今日の午後の事です。東京駅の近くのコーヒーハウスでコーヒーを飲んでいたら、隣の席に、日の丸の小旗を持った若い女性の二人連れが座りました。どうやら皇居で行われた天皇誕生日の一般参賀に行ってきたようでした。そして、楽しそうな二人の会話がそれとなく聞こえてきました。
「あんなに近くで天皇陛下を見れるなんて、今日はラッキー!」
「天皇陛下ってチャーミングなおじいちゃまって感じよね」
陛下のお人柄についてしばらく話が続いたあとに
「ところでさぁ、隣にいた外国人のグループはどこの国の人達かな」
「欧米系だけじゃなくって、アジア系の人もたくさんいたね」
「ほかにも外人さん結構いたよね」
「日本語で、お誕生日おめでとうございますって大きな声で言うんだよ。なんだか自分に言われたみたいに嬉しくなっちゃった」
「それにさぁ天皇陛下万歳!って一緒に万歳してたよね。びっくり!」
「私、万歳三唱しながら妙に感動しちゃった」
「新年参賀にまた来たい」
お嬢さんたちの会話に、私は心がほっこりと暖かくなってくるのを感じました。日本の若者達も捨てたもんじゃありません。
そして40年ほど前の留学中の出来事を想い出していました。それは1976年のアメリカが建国200年を迎える年でした。イースターの休日を大学の紹介で、ドイツ系アメリカ人の家庭で過ごすことになりました。
このお家の老夫婦に息子さん夫婦も加わって、楽しい時間を過ごしました。
この一家は親日的で、家族そろって車は日本車。家の中にはテレビにオーディオに時計にカメラと家中に、日本製品が溢れていました。
その当時アメリカでの日本製品の評価と人気は高く、アメリカ製品を駆逐する勢いでした。しかし、DATSUN、SONY、NIKONなどのブランド名は知っていても、これらがアメリカ製だと思っているアメリカ人も大勢いました。現在ほどに日本の事は知られていなかったのです。
この方達はそれなりのインテリ層でしたから、その当時の工業国、技術国としての日本は認識していましたが、日本の歴史までは知る由もありません。
建国200年ということで、話題はアメリカの歴史、このお家のご先祖の話となりました。渡米前にアメリカ建国の歴史と当時のヨーロッパの歴史は少しばかり勉強していましたので、稚拙な英語力でも何とか彼らの会話を理解することが出来ました。
新築間もないと思われるモダンなお家のリビングに置かれた、古めかしい机が気になっていたので、私はご主人に尋ねました。
「あの机はご先祖と何か関係があるのですか」
「良く気が付いたね。あれは我が家の家宝として伝わる机なんだよ」
話によると230年ほど前に、先祖がイギリス植民地下のアメリカに渡って来る時に持って来たものて、代々大切にしてきたらしいのです。
「アメリカは歴史が新しい国だ。だからこれからも私達が歴史を作り、その歴史を大切にしていかなければならない。先祖の事を忘れないためにも代々この机を伝えるのさ。私が死んだらこの息子が受け継いでくれる」
その息子さんがニコニコしながら私に質問してきました。
「私の家の祖先を辿れば250年位は分かるのだが、君のお家はどの位続いているのかな」
「特別な家系ではありませんが、父親の家系が辿れるのは400年くらいですが、母方の家系でしたら1000年位昔まで辿れます」」
そう私が答えると、一家全員がすごく驚いた表情で私を見つめていました。
ご主人が言いました。
「それじゃいったい、日本の国はどの位の歴史があるの」
「そうですね、ちょっと待ってください。建国はBC660年ですから、今年で2636年になりますね。」
BC660年は神武天皇が即位したとされる年で、今の天皇(昭和天皇)は124代目になります。天皇家は他家に変わることなく、皇統が続いています」
日本史は得意とするところでしたから、私は具体的な数字を入れて説明しました。
「BC660。本当かよ」
と叫んで、息子さんは絶句してしまいました。
しばしの間沈黙が続きました。何か気に障ったかなと不安に気持ちになってしまいましたが、それは杞憂でした。その後、矢継ぎ早に全員からの質問攻めにあいました。
昭和天皇が戦争後も、退位せずに天皇であった事、未だに国民から崇敬されて要る事も驚きだったようでした。ヨーロッパでは戦に負けた国の国王は亡命するか処刑されるかが常識ですから。さらに皇室と同じ位古くて代々続く神官家がある事などを説明しました。
ご主人が最後に言った言葉は今でもはっきりと覚えています。
「日本は前の世界大戦で、欧米と互角で戦った。それだけでも凄い国だと思う。さらに戦争でひどいダメージを受けながらも、瞬く間に復活して目覚ましい発展を続けている。おかげで家中、日本製品だらけだ。(笑)
「今日は本当の日本の素晴らしさを知ることができた。それはとてつもなく長い歴史だよ。天皇も同じ歴史を持ち、どの時代にも特別な存在として国民から尊敬され続けてきたというのはさらなる驚きだ。それは常識から考えて奇跡としか言いようが無い」
私も褒めて頂いたお礼にこう言いました。
「アメリカはすごい国です。建国されて僅か百数十年で、経済、科学技術、エンターティメント、そして軍事力もすべて世界一になりました。アメリカの豊かな暮らしは世界の人々の憧れになっています」
「おほめいただいて有難う。確かに今のアメリカには何でもある。しかしたった一つだけ手に入らないものがあるんだよ」
「アメリカ人にとって一番欲しいものは何だと思いますか?」
私「・・・」
「それはね歴史ある王室ですよ」
「日本人は本当に幸せだ。天皇や皇室があるからね」
私の世代は天皇や皇室の存在を否定しかねない戦後の偏向教育の中で育って来ました。少なからずその影響を受けていた私には、目の覚めるような一撃を浴びた思いがしました。
その後、ヨーロッパで仕事をする機会が多かったのですが。皮肉屋で口が悪いイギリス人を打ち負かしたい時は、英王室と皇室の歴史を良く引き合いに出しました。プロトコル(外交儀礼)の各国君主の序列では日本の天皇陛下がエリザベス女王やローマ法王より上ですからね。つまり世界一という事です。彼らが決めた国際ルールですから、イギリス人だって反論の余地がありません。
日本人である事を心から誇りに思う瞬間でした。
天皇陛下のご健康とさらなるご長寿を心からお祈りします。
日本と皇室に弥栄!
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