭い自宅に快く泊めるのだが、せっかく来た両親を横浜見物に連れて行こうとするも、出掛けに急患の連絡が入り、親にはすまないと思いながらも、往診にでかけてゆく長男。落ち着かない長男の家。

長女は美容院を経営して、仕切りたがりの性格。夫を尻に敷き、その夫は理屈っぽい義父の周吉が苦手だ。自分のところへ両親が泊りに来ても、かまってやることが出来ないと、幸一とホテル代を折半して高級ホテルに宿泊させるのだ。
だが、両親は予定を変更して、長女の滋子の家へと。その夜、自宅で商店街の会合に出かける滋子は困り果て、寝床も世話をせずに親を追い出すのである。
利己的な長女役には中島朋子が、その夫に林家正蔵。
そして舞台美術の仕事をしている二男の昌次はお気楽で頼りなく、恋人の紀子は気が利く正直者。長女の滋子に頼まれて、両親を東京の名所案内をするのだが、仕事や将来について口うるさい父親が、相変わらず疎ましく、冷たい態度をとる二男。翌日、長女の家を追い出されて一人で泊まりに来た母親に、紀子を紹介する。彼女との結婚を考えていることを話て、母を喜ばせるのだが、・・・。
この監督は「家族で喧嘩」が持ち味なんだろう。長女と二男の形見分け問題のいさかいを、長男は「母さんが喜んでいるぞ」と、久しぶりに見る兄弟喧嘩のシーンでも、派手な喧嘩でもなくすぐに終わってしまう。もっとやらせておけばいいのに、なんてそういう洒落っけがまったくない建前映画である。
二男の妻夫木聡の恋人役、蒼井優が登場して、やっと空気の流れが良くなり、自然体の彼女のキャラが、清涼剤のような効果をもたらし、そんな娘を恋人にした妻夫木までが好青年に見えてくる。母親役の吉行和子も、蒼井優が現れた瞬間から、それまでの窮屈そうな演技から解放されて、普通の母親顔になるのもいい。

それにしても、やっぱり「東京物語」と無意識のうちに比較してしまい、特に前半はキャスティングからかして辛かった。それでも妻夫木と蒼井優のカップルに魅せられ清々しい思いがしてよかったと思う。
しかし、山田監督からみれば、我々は不真面目な人間なのだろうか。「東京物語」という古典的作品を見た昔の感動は、なんだったのだろう。再映画化の効用なのか、引き比べるのはおこがましいが、時代とともに自分の感性も衰えたのかもしれない。
2013年劇場鑑賞作品・・・11 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ