女優のみならず多彩に活躍するジュリー・デルピーがメガホンを取ったロマンチックコメディー『パリ、恋人たちの2日間』の続編。ニューヨークで新しい恋人と暮らすヒロインのもとに、フランスから彼女の家族がやって来たことで巻き起こるトラブル続きの2日間を描く。新恋人役には『リーサル・ウェポン4』などで有名な人気コメディアンのクリス・ロックがふんするほか、ジュリーの実父アルベール・デルピー、前作に続きダニエル・ブリュールらが共演する。
<感想>ジュリー・デルピー自身が主演も務める長編監督の第4作にして、初監督となった「パリ、恋人たちの2日間」の続編です。27日で終わりというので、つい観てしまった。
物語は、デルピー演じるNY在住の写真家マリオンは、前作の恋人ジャック(アダム・ゴールドバーグ)と別れ、産まれた息子を引き取りシングルマザーになっている。一作ごとに街を替えて男女のリアルな姿を継続的に描く、という映画の形は、何だかウディ・アレンっぽさへと寄っているようだ。それはデルピーがNY大学の映画・脚本科で学んだことも想起される。
それは、映画術と人間力を両方感じるからなのだ。例えば冒頭からまもなく、メガネをかけたジュリー・デルピーが半泣き気味で愚痴をまくし立てる。「私はもうすぐ38歳、デブだし性格も最悪。しかも子持ちで失禁症なの。」と、まるでウディ・アレンの口調を真似するダイアン・キートンといった風情だが、と同時に日本のアラフォー女芸人みたいな、自虐系の下ネタトークに見える。でも笑ってしまった。
その意味でも彼女は下ネタ大好き!・・・という衝撃の事実は、ファンとしては嬉しいようなそんな気持ちにさせる。今回は新しい恋人役として「恋愛だけじゃダメかしら?」「9デイズ」のクリス・ロックが演じて、本作で演じるラジオDJのミンガスは、基本クールなニューヨーカーで、過激なマシンガントークが売りのロックなのに、やけにおとなしいのだ。
だから、“おしゃべりクソ野郎”な饒舌を炸裂させるのは、ジュリー演じるマリオン、そしてフランスから押しかけてきた彼女の身内の、お騒がせなパリジャン&パリジェンヌの方なのである。
本作では英語とフランス語が入り乱れつつ、野蛮で牧歌的なパリ組の“田舎者ぶり”が強調されていく。象徴的なのは、妹のローズ役のアレクシア・ランドーの恋人で、マリオンの元カレでもあるマニュ(アレックス・ナオン/共同脚本も兼任)だろう。
彼は初対面のミンガスに向かって「ソルト&ペッパーは好きか?」と訊ねる。80年代に流行った三人組の女性ラップグループなのだが(私も知らなんだ)、古すぎてミンガスにはピンとこない。「つうは、ソルトンペッパーと呼ぶんだ」と粋がるマニュだが、ミンガスは一瞬絶句しつつも「ヒットしたのは20年前だ」と反撃。
さらに、マニュは宿泊させてもらっているアパートに、売人を呼んでマリファナを買い、ローズとエレベーターで分け合うなど、もうやりたい放題。ダメ押しとしてパリ組御一行様に、ミンガスは彼の信奏するオバマ大統領を大事な場面でコケにされ、ついに限界突破!そりゃキレるの無理ないよ。
MCを務めるラジオ番組で「昔はフランス人と言えば、ゴダール、ルノワール、シュルレアリスト、でも今は電動歯ブラシで変態セックスする連中だ」と絶叫する。
そしてもう一つは、家族。これは自身の少女時代をモデルにした「スカイラブ」もしかり、おそらくデルピーの最も大切なモチーフだろう。今回も彼女の作品でお馴染みとなりつつあるファニーな実父、アルベール・デルピーが登場。
ミンガスから「サイコ・ビッチ(イカレ女)」と言われるマリオン/デルピーだが、自由奔放でクレイジーな父親の姿に、ここに私のルーツがあるの、と誇らしげ風なのも最高。このフランス人たちに囲まれると、黒人DJ夫が一番まともに見える可笑しさ。
これだけダレ場なしで、2日間の珍騒動を語りつつ、終盤には某アーティスト(ヴィンセント・ギャロ)がカメオ出演するというオマケまで付いている。それに、マリオンとそのパートナーの間に赤ちゃんが出来てました、よかったね。おめでとう」という呆気に取られるオチに驚かされる。
2013年劇場鑑賞作品・・・284 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>ジュリー・デルピー自身が主演も務める長編監督の第4作にして、初監督となった「パリ、恋人たちの2日間」の続編です。27日で終わりというので、つい観てしまった。
物語は、デルピー演じるNY在住の写真家マリオンは、前作の恋人ジャック(アダム・ゴールドバーグ)と別れ、産まれた息子を引き取りシングルマザーになっている。一作ごとに街を替えて男女のリアルな姿を継続的に描く、という映画の形は、何だかウディ・アレンっぽさへと寄っているようだ。それはデルピーがNY大学の映画・脚本科で学んだことも想起される。
それは、映画術と人間力を両方感じるからなのだ。例えば冒頭からまもなく、メガネをかけたジュリー・デルピーが半泣き気味で愚痴をまくし立てる。「私はもうすぐ38歳、デブだし性格も最悪。しかも子持ちで失禁症なの。」と、まるでウディ・アレンの口調を真似するダイアン・キートンといった風情だが、と同時に日本のアラフォー女芸人みたいな、自虐系の下ネタトークに見える。でも笑ってしまった。
その意味でも彼女は下ネタ大好き!・・・という衝撃の事実は、ファンとしては嬉しいようなそんな気持ちにさせる。今回は新しい恋人役として「恋愛だけじゃダメかしら?」「9デイズ」のクリス・ロックが演じて、本作で演じるラジオDJのミンガスは、基本クールなニューヨーカーで、過激なマシンガントークが売りのロックなのに、やけにおとなしいのだ。
だから、“おしゃべりクソ野郎”な饒舌を炸裂させるのは、ジュリー演じるマリオン、そしてフランスから押しかけてきた彼女の身内の、お騒がせなパリジャン&パリジェンヌの方なのである。
本作では英語とフランス語が入り乱れつつ、野蛮で牧歌的なパリ組の“田舎者ぶり”が強調されていく。象徴的なのは、妹のローズ役のアレクシア・ランドーの恋人で、マリオンの元カレでもあるマニュ(アレックス・ナオン/共同脚本も兼任)だろう。
彼は初対面のミンガスに向かって「ソルト&ペッパーは好きか?」と訊ねる。80年代に流行った三人組の女性ラップグループなのだが(私も知らなんだ)、古すぎてミンガスにはピンとこない。「つうは、ソルトンペッパーと呼ぶんだ」と粋がるマニュだが、ミンガスは一瞬絶句しつつも「ヒットしたのは20年前だ」と反撃。
さらに、マニュは宿泊させてもらっているアパートに、売人を呼んでマリファナを買い、ローズとエレベーターで分け合うなど、もうやりたい放題。ダメ押しとしてパリ組御一行様に、ミンガスは彼の信奏するオバマ大統領を大事な場面でコケにされ、ついに限界突破!そりゃキレるの無理ないよ。
MCを務めるラジオ番組で「昔はフランス人と言えば、ゴダール、ルノワール、シュルレアリスト、でも今は電動歯ブラシで変態セックスする連中だ」と絶叫する。
そしてもう一つは、家族。これは自身の少女時代をモデルにした「スカイラブ」もしかり、おそらくデルピーの最も大切なモチーフだろう。今回も彼女の作品でお馴染みとなりつつあるファニーな実父、アルベール・デルピーが登場。
ミンガスから「サイコ・ビッチ(イカレ女)」と言われるマリオン/デルピーだが、自由奔放でクレイジーな父親の姿に、ここに私のルーツがあるの、と誇らしげ風なのも最高。このフランス人たちに囲まれると、黒人DJ夫が一番まともに見える可笑しさ。
これだけダレ場なしで、2日間の珍騒動を語りつつ、終盤には某アーティスト(ヴィンセント・ギャロ)がカメオ出演するというオマケまで付いている。それに、マリオンとそのパートナーの間に赤ちゃんが出来てました、よかったね。おめでとう」という呆気に取られるオチに驚かされる。
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