街住まひ稲穂の波を見まく欲り
熟しゆく裸の枝のただ一顆
脂濃き秋刀魚の肝のメランコリア
逢ひたさや雨に苦しむ秋の暮
烏瓜恋に疲れし魂ひとつ
凩にめくれるほどの空意気地
返信を待たぬふりして宵時雨
人を返し二度寝の床の清しさよ
四分八分音符を数え情事忘る
白鍵は誘惑の数黒鍵は裏切り
白き膚を恥ぢてみすみす夏は過ぐ