に賛同しました。
ウクライナ戦争を1日でも早く止めるために日本政府は何をなすべきか
―――憂慮する日本の歴史家の訴え―――
ロシア軍の侵攻によりウクライナ戦争がはじまってから3週間がすぎた。ロシア軍はキエフを包囲し、総攻撃を加えようとしている。このような戦争が継続することはウクライナ人、ロシア人の生命をうばい、ウクライナ、ロシアの将来にとりかえしのつかない打撃をあたえることになる。それだけではない。ウクライナ戦争の継続はヨーロッパの危機、世界の危機を決定的に深めるであろう。
だから、われわれはこの戦争をただちに終わらせなければならないと考える。ロシア軍とウクライナ軍は現在地で戦闘行動を停止し、正式に停戦会談を開始しなければならない。戦闘停止を両軍に呼びかけ、停戦交渉を仲介するのは、ロシアのアジア側の隣国、日本、中国、インドがのぞましい。
日本はアメリカの同盟国で、国連総会決議に賛成し、ロシアに対する制裁をおこなっている。しかし、日本は過去130年間にロシアと4回も深刻な戦争をおこなった国である。最後の戦争では、米英中、ロシアから突き付けられたポツダム宣言を受諾して、降伏し、軍隊を解散し、戦争を放棄した国となった。ロシアに領土の一部をうばわれ、1956年以降、ながく4つの島を返してほしいと交渉してきたが、なお日露平和条約を結ぶにいたっていない。だから日本はこのたびの戦争に仲裁者として介入するのにふさわしい存在である。
中国はロシアとの国境画定交渉を成功させ、ロシアとの安定的な隣国関係を維持しており、国連総会決議には棄権した。ロシアに対する制裁には反対している。インドは伝統的にこの地域に起こった戦争に対して停戦を提案し、外交的に介入してきた。インドとロシアの関係は安定しており、国連総会決議には棄権している。
だから、日本が中国、インドに提案して、ロシアの東と南の隣国として、この度の戦争を一日も早く終わらせるために、三国が協力して、即時停戦をよびかけ、停戦交渉を助け、すみやかに合意にいたるよう仲裁の労をとることができるはずだ。
われわれは日本、中国、インド三国の政府にウクライナ戦争の公正な仲裁者となるように要請する。
ロシア軍とウクライナ軍は即時停戦し、停戦交渉を正式にはじめよ。
ロシア軍はロシアにとっても信仰上の聖地であるキエフへの総攻撃をやめなければならない。
最後に訴えたい。ウクライナ戦争をとめるには、すべての者がなしうるあらゆる努力をつくさなければならない。傍観者にとどまってはならないのだ。
2022年3月15日
伊東孝之 (北海道大学名誉教授)
加納 格 (法政大学元教授)
塩川伸明 (東京大学名誉教授)
富田 武 (成蹊大学名誉教授)
藤本和貴夫 (大阪経済法科大学元学長)
和田春樹 (東京大学名誉教授)
加藤史朗 (愛知県立大学名誉教授)
梶浦 篤 (電気通信大学教授)
豊川浩一 (明治大学教授)
長與 進 (早稲田大学名誉教授)
西 成彦 (立命館大学名誉教授)
羽場久美子 (青山学院大学名誉教授)
毛里和子 (早稲田大学名誉教授)
吉田 浩 (岡山大学准教授)