■階級闘争史観の持ち込み
さて、このへんから東京裁判の本質にメスを入れることとしよう。
この東京裁判は日本の戦後史の始まりというにふさわしく、非常に深い意味をもっている。戦後日本の価値感覚その他が戦前と180度の転換をみせたといわれるが、その原点はこの東京裁判にある。
マルクス主義階級闘争史観というものが観念的には大正時代から移入され、日本国内のインテリの間でい ろいろ論議されてきたものである。しかし、これらは現実の問題としては何ら国民に影響を及ぼすものではなかった。しかるに、東京裁判によって持ち込まれた マルクス主義の階級闘争史観は、この裁判に続く日本国憲法の持ち込みによって日本国民の価値観を180度転換させるまでの大きな影響を及ぼすことになっ た。
東京裁判の本質はマルクス主義の唯物史観における「階級闘争論」の持ち込みにこそある。この二元論の持ち込みにより、以後、日本の内部は収拾のつかな いような内戦状態に陥ることになったのである。
もともとこれを持ち込んだ勢力の目的とするところは、唯物史観にある如く国家を内部闘争により破壊、転覆させることにあるのであるから、当然の帰結 であるといえよう。東京裁判は先ずそのような思考パターンを植えつける目的に利用されたものであり、それに続く日本国憲法の持ち込みにより階級闘争史観と いう二値論理に市民権を与えてしまったということができるであろう。
それでは、東京裁判によって演出された二元論的思考の植え込み、階級闘争史観の設定の現実を見てみよう。
その方法は、日本国民を二極分化させることから始まる。即ち、マルクス主義の階級闘争史観は、すべての歴史は支配階級と被支配階級の間における階級闘争の歴史であると主張するものであるのはご承知の通りであるが、この論法を持ち込むのである。
■善悪二元論の持ち込み
今度の戦争は日本の支配階級、「天皇制軍国主義者」の起こしたものであり、被支配階級である大多数の日本国民に責任はない、否、むしろ被害者である、一握 りの天皇制軍国主義者にだまされていたのである、とする二極分化論である。
この論法はかつて北京を訪れた日本の各層の人々に故周恩来首相が常に口にしてい た論法と同じであることからも、これがマルクス主義の階級闘争史観であるということはご理解頂けると思う。
この勢力はマルクス主義を自己の目的のため手段、道具として利用する勢力である。日本の戦後支配の出発点において早速、自己が創造したマルクス主義という虚構仮設を持ち込んだのであった。これは実に有効な手段、道具として役立ったのである。
その第一は、自己の戦争責任の免責である。(本格的な戦争責任論は稿をあらためる予定である)自己が火の粉をかぶる前に、その責任を日本の「支配階 級」、すなわち「天皇制軍国主義者」に転嫁することに成功している。しかも、以後自分達に追及の手がのびることのないよう、一般日本国民に対しては一見寛 大とも錯覚させる被害者意識を植えつけることが可能なわけである。
つまり前述した故周恩来首相のたびたびの言の如く、責任はあげて「天皇制軍国主義者」にある、日本国民に責任はない、否むしろ日本国民は被害者であ る、とする論法である。
こういわれると、日本国民は戦争責任者の追及はすでに終わったと錯覚する。それというのも、日本国民自身が免責されているのである から、この論法は耳ざわりのいいことこの上ない。かくて、日本国民は以後すっかり戦争責任は一握りの「天皇制軍国主義者」にあるとの論を植えつけられ、真 の責任者の追及を放棄したのである。
マルクス主義というものは、これを手段として有効に利用するものと、逆にこれに利用されるものとの二者があるのである。前者が後述するニューディーラーであり、後者が日本共産党である。
ニューディーラーは実に巧妙に階級闘争史観を駆使し自己の戦争責任の免責に成功したかに見えた。果たしてそううまく事が運ぶものであろうか。ここに、この勢力の予想だにしなかった事態が起こるのである。
この勢力の駆使するのは正真正銘のマルクス主義の唯物史観に基づく階級闘争史観である。その証拠をあげてみよう。それは日本共産党が戦前から主張し ていた講座派史観とピタリと一致することである。もともとこの勢力こそ、マルクスに変革のための虚構ハイポセシスの構築を依頼した張本人なのである。
■講座派史観と一致 ── 日共が飛びつく
さて、この勢力が東京裁判へ持ち込んだマルクス主義の階級闘争史観が戦前からの日本共産党の講座派史観とピタリと一致するということから、当然のことながら日本共産党がこの東京裁判の結論にとびついて来たわけである。
日本共産党の講座派史観からすれば、よくぞ我々のやるべきことを代行してくれたといいたいところであろう。かくて、GHQの前で赤旗を振り、「万歳」を叫ぶことになる。
ところが、前述の勢力は日本共産党という協力者が現われたためそれに足を引っぱられ、東京裁判でまんまと成功したかに見えた自己の戦争責任の免責を危うくされる破目に陥るのである。
この勢力の構築した虚構仮設を自己絶対化することをその存在理由としている日本共産党は、忠実に戦争責任を「天皇制軍国主義者」であると主張してい る。ところが日本共産党が世界観と仰ぐ唯物史観によると、戦争の要因はその社会体制の中に存する経済的要因により起こると説く。
資本主義体制では必然的な 戦争要因を内蔵している。しかし社会主義、共産主義体制に転化するとその必然的戦争要因は完全に除去されると説いている。しかも、その資本主義体制から社 会主義、共産主義体制への転化は歴史的必然性であるという。その歴史的必然性を具現化する唯一の前衛が日本共産党であると一貫して主張している。
日本共産党が前衛としての本来的な責任を果たし日本を資本主義体制から社会主義体制へ、歴史的必然性という有難い要因の応援も得て転化させていれ ば、戦争の要因は完全に除表されていたはずである。極論すれば、開戦の責任は一にかかって、日本共産党の無力と東京裁判を演出した勢力の側の怠慢という論 理も成り立つのである。
マルクス主義は協力者を募るためにこの勢力が発注したものであったが、ロシア革命の時の如くうまく協力者としてのみ働いてくれるものが現われれば万万歳だろうが、時には飼い犬に手をかまれる結果となることもあることを知らなくてはならない。
もう一度整理すると、日本共産党が東京裁判の結論に両手を挙げて賛意を表したために、唯物史観の論理上から「天皇制軍国主義者」が戦争の全責任とい う彼らの狙いは揺らいできた。このことは、東京裁判そのものに対しても打撃であろう。少なくとも、日本共産党の講座派史観と全く同じ論法を東京裁判に持ち 込んだこの勢力は、今日、自己も無関係とはいっておれまい。
さて、それでは東京裁判を通じて日本へ持ち込まれたマルクス主義の階級闘争史観は日本の戦後史へどのような影響を及ぼしたかをつぶさに見てみることにしよう。
■深い後遺症
東京裁判の論法はすでにたとえ戦争責任については逆転されたとしても、深堪なる影響を日本の戦後史に与えてしまっている。
まず第一に、日本の社会へ階級闘争を持ち込んだことである。これは、続く日本国憲法へ実体法のカテゴリーに属す条項を挿入することによって、確固たるものとして定着させられてしまっている。この階級闘争もさることながら、より大きい病巣は宗教性の呪縛であろう。
前述の東京裁判式の論法は、善玉・悪玉論理をはぐくむことになる。戦争責任はあげて一握りの支配階級たる天皇制軍国主義者にある、大部分の国民はむ しろその被害者であるとする論法は、先ず第一に戦争責任者を国外に求めることを忘れさせる効果をもつ。また、これにより旧敵国がいかにも雅量のあるものわ かりのいい寛大な存在に映り、以後の占領政策をやりやすくする効果をもつ。
しかしこれらよりも大切なことは、支配階級というものは常に悪玉であるとする思潮が生じることである。それに対して自分達は被害者、すなわち善玉なのだと信じ込ませる作用をもつ。ここにユダヤ教的善玉・悪玉の二値論理が持ち込まれることとなる。
こうして、悪玉、すなわち「天皇制軍国主義者」に「支配」された戦前の日本はすべて悪であるとする観念が生じる。逆に自分達を被害者=善玉と規定してくれたアメリカ占領軍の以後の政策をすべて善と感じるであろう。
さらに、支配階級というものは常に悪玉であると教え込まれると、戦後の政権担当政党も支配階級の代弁者であるから当然悪玉である。故に、これにこと ごとく反対することは善玉の崇高な使命であると信じ込まされることになる。
今日みる如く政権担当政府のやることには何でも反対する思潮は、このようにして 東京裁判を通して巧妙に持ち込まれたのである。そうして、これらを確固不動のものにするため日本国憲法を作成し、その残置諜者として日本共産党を利用する ことになるのである。次なるものはいよいよ日本国憲法ということになるわけである。
次回は
■日本国憲法の作者はユダヤ人である
●「日本人に謝りたい」あるユダヤ長老の懺悔
1979年 日新報道(刊)
モルデカイ・モーゼ (著), 久保田 政男 (翻訳) より
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