「マレフィセント」「ネオン・デーモン」のエル・ファニングがわずか18歳で『フランケンシュタイン』を書き上げた女流作家メアリー・シェリーを演じる伝記映画。19世紀のイギリスで、なぜ若い女性が恐ろしい“怪物”の物語を書くことが出来たのか、その傑作誕生に秘められた彼女の波乱の人生を、差別や偏見に立ち向かった一人の女性の物語として描き出す。共演はダグラス・ブース、ベル・パウリー、トム・スターリッジ。監督は「少女は自転車にのって」の女性監督ハイファ・アル=マンスール。
あらすじ:19世紀、イギリス。高名な思想家で小説家のウィリアム・ゴドウィンを父に持ち、自身も小説家を夢見るメアリー。父の再婚相手の連れ子クレアとは本当の姉妹のように仲良かったが、継母とは折り合いが悪く、見かねた父によって友人の家へと預けられる。メアリーはそこで、異端の天才詩人と噂されるパーシー・シェリーと出会う。互いの才能に強く惹かれ合った2人は、たちまち激しい恋に落ちるのだったが…。
<感想>ここでいう「メアリー」とは、19世紀の英国の作家メアリー・シェリーのこと。著名な詩人の妻と言うよりも、あの怪奇小説の古典「フランケンシュタイン」の生みの親と言った方が通りがいいのかもしれない。
それに、作品は少女の成長物語でもあるし、家族の影から外の世界へと踏み出してゆく女の子の物語でもあると思う。彼女の父親は偉大な作家で、彼女の母親はフェミニズムの先駆者。メアリーはそんな偉大な両親の陰に隠れて生きていて、怪奇小説が好きな村の鼻つまみ者として、父親でさえ怪奇小説なんて馬鹿らしいと言われていた。そんな女の子が、いまや誰もが知っている「フランケンシュタイン」を生み出すまでの物語となっていた。
この小説の誕生秘話については文学史上だけでなく、映画でも取り上げられた、ケン・ラッセル監督の「ゴシック」(1986)である。それと同様にここでも「フランケンシュタイン」が生まれるきっかけとなったスイス・ジュネーブの詩人であるバイロンの別荘での出来事が詳細につづられていくが、その一方で映画はメアリーが小説を書くに至った、波乱万丈の人生を丁寧に描いて行っている。
自分が産まれるまさにその瞬間に、文学的な才能豊かな母親が死んだという罪悪感や、妻子のある詩人シェリーと駆け落ちで奪い、その妻を自殺に追い込んだという自責の念、さらには自分の娘の病死や、バイロンの愛人となった義理の妹との奇妙な友情と生活。妹はバイロンの子供を妊娠しているが、バイロンは結婚をするとは言わないし、子供を認知すると言うのだ。そして、妹が出産の後死亡。
主人公のメアリーは、自由な精神を持っているしパワフルで感受性が豊かで、常にアンテナを張り巡らせて、あらゆることを必死にキャッチしようとしている。作家になるために生まれてきたような人だと思う。細部にわたるまで物事をこと細やかに見ようとする好奇心旺盛で、観察力が鋭い、特別な女の子だ。その過酷な人生経験をすべてぶっつけるように書かれたのが「フランケンシュタイン」だったのだ。
逆に言えば、「フランケンシュタイン」という小説の中には、自由への憧れや因習からの解放を目指す女性作家の悩みや苦しみなど、内面の葛藤が込められており、単なる怪奇小説の域を超えていると思います。
きっかけとなったのは、人間を死者から甦らせるという奇術を観た時から発想を得て、幼子を病死させた苦しみを小説に蘇らせようと描き、それが人造人間「フランケンシュタイン」である。
いうなれば、女性解放ののろしは現代人、それもまだまだ男女差別の激しい国や、地域の人々に大いなる刺激となったはずで、この映画の監督にサウジアラビア出身の若手ハイファ・アル=マンスールという女性監督が起用されたのも偶然ではあるまい。
200年前の女性作家と現代の女性監督が心を通わせるのも、時空を超えたこの小説世界だからこそであったと思います。
しかし19世紀初頭が舞台のこの作品に、新鮮な空気を吹き込んだのは、ズバリ21世紀を生きる女優エル・ファニングに違いない。文学的な才能あふれる信念と情熱の少女、これほどメアリーにぴったりなハマリ役のエル・ファニングの存在感に驚くばかりであった。
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